交通事故による気胸・血胸の後遺障害と賠償

気胸は胸膜腔に空気がたまり肺が広がりにくくなる状態、血胸は胸膜腔に血液がたまる状態です。交通事故では、胸部への強い衝撃で肺、胸壁、肋骨、血管などが損傷し、外傷性気胸・血胸を生じることがあります。空気と血液が同時にたまる血気胸となる場合もあります。

このページの要点

  • 胸部X線・CTで肺の虚脱、胸腔内の空気・血液、合併損傷を確認します。
  • 胸腔ドレーンの留置期間、排液・空気漏れ、酸素投与等の記録を整理します。
  • 血胸では貧血、輸血、出血源、循環への影響も確認します。
  • 治療後の息切れ・胸痛・呼吸機能と復職状況を確認します。

外傷性気胸

事故で肺や胸壁が損傷し、胸膜腔へ空気が入ると肺が縮みます。胸痛、息苦しさなどがみられ、重い緊張性気胸では呼吸・循環へ重大な影響を及ぼすことがあります。自然気胸の既往がある場合には、事故前の状態と今回の外傷を事故直後の画像等で区別します。

血胸

胸部外傷で胸腔内に血液がたまると、肺が圧迫されるだけでなく、出血量が多い場合は血圧低下や貧血を生じることがあります。肋骨骨折、肺損傷、血管損傷などを伴う場合があり、CT、血液検査、胸腔ドレーンの排液量、輸血・手術記録が重症度を把握する資料になります。

胸腔ドレーン

空気や血液が多い場合、胸からチューブを入れて胸膜腔の空気・血液を排出する治療が行われることがあります。留置期間、排液量、空気漏れ、抜去までの経過、酸素投与や手術の有無を確認します。入院日数だけでなく実際の治療負担を整理します。

後遺障害

気胸・血胸が治癒し呼吸機能が回復すれば後遺障害が残らないこともあります。一方、肺・胸膜損傷等の影響で呼吸機能低下、慢性的な胸痛等が残る場合は、症状固定時の残存障害を確認します。急性期の治療歴だけで等級が決まるものではありません。

休業・復職

退院後もしばらく体力低下、胸痛、息切れが続くことがあります。肉体労働、運転、階段昇降が多い仕事では復職まで時間を要する場合があります。軽作業指示、短時間勤務、出張・高所作業の制限などがあれば記録します。

示談前の確認

画像上気胸・血胸が消失していても症状が続く場合は主治医へ伝えます。合併した肺挫傷・肋骨骨折等が示談資料から漏れていないか、休業期間が実態に合っているか、後遺障害申請の要否を確認します。

よくある質問

空気がたまるのが気胸、血液がたまるのが血胸です。同時に生じることもあります。

治療内容だけでは決まりません。治療後に残った機能障害を確認します。

事故前の既往と今回の外傷性気胸を画像・受傷経過で区別します。

急性期の重症度を示す資料の一つです。輸血記録も整理します。

気胸・血胸を合併した場合の傷病整理

外傷性気胸と血胸は同時に生じることがあり、診療録では「血気胸」と記載される場合があります。肺挫傷や肋骨骨折も併発していると、入院・胸腔ドレーン・酸素投与の原因が一つではありません。診断名ごとに治療日数を無理に分けるのではなく、救急時から退院までの胸部外傷全体を確認し、その後に残った症状だけを傷病別に整理します。

ドレーン抜去後の症状

胸腔ドレーンを抜去して退院した後も、胸部痛、息切れ、体力低下がしばらく続く場合があります。ドレーン創の痛みと、肋骨骨折・肺損傷に由来する痛みは同じとは限りません。何が原因か自己判断せず、症状が続く場合は受診して記録を残します。

退院後の貧血・体力低下

血胸で出血量が多かった場合、血液検査が改善するまで疲れやすさ、動悸、階段での息切れなどが続くことがあります。休業期間を検討する際は「退院した日」だけでなく、主治医が就労可能と判断した時期や、短時間勤務・軽作業が必要だった期間を確認します。血液検査の推移も参考になります。

