交通事故による横隔膜損傷の後遺障害と賠償

横隔膜は胸腔と腹腔を隔て、呼吸に重要な役割を持つ筋肉です。交通事故で胸腹部へ非常に強い圧力が加わると、横隔膜が裂け、腹腔内の胃や腸などが胸腔側へ移動する外傷性横隔膜損傷・横隔膜破裂を生じることがあります。重症多発外傷の一部として発生することがあり、事故直後は肺・腹部臓器・骨盤等の他傷病への対応と並行して治療されます。

このページの要点

  • 胸腹部CT等で横隔膜の損傷と臓器の位置を確認します。
  • 手術記録から破裂部位、修復方法、合併する胸腹部臓器損傷を整理します。
  • 治療後の呼吸症状、腹部症状、体力低下を継続して確認します。
  • 多発外傷の場合は横隔膜損傷だけでなく全傷病を前提に損害を整理します。

横隔膜損傷とは

横隔膜が裂けると、腹腔内臓器が胸腔側へ移動し、肺を圧迫して呼吸へ影響することがあります。事故直後から診断される場合もあれば、他の重傷への対応が優先され、後から損傷が明らかになる場合もあります。診断には胸腹部画像が重要です。

検査・手術記録

CTでは横隔膜そのものだけでなく、胸腔内へ移動した臓器や肺・腹部臓器の状態を確認します。手術を受けた場合は、損傷部位、修復内容、同時に治療した臓器損傷を手術記録・退院時要約で確認します。

横隔膜損傷を生じる事故は外力が大きいため、肋骨骨折、肺挫傷、脾・肝損傷、骨盤骨折などを伴う場合があります。治療期間や休業が長い場合は、どの傷病がどの程度影響したか全体で整理します。

治療後に残る症状

手術後に呼吸時の違和感、胸腹部痛、体力低下などが続く場合があります。合併した肺損傷・腹部臓器損傷の影響もあり得るため、症状を一つの傷病へ機械的に結びつけず、診療科ごとの記録を確認します。

後遺障害・賠償

横隔膜損傷の既往だけで等級が決まるものではありません。症状固定時に呼吸機能や胸腹部臓器の機能へ恒常的障害が残っているか、日常生活・仕事にどのような制限があるかを確認します。休業損害、慰謝料、後遺障害慰謝料・逸失利益などを受傷全体から整理します。

仕事・生活への影響

長期入院・手術後は、復職しても体力が戻るまで時間がかかる場合があります。重量物、長時間運転、介護、階段昇降等で症状が出る場合、勤務時間短縮や軽作業の期間を記録します。家事・育児への支障も具体化します。

示談前の確認

横隔膜の修復が終了していても、肺・腹部臓器等の他傷病の治療が続いていないか、後遺障害評価が済んでいるか確認します。多発外傷で一部傷病だけ先に示談する場合は、他損害への影響を慎重に確認します。

よくある質問

良好に回復すれば残らない場合もあります。最終的な機能障害と症状を確認します。

横隔膜損傷と肺損傷の双方を整理します。

初期画像・診療記録と診断までの経過を確認します。

原因となる各傷病、医師の就業制限、休業実態を資料化します。

診断が遅れた場合の資料整理

横隔膜損傷は、多発外傷の救命治療が優先されるなかで後から明らかになることがあります。診断が事故直後ではなかった場合でも、初期CTに所見があったか、呼吸・腹部症状がいつからあったか、どの時点で追加画像や手術へ進んだかを時系列で整理します。単に「後から診断された」という理由だけで事故との関係を判断せず、救急時からの資料全体を確認します。

胸部症状と腹部症状を分けて記録する

横隔膜は胸部と腹部の境界にあるため、治療後の症状が息切れ・胸痛として現れることも、腹部の違和感・食後症状として現れることもあります。肺挫傷や腹部臓器損傷を併発している場合には、各症状をどの診療科がどのように評価しているかを整理します。診察時には「体調が悪い」とまとめず、呼吸時、食事時、歩行時など場面を分けて伝えます。

