交通事故による脳挫傷の後遺障害と賠償

脳挫傷は、交通事故の強い衝撃によって脳そのものが損傷する傷病です。損傷する部位や範囲によって、意識障害、麻痺、言語障害、けいれん、記憶・注意力の低下、感情や行動の変化など、さまざまな症状が生じます。急性期の画像で明らかな損傷が確認される一方、退院後に仕事や家庭へ戻ってから高次脳機能障害が目立つ場合もあります。後遺障害認定では、事故直後の脳損傷と、最終的に残った症状とのつながりを資料で説明することが重要です。

このページで押さえる3点

  1. 急性期のCT・MRIで脳挫傷の部位、出血、浮腫などを確認し、事故直後からの症状経過を残します。
  2. 手足の麻痺だけでなく、記憶・注意・遂行機能・感情面の変化がないか、退院後も確認します。
  3. 後遺障害等級は「脳挫傷」という病名ではなく、残った神経症状や精神・認知機能障害の程度で検討されます。

脳挫傷でみられる症状

脳挫傷では、頭痛、吐き気、意識障害、運動麻痺、感覚障害、言語障害、けいれんなどがみられることがあります。損傷が前頭葉や側頭葉に及ぶ場合には、身体症状が比較的軽くても、記憶、注意、感情のコントロール、判断、対人関係などに問題が残ることがあります。

たとえば、事故前には問題なくできていた仕事でミスが続く、会話の内容をすぐ忘れる、予定を管理できない、怒りやすくなる、疲労しやすく長時間働けないといった変化です。こうした症状は本人が気づきにくいことがあるため、家族や勤務先から見た事故前後の違いを記録することが大切です。

診断で確認する検査

急性期には頭部CTが行われ、出血や脳の腫れ、骨折などを確認します。MRIは脳組織の損傷をより詳しく評価するために行われることがあります。後遺障害認定を考える場面では、画像検査の結果だけでなく、救急搬送時の意識レベル、神経学的診察、手術記録、リハビリテーション記録などを一連の資料として確認します。

高次脳機能障害が疑われる場合には、記憶、注意、遂行機能などを評価する神経心理学的検査が行われることがあります。けいれんがある場合には、医師の判断で脳波検査等が行われることもあります。重要なのは「どの検査を受ければ認定される」という単純な話ではなく、症状に応じて必要な医学的評価が継続され、事故後の経過が一貫して記録されていることです。

後遺障害認定で確認するポイント

脳挫傷後に残った神経・精神機能障害の程度により、重い場合には上位等級が問題となり、就労や日常生活への影響に応じて3級、5級、7級、9級などが検討されることがあります。また、局部の神経症状として12級13号や14級9号が問題になる場合もあります。実際の等級は、画像所見、症状の内容、事故からの経過、生活・就労への具体的な影響を総合して判断されます。

脳挫傷の画像が残っているからといって、自動的に高い等級が認められるわけではありません。逆に、画像上は損傷が縮小・吸収していても、麻痺や高次脳機能障害などが残っていれば、その残存症状を具体的に評価する必要があります。

高次脳機能障害を見落とさないために

退院時には歩けて会話もできるため「回復した」と受け止められていても、社会復帰後に問題が明らかになることがあります。復職後に仕事の質が落ちた、以前の役職を維持できない、周囲の援助が増えた、短時間勤務になったといった場合は、勤務先の資料や家族の記録を残してください。本人が以前と同じように働いているつもりでも、実際には同僚が相当な支援をしている場合もあります。

治療・リハビリと症状固定

脳挫傷では、急性期治療後にリハビリテーションを行い、身体機能や認知機能の回復を図ります。回復には時間がかかることがあり、症状固定の時期は一律ではありません。画像上の出血が消えたことだけを理由に症状固定とするのではなく、麻痺、認知機能、生活能力、リハビリによる改善状況などを主治医と確認します。

保険会社から治療費の打ち切りを求められた場合は、現在の治療内容、改善の程度、今後の見通しについて主治医へ確認してください。通院を自己判断で中断すると、後から症状の継続性や事故との関係を説明しにくくなる場合があります。

賠償で問題になる項目

脳挫傷で後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料、逸失利益などが重要になります。高次脳機能障害や麻痺が重い場合には、将来介護費、介護用品、住宅改造費などが問題になることもあります。また、症状固定前についても、入通院慰謝料、休業損害、付添費などを検討します。

逸失利益では、後遺障害等級だけでなく、実際に仕事へどのような影響が生じているかが重要です。元の仕事に戻れず職種変更した、昇進が難しくなった、勤務時間を減らした、退職したといった事情があれば、収入資料とともに整理します。

保険会社対応で注意したいこと

保険会社の示談案では、後遺障害等級が認定されていても、逸失利益の期間や労働能力喪失率、基礎収入などについて争いが生じることがあります。高次脳機能障害がある場合には、認定された等級だけでなく、実際の生活・就労状況が適切に反映されているか確認する必要があります。

弁護士へ相談するタイミング

脳挫傷と診断され、症状が長引いている場合は、症状固定や後遺障害申請の直前だけでなく、資料がそろい始める段階で相談しておくと安心です。特に、家族が性格変化や物忘れに気づいている、復職後に問題が出ている、保険会社から治療終了を打診されている場合は、示談前に必要資料を確認してください。

よくある質問

画像所見は重要ですが、それだけで等級が決まるものではありません。治療後にどのような症状が残り、それが日常生活や仕事へどの程度影響しているかも確認されます。

脳損傷との関連が認められ、社会生活や日常生活に支障がある場合、高次脳機能障害の症状として評価される可能性があります。

発作の頻度、治療内容、服薬状況、日常生活への影響などを医師の記録とともに確認します。等級は個別の状態により検討されます。

復職の有無だけではなく、実際の仕事能力の変化が重要です。ミスの内容、配置転換、勤務時間、周囲の支援などを記録してください。

できます。提示前の段階で、後遺障害申請や損害項目に必要な資料を確認することには意味があります。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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