交通事故による上腕骨骨折の後遺障害と賠償
上腕骨は肩から肘までをつなぐ骨です。骨折部位によって、肩に近い近位端、中央の骨幹部、肘に近い遠位端に分けられ、残りやすい障害も異なります。交通事故では、肩や腕への直接衝撃、転倒時に腕をつく動作などで骨折することがあります。
このページの要点
- 骨折部位、転位、手術内容、骨癒合をX線・CT等で確認します。
- 近位端では肩、遠位端では肘の可動域制限が問題になりやすくなります。
- 骨幹部では橈骨神経などの神経症状が残っていないか確認します。
- 骨が癒合したことと、関節機能や神経症状が回復したことは別問題です。
骨折部位ごとの特徴
近位端骨折では肩関節周囲の拘縮や可動域制限、遠位端骨折では肘関節の動きに影響が出ることがあります。骨幹部骨折では骨の変形や神経障害が問題になる場合があります。同じ上腕骨骨折でも、骨折部位と関節面への影響によって確認すべき項目は異なります。
画像と可動域
事故直後のX線・CT、術後画像、症状固定時の画像を比較します。肩関節や肘関節に機能障害が残っている場合は可動域を測定し、健側と比較します。手術後のプレートやスクリューが残っている場合でも、それだけで後遺障害が決まるわけではありません。
神経症状
骨幹部骨折などでは橈骨神経が影響を受けることがあり、手首や指が動かしにくい、しびれるといった症状が出る場合があります。筋力、知覚、必要に応じた神経検査などを確認します。骨が癒合しても神経症状が続いている場合は、その経過を後遺障害診断書へ反映できているか確認します。
休業・逸失利益
上腕を使う仕事では、押す、引く、持ち上げる、運ぶといった動作が難しくなることがあります。現場作業、介護、製造、運送などでは事故前後の作業内容を比較します。家事従事者も、洗濯、掃除、買い物などへの影響を具体化します。
よくある質問
可動域と原因を確認し、機能障害として検討します。
橈骨神経障害などの可能性を含め、神経学的所見を確認します。
治療予定、追加治療費、症状固定時期を確認して判断します。
配置転換や作業制限など実際の影響を確認します。
骨折部位で後遺症が変わる
上腕骨近位端骨折では肩関節の拘縮・可動域制限、骨幹部骨折では変形や橈骨神経障害、遠位端骨折では肘関節の可動域制限が問題になりやすくなります。「上腕骨骨折」という共通の診断名で一括りにせず、骨折部位、関節面への波及、手術方法を確認して後遺障害の論点を決めます。
画像を時系列で並べる
事故直後のX線・CT、整復・手術直後、骨癒合過程、症状固定時の画像を並べます。骨癒合の程度、変形、短縮、固定材料の状態を確認し、可動域や疼痛との関係を整理します。複数医療機関へ転院している場合は、画像CDと報告書が分散しないようにまとめます。
肩・肘の可動域
近位端骨折では肩、遠位端では肘の測定が中心となります。固定期間が長いことで隣接関節に拘縮が生じる場合もあります。症状固定時に健側と比較し、実際の状態を正しく反映した測定かを確認します。骨折した部位と違う関節の測定が漏れていないかも注意します。
橈骨神経障害
骨幹部骨折では橈骨神経が影響を受け、手首や指を反らしにくい、手背の感覚が鈍いなどの症状が出ることがあります。事故直後から神経麻痺があったのか、手術後に出現したのか、回復経過を診療記録で確認します。筋力・知覚の所見、必要に応じ神経検査を整理します。
リハビリと症状固定
骨が癒合しても、肩・肘のリハビリによる改善が続いている場合があります。保険会社から一定期間で治療費終了を提示されても、可動域が改善途上、追加手術・抜釘予定がある場合は、主治医の治療方針を確認します。症状固定は「骨がついた日」と機械的に同じではありません。