手術後の生活・就労記録

開腹・開胸手術等を受けた場合、創部痛や体幹の動かしにくさが一定期間続くことがあります。復職日だけではなく、退院後に何週間自宅療養したか、重量物を持てるようになるまでどのくらいかかったか、通院・検査のために欠勤したかを確認します。勤務先から就業制限を受けている場合は、その文書も保管します。

多発外傷の示談で見落としやすい点

重大事故では、保険会社とのやり取りで代表的な傷病だけが前面に出ることがあります。横隔膜損傷、肺挫傷、肋骨骨折、腹部臓器損傷など複数の治療がある場合、診断一覧を作成し、各傷病の症状固定と後遺障害申請が終了しているか確認します。示談書の「一切の請求を放棄する」趣旨の条項へ署名する前に、未治療・未評価の傷病が残っていないか確認することが重要です。

家族の負担も記録する

重症胸腹部外傷では、家族が入院中の身の回りの支援、退院時の送迎、自宅での家事代替を担う場合があります。付き添い等が損害として認められる範囲は個別事情によりますが、後から事実を再現できるよう、期間と具体的内容を残します。本人が一人でできるようになった時期も経過の一部として記録します。

事故態様と診断までの経過

横隔膜損傷は強い胸腹部外傷で生じるため、正面・側面衝突、車内での圧迫、転倒・落下など、どのような力が加わったかを整理します。診断が事故直後ではなく数日後となった場合は、初期CTの所見、呼吸・腹部症状、追加検査へ至った理由を時系列で確認します。診断時期だけで事故との関係を判断せず、救急時からの資料全体を見ます。

合併臓器損傷と治療負担

横隔膜損傷では、肺、肋骨、脾臓、肝臓などの損傷を伴うことがあります。開胸・開腹手術を同時に受けた場合は、どの傷病に対してどの処置が行われたかを手術記録から整理します。長期入院・休業の原因を一つの傷病だけへ帰属させず、受傷全体として評価します。

退院後の呼吸・腹部症状

息切れ、胸腹部痛、食後の違和感、体幹をひねる動作での痛みなどが続く場合、症状の場面と頻度を記録します。肺損傷や腹部臓器損傷の影響が重なることもあるため、診療科ごとの評価を確認します。

就労・家事への影響

重量物、長時間運転、介護、立ち仕事、家事・育児など、体幹と呼吸機能を使う動作への支障を具体化します。復職後に短時間勤務、軽作業、出張制限となった場合は期間と理由を勤務先資料で確認します。

示談前の全傷病チェック

横隔膜修復が終了していても、他の胸腹部外傷の治療が続いていないかを確認します。手術記録、画像、退院時要約、後遺障害診断書、休業資料を揃え、未評価の傷病がない状態で示談を検討します。

再発・遅発症状の確認

横隔膜損傷の修復後に新たな胸腹部症状が出た場合、自己判断で事故後遺症と決めず医療機関で評価を受けます。主治医から再発・再手術・定期画像について具体的な説明がある場合は記録し、示談前に将来治療の扱いを確認します。

休業資料のまとめ方

長期入院後に自宅療養期間がある場合、入院終了日と就業可能日を分けます。会社員は診断書・休業損害証明書、自営業者は帳簿や代替人員資料を整理し、治療経過と休業期間の整合を確認します。

相談時に揃えたい資料

横隔膜損傷では、救急時の胸腹部CT、手術記録、退院時要約、転院先の診療録を揃えると受傷全体を把握しやすくなります。多発外傷では資料が複数病院に分かれるため、どの傷病がどこで治療されたか一覧化します。示談案が出ている場合は、内訳と治療資料を照合して未評価の損害がないか確認します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

交通事故のことで迷っていませんか

相談料・着手金は0円です。いまの状況をうかがったうえで、次に取るべき手順をお伝えします。

電話で相談 LINEで相談 メール相談