交通事故による胸椎圧迫骨折の後遺障害と賠償

胸椎圧迫骨折は、交通事故の強い衝撃で胸椎の椎体が押しつぶされるように変形する骨折です。車内で身体が強く折れ曲がった場合、歩行者や自転車・バイク利用者がはねられて地面へ落下した場合などに生じることがあります。治療後も背部痛や脊柱の変形が残る場合があり、後遺障害認定では事故直後の骨折だけでなく症状固定時の画像が重要です。

このページの要点

  • 事故直後のX線・CTで骨折形態を確認し、必要に応じMRIで新鮮骨折や神経への影響を評価します。
  • 症状固定時に椎体の圧潰や脊柱変形がどの程度残ったかを確認します。
  • 高齢者や骨粗鬆症がある場合は、事故前の陳旧性骨折との区別が重要です。
  • 背部痛だけでなく、神経症状や仕事への支障を別々に整理します。

胸椎圧迫骨折とは

胸椎は肋骨とともに胸郭を形成しています。特に胸椎下部から腰椎上部にかけては可動性が変化するため、強い外力が集中しやすい部位です。椎体前方が潰れる圧迫骨折のほか、より強い外力では骨片が後方へ突出するような損傷を伴うこともあります。

骨折部を中心とした背中の痛み、起き上がり・寝返りの痛み、長時間座る・立つことで増悪する痛みなどがみられます。高度な変形では姿勢が変わり、慢性的な腰背部負担につながる場合があります。神経組織に影響がある場合は下肢のしびれ、筋力低下等が問題になることもあります。

X線・CT・MRI

X線では椎体高や楔状変形、脊柱の配列を確認します。CTでは骨折線、骨片、椎体後壁など骨の状態を詳しく評価できます。MRIは脊髄・椎間板・靱帯の評価に加え、骨髄内の信号変化から新鮮骨折を判断する材料となる場合があります。

後遺障害申請では、事故直後の画像だけではなく、症状固定時にどの程度変形が残ったかを確認できる画像が重要です。複数椎体を骨折した場合には、それぞれの部位と脊柱全体への影響を整理します。

骨粗鬆症・既往骨折

高齢者では事故前から骨粗鬆症や古い圧迫骨折が存在する場合があります。保険会社から「事故前からの変形だ」と指摘されるケースでは、事故前の画像、事故直後のMRI、事故前の痛み・通院歴、事故後の症状発現を確認します。

骨粗鬆症があることだけで交通事故との因果関係が否定されるわけではありませんが、事故による新鮮骨折なのか、既存変形がどの程度影響しているかは医学的に整理する必要があります。

後遺障害認定

胸椎圧迫骨折後に脊柱の変形が残る場合、脊柱変形障害として後遺障害が問題になることがあります。具体的等級は椎体変形の程度や認定要件により異なり、「圧迫骨折なら必ず○級」というものではありません。また、疼痛や神経症状が残る場合には、それらについて別の評価が問題になることがあります。

後遺障害診断書では骨折部位、残存変形、疼痛、神経症状が実態に沿って記載されているか確認します。変形障害では画像資料が中心となるため、適切な時期・方法の画像が提出できるかも重要です。

治療と症状固定

骨折の安定性や神経症状に応じて、装具による保存療法、リハビリ、手術などが選択されます。骨癒合が得られても、背部痛や姿勢の変化が残る場合があります。症状固定は骨がついたかだけではなく、痛み、変形、神経症状、改善の見込みを踏まえて主治医が判断します。

仕事・家事への影響

建設、介護、運送、製造など、前屈、重量物運搬、長時間立位・運転が必要な仕事では背部痛や脊柱変形の影響が大きくなることがあります。事故後に軽作業へ変更した、残業が減った、勤務時間を短縮したといった事情を記録します。

家事では掃除、洗濯、買い物、布団の上げ下ろしなど、前屈や持ち上げ動作への影響を具体化します。後遺障害が認定された場合には、実際の労働・家事能力への影響を逸失利益の検討材料とします。

示談前の確認

症状固定時の画像が揃っているか、脊柱変形の評価が済んでいるか、骨粗鬆症等の既往症を理由とした減額の根拠が妥当かを確認します。後遺障害申請前に示談を成立させることは慎重に検討します。

よくある質問

必ずではありません。症状固定時の変形や症状を認定基準に照らして確認します。

新鮮骨折の評価や脊髄・軟部組織の確認に有用な場合があります。

事故前後の状態と新鮮骨折の所見を分けて検討します。

画像、診察所見、症状経過を確認して残存症状を検討します。

変形の評価は「骨折した事実」と分ける

胸椎圧迫骨折では、事故時に骨折したことと、症状固定時に後遺障害として評価される変形が残っていることは別の問題です。事故直後に大きく圧潰していても治療後の状態を確認する必要があり、反対に治療後にも明確な変形が残っている場合は、その程度を所定の画像で確認します。画像報告書の文章だけではなく、実際の画像データが提出可能な状態か確認します。

胸椎と腰椎の境界部に注意する

胸腰移行部の骨折では、診断書によって「胸椎」「腰椎」の表記が揺れることがあります。どの椎体を骨折したのかを画像と診療記録で確定し、異なる医療機関の診断名に不一致がある場合は理由を確認します。サイトや申請書類の傷病名だけを見て処理すると、関連する画像や症状を取り違えるおそれがあります。

日常生活の支障を数値・場面で残す

「背中が痛い」という表現だけでなく、何分座ると痛むか、何kg程度の荷物で痛みが増すか、外出後に横になる必要があるかなど、生活上の支障を具体化します。高齢者では、事故前は一人で買い物や家事ができていたのに、事故後は家族の援助が必要になったといった変化も重要です。家族が援助した期間と内容を残します。

将来の治療について

主治医から追加手術や長期的な経過観察について具体的な説明を受けている場合は、その内容を示談前に確認します。将来治療の可能性をサイト側で断定するのではなく、個別の医師所見に基づいて検討する方針を明確にします。

姿勢変化と生活への影響

胸椎の変形が残ると、体幹の姿勢が変化し、長時間立つ・座ることや上半身を起こした姿勢の維持が負担になる場合があります。家事、運転、デスクワーク、接客など、姿勢を保つ時間と症状の増悪を記録します。見た目の姿勢変化だけでなく、実際の動作制限を確認します。

複数椎体を骨折した場合

一つの椎体だけでなく複数の胸椎・腰椎を骨折することがあります。各椎体の骨折部位と変形を画像で確認し、最終的な脊柱全体の形態を評価します。診断書の傷病名が一部しか記載されていない場合、画像報告書や退院時要約も確認します。

骨粗鬆症治療との関係

事故後に骨粗鬆症治療が開始された場合、それが事故外傷の治療そのものなのか、今後の骨折予防を目的とする基礎疾患管理なのかを分けて整理します。保険会社との治療費の範囲を検討する際にも、医師の治療目的を確認することが重要です。

仕事復帰後の負担

長時間の立位や前屈が必要な仕事では、復職後に痛みが増すことがあります。勤務日数、休憩回数、重量物制限、残業時間の変化を具体化し、事故前後の働き方を比較します。

症状固定後の画像保存

胸椎の変形を後から確認する必要が生じることがあるため、症状固定時の画像データと画像診断報告書を保管します。転院・病院統合などで取得に時間がかかる場合もあるため、後遺障害申請時に必要資料をまとめておきます。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

交通事故のことで迷っていませんか

相談料・着手金は0円です。いまの状況をうかがったうえで、次に取るべき手順をお伝えします。

電話で相談 LINEで相談 メール相談