自然気胸の既往がある場合

過去に自然気胸を経験している方では、保険会社から既往症との関係を指摘されることがあります。事故時に胸部へどのような外力が加わったか、事故直後のCTで外傷所見があるか、事故前は無症状だったかを確認します。既往歴は正確に開示したうえで、今回の事故との医学的な切り分けを行います。

復職後・家事への影響

肉体労働だけでなく、長時間運転、営業の外回り、階段移動などでも息切れが問題になることがあります。家事では掃除、買い物、洗濯物運び、育児で症状が出る場合があります。事故前の活動量と比較し、どの動作を家族や同僚に代わってもらったか、どのくらいの期間続いたかを記録します。

示談資料のチェック

胸部CT、退院時要約、ドレーン記録、輸血の有無、休業証明、復職後の勤務状況を一度まとめます。後遺症が残る場合は、症状固定時の胸部画像や呼吸機能等も確認します。治療費の支払いが終了した時点で、損害全体の評価まで終わったと考えないことが重要です。

ドレーン治療の経過

胸腔ドレーンを留置した場合、留置日・抜去日、排液量、空気漏れ、肺の再膨張、感染等の経過を確認します。ドレーンを入れたという事実だけでなく、どの程度の期間治療が必要だったか、抜去後の画像で状態が安定したかを整理します。

退院後の運動耐容能

短距離は歩けても、階段や長距離歩行で息切れ・胸痛が出る場合があります。事故前の通勤、運動、家事と比較し、休憩が必要となる距離・時間を具体的に記録します。体力低下が回復途中なのか、恒常的な呼吸障害が残っているのかを経過で確認します。

合併する肋骨・肺損傷

気胸・血胸には肋骨骨折や肺挫傷を伴うことがあります。胸痛の原因と呼吸症状の原因を分け、画像・診療記録を確認します。同一症状を重複評価せず、逆に別の障害が漏れないようにします。

休業と復職

入院期間だけでなく、退院後の自宅療養、軽作業期間、短時間勤務を確認します。運送、建設、営業、介護等で身体負荷が大きい場合は、復職後の具体的制限を記録します。

示談前のチェック

胸部CT、ドレーン記録、輸血・手術の有無、呼吸症状、復職状況をまとめます。治療費支払い終了と損害全体の評価終了を混同しないことが重要です。

胸部画像を治療段階ごとに比較する

気胸・血胸では、事故直後、ドレーン留置中、抜去後、退院前の画像を比較すると治療経過を把握しやすくなります。肺の再膨張、胸水・血液の残存、合併肺損傷を確認し、症状固定時の呼吸状態と分けて整理します。

胸腔ドレーンの傷あと

ドレーン挿入部の傷あとや疼痛が残る場合があります。外貌上の評価に該当するかは部位・程度によりますが、皮膚症状や体動時痛が続く場合は診療記録へ残し、胸部内部の症状と区別します。

再受診が必要になった場合

退院後に突然胸痛・息苦しさが強くなり再受診した場合は、気胸・血胸の再燃か、別の胸部障害かを医療記録で確認します。再受診・再入院があると治療期間や休業損害にも影響するため、初回退院だけで治療終了と扱わないようにします。

示談前の呼吸状態チェック

気胸・血胸では、ドレーン抜去後に胸痛・息切れが残っていないか、肺挫傷や肋骨骨折の症状が混在していないかを確認します。画像、呼吸状態、休業・復職資料を揃え、治療終了と損害評価終了を混同しないようにします。

退院後の胸部症状を分けて伝える

気胸・血胸後に胸の痛みや息切れがある場合、安静時・体動時・呼吸時のどこで症状が出るかを分けて伝えます。肋骨骨折、肺挫傷等を併発している場合は、主治医がどの傷病との関係を考えているか確認します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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