交通事故による肩関節損傷の後遺障害と賠償
肩関節は広い範囲に動く反面、外力の影響を受けやすい関節です。交通事故では、肩を直接打ちつけた、腕をひねられた、転倒して手をついたといった状況により、肩関節脱臼、腱板損傷、関節唇損傷などを生じることがあります。治療後に腕が上がりにくい、夜間痛が続く、荷物を持つと痛いといった症状が残る場合、画像所見と可動域、治療経過を整理する必要があります。
このページの要点
- X線で骨折・脱臼を確認し、腱板等の軟部組織はMRIや超音波等で評価されることがあります。
- 肩腱板には加齢性変化もみられるため、事故前の症状と事故直後からの経過が重要です。
- 可動域制限は健側と比較し、測定方法と症状固定時の状態を確認します。
- 脱臼後の反復性不安定感や腱板損傷後の筋力低下など、傷病ごとの支障を分けて整理します。
腱板損傷
腱板は肩を安定させ、腕を挙げる働きを支える腱の集まりです。損傷すると、腕を横から上げる動作や背中へ手を回す動作で痛みが出たり、夜間痛が続いたりすることがあります。画像で損傷が確認されても、それが事故によるものか、もともとの変性が事故を契機に症状化したのかが争点になる場合があります。
そのため、事故前に肩の治療歴があったか、事故直後から肩痛を訴えていたか、初診時の診療録に症状が記載されているか、受診が途切れていないかを確認します。事故直後の診断書に腱板損傷と書かれていなくても、肩痛や可動域制限の記録が継続していれば重要な資料になる場合があります。
肩関節脱臼
肩関節脱臼では、整復後も関節の不安定感、疼痛、可動域制限などが残る場合があります。骨折を伴っていないか、関節唇や腱板に損傷がないかも確認します。再脱臼や不安定性が生じている場合には、その頻度や診察所見、治療内容を整理します。
後遺障害診断書
肩関節の機能障害を検討する場合、屈曲、外転などの可動域を健側と比較します。疼痛のみが残る場合は、MRIなどの画像所見、症状の一貫性、治療経過との整合性を確認します。筋力低下、脱臼後の不安定性、手術内容なども症状に応じて整理します。
仕事への影響
腕を高く上げる作業、重量物を扱う作業、介助、運転、調理、美容、医療行為などでは肩機能が重要です。事故前と同じ勤務先に復職していても、作業量の低下、周囲の補助、残業・夜勤制限、配置転換がある場合には実態を確認します。家事では洗濯物を干す、掃除、買い物、子どもの抱き上げなどへの影響を具体化します。
示談前の確認
MRI等の検査が必要か、可動域測定が適切に行われているか、事故前の既往歴と事故後の症状を区別できているか、後遺障害申請の要否が検討されているかを確認します。
よくある質問
変性があるだけで事故との関係が否定されるわけではありません。事故前後の症状、事故態様、初診記録を確認します。
骨・軟部組織の損傷や治療経過を確認し、残存症状として評価できるか検討します。
疼痛の継続性と画像・診察所見を確認します。
手術の有無だけで判断されるものではありません。残った症状と客観的所見を確認します。
腱板損傷と事故前の変性
肩腱板には加齢性変化がみられることがあるため、MRIで損傷が写っただけで事故との因果関係が自動的に決まるわけではありません。事故前に肩痛で治療を受けていたか、仕事・スポーツで支障があったか、事故後いつから夜間痛や挙上困難が出たかを確認します。事故前の医療記録があれば比較します。
事故前に無症状でも画像上変性が存在していた可能性はあります。逆に既往変性があっても、事故によって症状が新たに出現・増悪した可能性があります。どちらかを推測で断定せず、事故態様・初診記録・MRI・診察所見の整合を確認します。
肩関節脱臼後の不安定性
脱臼が整復されても、腕を特定方向へ動かすと抜けそうに感じる、スポーツや高所作業が怖いといった不安定性が残る場合があります。再脱臼の回数、診察所見、関節唇などの損傷、手術の有無を確認します。単なる心理的不安か、医学的な関節不安定性があるかを分けて整理します。
可動域測定と痛みによる制限
肩の屈曲・外転等の可動域を測定するとき、痛みで動かせないのか、拘縮・構造的障害で動かないのかで意味が異なる場合があります。リハビリ中の経時的数値、主治医・理学療法士の評価を確認します。測定値だけを単独で抜き出さず、画像・治療経過と合わせます。
手術を受けた場合
腱板修復や関節鏡手術等を受けた場合は、術前MRI、術中所見、術後リハビリ、再断裂の有無などを確認します。手術後は一定期間可動域が制限されることがあるため、症状固定を急がず回復経過を確認します。手術を受けた事実そのものではなく、最終的な機能障害を評価します。
就労・家事への影響
美容師、看護・介護、建設、製造、調理、運送などでは腕の挙上・保持を反復します。事故後に高所作業を外れた、患者の移乗を同僚に頼む、棚上げ作業ができないなどを記録します。家事では洗濯物、掃除、着替え、洗髪、育児への支障を具体化します。
保険会社から既往症を指摘されたら
示談案で既往変性を理由に減額されている場合、どの資料を根拠に、どの程度事故の影響を小さく評価しているのか確認します。事故前後の症状と画像を整理し、医学的根拠のない一律減額となっていないか検討します。
肩関節の痛みを動作別に記録する
肩の症状は、前へ上げる、横へ上げる、背中へ回す、外へひねるなど動作によって異なります。夜間痛、寝返り、衣服の着脱、洗髪、高い棚の物を取る動作など、具体的な場面を記録します。診察室で一度腕が上がることだけで生活上の機能を判断しないことが重要です。
脱臼の再発・不安定感
脱臼後に再脱臼がない場合でも、特定姿勢で抜けそうな感覚が強く、仕事やスポーツを避けることがあります。医学的な不安定性があるか、関節唇・靱帯の損傷、手術歴を確認します。
腱板断裂の大きさ・筋萎縮
MRI等で腱板損傷が確認された場合、損傷部位や程度、筋萎縮等を医師がどのように評価しているか確認します。画像所見だけで事故との関係や後遺障害を断定せず、事故前後の症状・治療経過と合わせます。
可動域測定
症状固定時の屈曲・外転等を健側と比較します。疼痛で一時的に動かしにくいのか、拘縮・構造的障害があるのかをリハビリ記録も含めて確認します。
手術後の経過
腱板修復や関節鏡手術等を受けた場合、術後は段階的なリハビリが必要になることがあります。手術後すぐの可動域で固定せず、改善が落ち着くまで主治医の見通しを確認します。
職業・家事への影響
腕を高く保つ美容、医療、建設、製造、調理、介護等では小さな可動域低下でも負担が増えます。家事では洗濯物、掃除、調理、育児への支障を具体化します。
既往変性の主張への対応
事故前からの変性を指摘された場合、事故前の通院・症状、事故後の発症時期、初診記録、MRIを整理します。一律に事故との関係を否定・肯定せず医学的整合性を確認します。
肩の筋力低下も確認する
可動域が比較的保たれていても、腱板損傷等で筋力が低下し、腕を上げた状態を保てない場合があります。診察・リハビリでの筋力評価と、仕事・家事での持続動作を確認します。
事故前の肩の状態
事故前に肩痛や五十肩等があった場合、通院歴、可動域、仕事への支障を確認し、事故後に何が新たに生じたかを整理します。既往歴を隠さず正確に比較することが重要です。