交通事故による鎖骨骨折の後遺障害と賠償
鎖骨は胸骨と肩甲骨をつなぎ、肩の位置を保つ役割を担う骨です。交通事故では、バイク・自転車事故で肩から路面へ転倒した場合、歩行者が車両にはねられた場合、車内で肩周辺へ強い衝撃を受けた場合などに骨折することがあります。鎖骨骨折は比較的よくみられる骨折ですが、骨が癒合すれば必ず事故前の状態へ戻るわけではありません。変形、肩の痛み、可動域制限、筋力低下などが残ると、後遺障害や逸失利益が問題になることがあります。
このページの要点
- 事故直後と症状固定時のX線等を比較し、骨癒合・変形を確認します。
- 肩の動きに支障がある場合は、鎖骨だけでなく肩関節の可動域も確認します。
- 鎖骨の突出や変形と、疼痛・機能障害は別の観点で整理します。
- 仕事で腕を高く上げる、荷物を持つなどの作業がある場合は具体的な支障を残します。
鎖骨骨折で残りやすい症状
鎖骨骨折では、骨折部の痛み、肩を動かしたときの違和感、骨折部の突出や変形、肩の可動域制限などが残る場合があります。プレート固定術を受けたケースでは、金属固定材料周辺の違和感や手術痕が問題になることもあります。骨折部の変形が画像で確認できても、仕事や生活への支障が軽いケースがある一方、画像上の変形が比較的小さくても、肩を繰り返し使う職種では強い負担が残る場合があります。
検査と治療経過
診断ではX線が基本となり、骨折形態によってCT等が行われることがあります。後遺障害申請では、事故直後の骨折状態、治療中の骨癒合、症状固定時の状態を比較できることが重要です。手術を受けた場合には手術記録、プレート固定の状況、抜釘予定の有無も確認します。
肩の可動域制限が残っている場合には、屈曲や外転などの測定値を健側と比較します。鎖骨骨折そのものが癒合していても、固定期間や周囲組織の損傷によって肩関節が動きにくくなる場合があります。後遺障害診断書には、変形、疼痛、可動域をそれぞれ分けて記載できているか確認します。
後遺障害と賠償
後遺障害の検討では、鎖骨の変形、肩関節の機能障害、疼痛などが問題となることがあります。どの評価が適切かは、画像、可動域、治療経過、症状の一貫性によって異なります。具体的な等級を傷病名だけから断定することはできません。
休業損害では入院・通院により実際に休業した期間を確認し、後遺障害が認定された場合は逸失利益を検討します。建設、運送、介護、製造、美容、調理など、肩より高い位置へ腕を上げる仕事や重量物を扱う仕事では影響が大きくなることがあります。復職後の配置転換、残業制限、同僚による補助があれば資料化します。
示談前の確認
骨癒合が完成しているか、肩可動域の改善が続いていないか、抜釘予定があるか、後遺障害診断書に症状が反映されているかを確認します。保険会社から治療費打切りを提示された場合でも、主治医の医学的見解を確認して対応します。
よくある質問
画像や外観で変形の程度を確認し、最新の基準と個別所見に照らして検討します。
画像、治療経過、可動域、疼痛の一貫性を確認し、残存症状として評価できるか検討します。
プレートがあるだけで等級が決まるものではありません。疼痛や機能障害などを確認します。
実際の作業制限を整理し、逸失利益の検討材料とします。
変形障害と肩機能を分けて考える
鎖骨骨折では、骨癒合後に骨折部が盛り上がる、短縮するなど外観上の変形が残ることがあります。一方、肩の可動域や疼痛は別の問題です。変形が明らかでも肩がよく動く場合があり、反対に変形が目立たなくても肩関節周囲の拘縮・痛みで仕事に支障が残る場合があります。後遺障害申請では、変形、機能、疼痛を一つにまとめず、それぞれ客観資料を確認します。
肩鎖関節への影響
鎖骨外側端付近の外傷では、肩鎖関節の損傷を伴う場合があります。骨折部位だけでなく、肩上部の突出、圧痛、腕を上げる際の痛みなどがある場合は主治医へ伝えます。画像上の骨折が癒合していても、肩鎖関節由来の症状が残っていないか確認します。
手術・プレート・抜釘
プレート固定術を受けた場合、術後画像、骨癒合、プレート周囲の違和感、抜釘予定を確認します。プレートが皮膚の下で触れて痛い、シートベルトやバッグの紐が当たると痛いといった症状がある場合は診療記録へ残します。抜釘後に症状が変化する可能性があるため、症状固定時期は主治医の見通しと合わせて判断します。
可動域とリハビリ
固定期間が長いと肩関節が拘縮することがあります。屈曲・外転等の可動域を健側と比較し、リハビリによる改善の推移を確認します。測定値だけでなく、着替え、洗髪、高い棚の物を取る、背中へ手を回すなどの日常動作を記録します。
職業への影響を具体化する
建設・製造では頭上作業や重量物、介護では移乗、運送では荷物、美容師では長時間の腕の挙上など、肩への要求は職種で異なります。事故後に担当作業を外れた、休憩が増えた、残業できないといった事情を勤務先資料とともに残します。
傷痕と外貌・皮膚の問題
手術痕が肩・胸上部に残る場合、衣服から露出する位置か、大きさがどの程度かを確認します。傷痕による痛みやつっぱりが肩運動へ影響する場合は機能面も整理します。傷痕の問題と鎖骨の変形・肩機能を重複させず別々に検討します。
示談前の資料点検
事故直後と症状固定時の画像、手術記録、可動域、疼痛記録、仕事への制限を確認します。後遺障害診断書に「鎖骨骨折後」とだけ書かれ、変形や肩機能が具体的に記載されていない場合は、実際の状態が反映されているか確認します。
鎖骨の短縮・変形と肩の位置
鎖骨が短縮・変形して癒合すると、肩の左右差や突出が目立つ場合があります。事故前写真、事故直後・症状固定時の画像を確認し、骨格の変化と肩機能を分けて整理します。
痛みが続く場合
骨折部や肩鎖関節周辺の痛みが残る場合、圧痛、シートベルト・バッグの紐が当たる痛み、荷物を持つときの症状などを記録します。骨癒合後も疼痛が継続しているか診療録で確認します。
プレート周辺の症状
プレートが皮下で触れる、衣服に当たる、寒い時期に違和感がある等の訴えがある場合は医師に伝えます。抜釘予定があるなら治療計画と症状固定時期を確認します。
肩周囲のリハビリ
固定後の拘縮を防ぐためリハビリが行われる場合があります。可動域の推移を確認し、症状固定時の測定値と実際の生活動作が整合しているかをみます。
復職後の作業
頭上作業、重量物、介助、運転など事故前の具体的業務を整理し、事故後にできなくなった・時間がかかる作業を記録します。勤務先の担当変更も資料化します。
事故前写真・左右差の確認
鎖骨の変形が問題になる場合、事故前の写真が残っていれば肩の高さや骨格の左右差を比較する参考になります。症状固定時は画像と外観、肩機能をそれぞれ確認し、見た目の変化だけで仕事への影響まで推測しないようにします。
示談案の内訳
変形障害、疼痛、肩機能のうち何が後遺障害として評価されているか、逸失利益がどの前提で計算されているかを確認します。勤務先の配慮や作業変更がある場合は、収入額だけでなく実際の労働能力への影響を整理します。
相談時に確認する資料
鎖骨骨折では、事故直後・症状固定時の画像、手術記録、肩可動域、疼痛の診療記録、勤務先の作業変更を揃えると、変形・機能・痛みを分けて評価しやすくなります。