【解決事例/041】20代の男性のむち打ちの症状につき、異議申立ての結果、14級9号が認定されたケース

下肢,併合14級,腰椎捻挫,頚椎捻挫・外傷性頚部症候群

依頼者属性性別男性
年代20代
職業会社員
事故態様と相談事故場所日出町
事故状況自動車で信号待ちで停車中、後続の自動車に追突された。
相談のタイミング事故から約6か月後
相談のきっかけ保険会社から治療費を打ち切られたため、今後のことについて相談したい。
怪我と後遺障害傷病名外傷性頚部症候群、腰椎捻挫
自覚症状頚部から両肩にかけての痛み、背部痛、腰痛、右下肢の痺れ
後遺障害等級併合14級(14級9号、14級9号)
保険会社提示額損害項目保険会社提示額
金額保険会社の事前提示なし
備考(保険会社が金額を提示する以前に弁護士が介入したため)
獲得賠償金額損害項目最終受取金額
金額約325万円
備考治療費等を含む賠償総額は、約430万円

担当弁護士の振返りポイント(倉橋)

 信号待ちの停車中に後続車に追突される事故にあい、頸椎捻挫、腰椎捻挫の負傷をしたケースです。事故から約6か月後、保険会社から治療費を打ち切るとの連絡があり、今後のことについて相談したいということで来所され、受任に至りました。

 依頼者は、保険会社から治療費の支払いを打ち切られた後も、健康保険を使用して自費で通院していました。治療状況や症状の推移からすると、まだ治療効果が期待できる状態であったため、通院を継続し、症状固定の時期を見定める方針としました。
 事故から約10か月後、症状固定とし、被害者請求の方法で、後遺障害認定の申請手続をしましたが、非該当という結果でした。

 しかし、依頼者は、症状固定後も、症状がほとんど変わらずに残存し、自費での通院治療を継続するほどでしたから、結果に異議を申立てました。
異議申立てにあたっては、医療機関からカルテなどを取り寄せるとともに、整骨院から施術録を取り寄せました。また、整形外科と整骨院から、それぞれ意見書を取り付けました。これらの資料を添付して、異議申立てを行った結果、頚部から両肩にかけての痛み、背部痛、腰痛、右下肢の痺れの症状について、「局部に神経症状を残すもの」として、14級9号の後遺障害が認定されました。

 後遺障害の認定後、保険会社と賠償金についての示談交渉を行い、裁判所基準をベースとした金額の示談にて解決できました。

 

担当弁護士の振返りポイント(倉橋)

 異議申立てにより14級9号が認定されたケースです。

 自賠責保険の後遺障害は、①事故との間に因果関係が認められ、②受傷時から一貫して継続していて、③将来においても回復が困難であると見込まれ、④労務に支障が生じる程度の症状について認定されます。
 本件では、自賠責保険への初回請求は非該当でしたが、初回の認定結果後、初回請求の提出資料を再度検討した結果、上記の認定要件のうち、③と④(特に③)の要件が不十分と判断され非該当となったと考えられました。そこで、カルテなどの医療記録を取り寄せるとともに、主治医に意見書を書いていただき、③④の要件をみたす症状であることを疎明した結果、14級9号の後遺障害が認定されました。

 本件では、20代の依頼者に、むちうちの14級9号が認定されたことが、特徴的です。むちうちの14級9号は、若年者は認定されにくく、年齢が上がるほど認定されやすい傾向があると感じます(そのような基準が公表されているわけではありませんが、明らかにそのような傾向を感じます。)。これは、若年者の場合、上記③の要件を満たしていると判断されにくいからであると考えられます。したがって、若年者の認定に際しては、特に③の点の資料がしっかりとしていることが必要となります。

14級9号の後遺障害とは、「局部に神経症状を残すもの」という後遺障害です。痛みや痺れなどの症状について認定されるのが典型的なケースです。むち打ちや骨折の後などに痛みや痺れなどが残った場合に認定されることがあり、交通事故の後遺障害で最も多く問題となる種類の後遺障害です。
 そして、14級9号の認定は、申請する側としては、認定を得るのに非常に難しい側面のある後遺障害でもあります。それは、14級9号の認定基準と関係します。14級9号は、画像検査や神経学的検査など症状を客観的に裏付ける所見(他覚的所見といいます。)がないにもかかわらず、上記の4つの要件をみたす症状であると医学的に説明可能な症状について認定されます。そして、この認定は、様々な事情を総合的に考慮したうえでの判断になるので、認定結果を予想することが容易ではなく、実際の認定の現場でもブレがあるように感じます(認定を行う調査事務所の担当者や調査事務所ごとに認定のされやすさが同じではないとも言われます。)。
 このような難しさがあるため、14級9号の認定を適切に得るためには、公表されていない自賠責保険の認定基準についても推測したうえで、適切な申請を行うことが必要となります。


 

 

※個人が特定されない範囲で内容を加筆修正しています。


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