就労・家事への影響
腕を持ち上げる、押す、引く、運ぶ作業だけでなく、運転、PC、洗濯物、掃除、買い物などにも影響します。事故前は片手でできた作業を両手で行うようになった、同僚が重量物を担当しているなど、支障を具体化します。復職後に給与が維持されていても、周囲の配慮がある場合は将来の労働能力評価の資料となります。
後遺障害診断書の確認
骨折部位、残存変形、肩・肘の可動域、疼痛、神経症状が漏れなく記載されているか確認します。診断書と画像で左右・部位が一致しているか、リハビリ記録の数値と大きく矛盾していないかも点検します。
近位端骨折と肩関節
上腕骨近位端骨折では、骨折線が肩関節周囲に及ぶため、骨癒合だけでなく肩関節の可動域・筋力を確認します。固定や手術後の拘縮、腱板等の合併損傷がある場合、腕の挙上や回旋へ影響することがあります。
骨幹部骨折と変形
骨幹部骨折では、骨の短縮・角状変形・偽関節等が問題になる場合があります。事故直後と症状固定時の画像を比較し、腕の長さや外観、筋力、疼痛との関係を確認します。
遠位端骨折と肘関節
肘に近い遠位端骨折では、関節面への影響や拘縮で屈曲・伸展が制限される場合があります。手術後の可動域、リハビリ、肘周囲の神経症状を確認します。
橈骨神経麻痺の経過
骨幹部骨折では橈骨神経障害を伴うことがあります。手首・指を反らす筋力、手背の知覚、神経症状が事故直後からどう変化したかを記録します。一時的に改善した場合も経過は重要です。
手術・抜釘
髄内釘やプレートを使用した場合、固定材料の状態、骨癒合、抜釘予定を確認します。抜釘前後で症状が変わる見込みがある場合、症状固定時期を主治医と相談します。
休業・復職
腕の骨折では、固定期間中は事務作業でも困難な場合があります。復職後の片手作業、重量物制限、運転制限を記録し、完全休業と軽作業期間を分けて整理します。
日常生活の支障
着替え、洗髪、食事、買い物、掃除、睡眠など、肩・肘の可動域に応じた生活支障を具体化します。本人が工夫してできている場合も、時間や負担が事故前とどう変わったかを確認します。
示談前の資料
事故直後・術後・症状固定時の画像、可動域、神経所見、手術記録、仕事資料を揃えます。骨癒合だけで示談せず、関節・神経の残存障害を確認します。
左右差と利き腕を確認する
上腕骨骨折では、負傷側が利き腕かどうか、事故前に反対側の肩・肘へ障害がなかったかを確認します。可動域は健側との比較が基本となりますが、健側にも既往障害がある場合は単純比較が難しくなるため、医師の評価を確認します。
骨折後の筋力と持久力
可動域が回復していても、長時間腕を上げる、荷物を保持する作業で疲労が強くなる場合があります。筋力だけでなく、反復作業・持続作業への影響を仕事・家事の場面で記録します。
手術後の傷痕
プレート固定等で大きな手術痕が残った場合、位置・大きさ、痛み・つっぱりを確認します。露出面に該当する可能性がある場合は外貌・皮膚の評価も別途確認します。
通院・転院資料
救急病院からリハビリ病院や近隣整形外科へ転院するケースでは、画像と手術記録が分散しやすくなります。後遺障害申請前に各医療機関の資料をつなぎ、骨折部位・神経症状・可動域の経過を確認します。
示談時の注意
「骨がついた」「復職した」だけで損害評価を終えず、残存する肩・肘・神経症状と仕事内容への影響を確認します。複数の障害がある場合は最終等級の扱いも点検します。
示談前に確認する資料
上腕骨骨折では、骨折部位、術式、骨癒合、肩・肘の可動域、橈骨神経等の神経症状を一度に確認します。骨がついたことだけを理由に示談せず、隣接関節と神経の障害が評価済みかを点検します。