交通事故による大腿骨骨折の後遺障害と賠償

大腿骨は人体でも特に太く長い骨で、交通事故のような強い外力で骨折すると、手術や長期のリハビリが必要になる場合があります。股関節に近い頸部・転子部、中央の骨幹部、膝関節に近い遠位部など、骨折部位によって残りやすい障害が異なります。

このページの要点

  • 骨折部位、転位、手術内容、骨癒合をX線・CT等で確認します。
  • 股関節・膝関節の可動域、脚長差、筋力、疼痛、歩行状態を整理します。
  • 髄内釘やプレートの残存だけで後遺障害が決まるものではありません。
  • 長期休業と復職後の仕事内容の変化を資料化します。

骨折部位ごとの確認点

頸部・転子部では股関節機能、骨幹部では変形や短縮、遠位部では膝関節機能への影響が問題になることがあります。事故直後、術後、症状固定時の画像を比較し、骨折がどのように治癒したかを確認します。

可動域と脚長差

股関節や膝関節の可動域制限が残る場合には健側と比較します。脚長差が生じると歩行バランスや腰への負担につながる場合があるため、医療機関での実測値を確認します。筋力低下や長期入院による筋萎縮が残る場合はリハビリ記録も参考になります。

休業損害・逸失利益

大腿骨骨折は休業が長期化しやすい傷病です。会社員では休業損害証明書、給与資料を整理し、自営業者では確定申告書、帳簿、売上資料を確認します。復職後も立ち仕事、運搬、運転、階段昇降などが難しい場合、配置転換や残業減少を記録します。

よくある質問

固定材料の残存だけでは等級は決まりません。機能障害、変形、疼痛等を確認します。

脚長差の実測値と歩行への影響を確認します。

遠位部骨折等では膝可動域を確認します。

治療計画と症状固定時期、示談時期を確認します。

骨折部位ごとの後遺症を分ける

大腿骨頸部・転子部骨折では股関節機能、骨幹部骨折では変形・短縮や筋力、遠位部骨折では膝関節機能が問題になりやすくなります。骨折名だけで一律の説明にせず、どの部位を骨折したか、関節面へ及んでいるか、どの手術を受けたかを確認します。

骨癒合と固定材料

X線・CTで骨癒合を確認し、髄内釘・プレート・スクリュー等の固定材料の状態を記録します。固定材料が体内に残っている事実だけで後遺障害等級が決まるものではありませんが、周囲の痛み、抜釘予定、再手術の見通しがある場合は主治医の説明を確認します。

股関節・膝関節の可動域

大腿骨は股関節と膝関節の間にあるため、骨折後にいずれか、または双方の可動域が制限される場合があります。症状固定時に健側と比較し、リハビリ中の推移も確認します。正座、しゃがみ、車への乗り降り、階段など具体的な支障を記録します。

脚長差と歩行

骨折の短縮・変形により脚長差が生じる場合、歩行バランス、腰・反対側下肢への負担につながることがあります。本人の感覚だけでなく、医療機関の測定、画像を確認します。補高靴やインソール等を使用する場合は医師の指示と費用を記録します。

筋力低下・長期入院

長期の免荷・入院によって大腿筋が萎縮し、骨癒合後も階段や立ち上がりが難しいことがあります。大腿周囲径や筋力、リハビリ記録、杖・歩行器の使用期間を確認します。骨折そのものの後遺症と、回復途上の廃用性筋力低下を分けて経過をみます。

休業・復職

長期休業となった場合は、入院期間だけでなく自宅療養、荷重制限、医師の就業許可を確認します。復職後も現場作業から内勤へ、長距離運転を短距離へ変えたなど実際の仕事の変化を記録します。自営業者では売上、代替人員、本人の作業割合を事故前後で比較します。

高齢者の事故

高齢者では骨粗鬆症や事故前の歩行能力も評価上重要です。事故前は自立していたのに事故後に杖・介助が必要になった場合、事故前後のADLを家族・介護記録から確認します。既往症の有無だけで事故の影響を小さく扱わず、具体的な変化を整理します。

示談前の確認

骨癒合、股・膝可動域、脚長差、疼痛、歩行、傷痕、仕事への影響がすべて評価されているか確認します。複数障害が残る場合は最終的な等級の扱いも検討します。

画像、股・膝可動域、脚長差、筋力、疼痛、固定材料、追加手術、仕事への影響を一括で点検し、骨折名だけで評価を終えないようにします。

股関節側・膝関節側を両方確認する

大腿骨は股関節と膝関節をつなぐため、骨折部位に応じて一方または双方へ機能障害が残る場合があります。近位部では股関節、遠位部では膝の可動域を確認し、骨幹部でも長期固定により隣接関節が拘縮していないかをみます。

大腿骨頭・頸部の血流

骨折部位によっては大腿骨頭への血流が問題となる場合があります。将来の骨頭壊死等をサイト側で断定せず、主治医の画像評価・経過観察方針を確認します。追加治療の具体的見通しがある場合は示談前に資料化します。

骨幹部の短縮・回旋変形

骨幹部骨折では脚の短縮や回旋のずれが歩行へ影響する場合があります。左右の脚長、歩容、画像所見を確認し、補高・インソール等の使用があれば記録します。

膝に近い骨折

遠位部骨折では関節面の損傷や術後拘縮で膝が曲がりにくくなる場合があります。可動域、階段、正座、しゃがみ込み等の支障を具体化します。

長期免荷と筋力

荷重制限が続くと大腿筋が低下し、骨癒合後も歩行・階段で疲れやすいことがあります。周囲径・筋力・リハビリ経過を確認し、改善途中かどうかを症状固定判断に反映します。

高齢者の事故前ADL

高齢者では事故前の歩行・家事・介護認定状況を確認します。事故前は独歩・自立していたのに事故後杖や介助が必要になった場合、その変化を家族・介護記録等で具体化します。

復職・家事

立位、運転、重量物、階段等の業務制限と、家事での買い物・掃除・育児への支障を整理します。給与額だけでなく作業内容の変化を確認します。

手術後の傷痕・疼痛

大腿骨骨折の手術では切開創が複数残る場合があります。傷痕の痛み、衣服との摩擦、つっぱり感がある場合は診療記録へ残します。下肢の露出面に大きな傷痕が残る場合は醜状障害の検討も別途行います。

将来の再手術

抜釘や人工関節等について主治医から具体的な再手術予定を説明されている場合、時期・必要性を示談前に確認します。可能性だけを抽象的に主張せず、医学的な見通しを資料化します。

後遺障害診断書の点検

大腿骨骨折では、股・膝の可動域、脚長差、筋力、疼痛、歩行、固定材料・追加手術の見通しを確認します。骨折部位によって評価点が異なるため、診断書と画像、リハビリ記録を対応させます。

仕事への長期影響

復職後も現場作業、長距離運転、階段、重量物が制限される場合があります。事故前の担当業務と現在の業務を比較し、給与が同じでも周囲の配慮や配置転換があるか確認します。

相談前に整理する資料

大腿骨骨折では、骨折部位、手術方法、骨癒合、股・膝可動域、脚長差、歩行、復職状況をまとめます。事故前後の仕事内容を比較できる勤務先資料があると、就労への影響を具体的に確認できます。

相談時に確認する実務資料

大腿骨骨折では、事故直後のX線・CT、手術記録、リハビリ記録、股・膝の可動域、脚長差、歩行補助具、復職状況を一式で確認します。長期休業となった場合は、入院期間だけでなく、自宅療養・軽作業期間も医学的根拠と照合します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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