2019.7.23(最終更新日:2019.7.23)

「信号待ちで停車していたら追突されて、首にケガをしてしまった。」
交通事故でもっとも多いのが、このような、むちうちのケガです。ここでは、むちうちの治療や後遺障害について正しく知りましょう。

1 むちうちとは(原因など)

むちうち損傷とは、交通事故による衝撃で、首の部分の骨である頚椎(けいつい)が、むちのようにしなる動きをすることによって、首の部分の筋肉、靭帯、椎間板、血管、神経などに起こる損傷のことをいいます。

むちうちの場合の診断書に記載される傷病名はさまざまで、「頚椎捻挫」、「頚部挫傷」、「外傷性頚部症候群」、「頚椎神経根症」、「頚椎椎間板ヘルニア」、「脊柱間狭窄症」などと記載されます。

2 むちうちの症状

むちうちは、どの部分にどのような損傷をしたかによって、5つのタイプに分類され、それぞれのタイプで症状は違います。

(1)頚椎捻挫型

首の周辺の筋肉や靭帯が過度に伸びたり部分断裂を起こすタイプのむちうちです。
首の周囲の運動制限や運動痛が主たる症状です。
むちうちの約70%がこのタイプであると言われ、多くの場合、1か月半から3か月以内に症状はなくなり治癒するとされます。

(2)神経根症型

 

頚椎から枝分かれした末梢神経である神経根の症状が明らかに認められるタイプのむちうちです。
頚椎捻挫型の症状に加えて、知覚障害、拡散痛、反射異常、筋力低下などの神経症状があらわれます。左右いずれかの肩から手指にかけてのしびれ、痛み、重さ感、だるさ感などがある場合は、この神経根症型のむちうちが疑われます。

(3)バレー・リュー症候群型

自律神経症状や脳幹症状があらわれるタイプのむちうちです。
頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などの症状があらわれます。
バレー・リュー症候群については、どのような原因で発症するのかについての仕組み(エビデンス)が、いまだにはっきりとはわかっていません。

(4)神経根症型+バレー・リュー症候群型

神経根症型の症状に加えて、バレー・リュー症候群型の症状もあらわれるタイプのむちうちです。

(5)脊髄症型

深部腱反射の亢進、病的反射などの脊髄症状があらわれるタイプのむちうちです。
手足のしびれ、痙性歩行(つま先を引きづるような歩行)、手指の細かく動かせない、筋力の低下、知覚の障害、膀胱の障害などがあらわれます。
多くは、加齢現象による頚椎椎間板の退行性変化も関係しているといわれています。
脊髄症型は、現在では、むちうちのカテゴリーではなく、脊髄損傷のカテゴリーとされるのが一般的です。したがって、後遺障害の検討をする場合も、むちうちとしての後遺障害ではなく、脊髄損傷による後遺障害として、より重い等級を視野に入れて検討をする必要があります。

(遠藤健司・鈴木秀和編著『むち打ち損傷ハンドブック 第3版』、栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題 第2版』、南山堂『医学大辞典 第19版』参照)

3 むちうちの治療法

むちうちの治療方法は経験則に基づき、さまざまな治療法を組み合わせて行われています。

(1)安静

受傷初期の急性期の安静は大切であるとされています。
ただ、最近では、不必要な安静は症状を長引かせると考えられています。症状の程度にもよりますが、休養はなるべく1~2週間以内にして、急性期が過ぎたらできるだけ早く日常生活に復帰して、少しずつ体を動かしながら治療をした方が回復が早いとされています。

(2)薬物治療

症状に応じて、薬物療法が行われることがあります。痛みの強い急性期や、痛みの悪循環(痛い⇒筋緊張⇒疼痛物質の循環不全⇒痛み)に陥った症状の緩和を目的として行わる場合が多いといわれています。

(3)神経ブロック治療

疼痛が強い場合などに、神経ブロック治療が行われることがあります。神経系統の伝達をブロックすることで疼痛をブロックする治療です。数回の治療で症状が劇的に改善することもあります。
また、バレー・リュー症候群には、星状神経節ブロック治療が一定の効果があると考えられています。

(4)理学療法

頚椎牽引・温熱療法・電気療法などの物理療法と、運動療法があります。軟部組織の治癒を促進し、炎症を取ることを主な目的として行われる治療です。

(5)鍼灸・整骨院での治療

整骨院では手技治療・電気治療・温熱治療・運動療法などの理学療法が行われます。鍼灸院では鍼治療をメインとした治療が行われます。
もっとも、保険会社の担当者によっては整骨院での治療をなかなか認めなかったりするケースもあるので注意が必要です。

4 むちうちの治療期間

当事務所での過去の事例を見ると、症状が治る方の場合、事故後6か月以内の治療期間であることが多いです。事故から6か月経っても症状が治らない方については、後遺障害の認定手続を検討する必要があります。

なお、むちうちの治療期間については、過去にいくつかの調査研究が行われています。症状回復期間については報告によりばらつきが大きいですが、近時は、「一般的にむちうち損傷は長期化することは少なく、1か月以内で症状が治り治療を終了する例が約80%を占め、6か月以上治療を要するものは約3%である」という報告が多いと言われています。

このように、むちうち損傷の予後は良好なので、事故から3か月から6か月を1つの目安にしっかりと治療を行い、症状を治すことが大事になります。

5 むちうちの治療打ち切り

まだ通院治療を続けたいのに、保険会社や医師から治療を打ち切られる場合があります。特に、むちうち損傷の場合、症状の裏付けとなる画像所見などの客観的所見がない場合が多いため、治療の打ち切りが問題となるケースが多いのが特徴です。

(1)治療打ち切りのパターンと時期

①保険会社から治療を打ち切られる場合
むちうちの治療について、保険会社の担当者の多くは、「できるだけ早く治療を終了させたい」と思っています。治療の打ち切りを打診してくるタイミングは、どの保険会社かによって多少の違いはありますが、概ね似た傾向にあります。基本的には、事故の大きさによって、打ち切りのタイミングを決めていることがうかがわれ、軽微な事故(修理費20万円以下が目安)の場合は3か月、それ以外の事故の場合は6か月が1つの目安といえます。車が大破するような大きな事故の場合は、6か月を超えても治療を認めることもあります。

②医師から治療を打ち切られる場合
医師から治療を打ち切られる場合もあります。もっとも、医師は、患者が治療の継続を希望し、治療効果が出ている限りは治療を続けてくれることが多く、医師から治療打ち切りの打診をしてくるケースは、それほど多くはありません。

ただ、通院する医療機関や医師によっては、むちうちの治療について早期に打ち切りをしてくるため、注意が必要です。例えば、症状の程度や治療経過などに関わらず、「むちうちの治療は一律3か月で治療を打ち切る」と決めている医師もいます。また、「2週間以上、通院期間が空くと治療終了とする」などの独自の決まりがある医師もいます。これらの独自の決まりを、医師が事前に患者に伝えることはほとんどないので、患者は、突然治療を打ち切られたと感じることになります。

当事務所では、大分県内の医療機関や医師が、むちうちについて、どのような治療方針をもっているかを把握しています。したがって、相談者や依頼者が適切な治療を受けることができるように、医療機関や医師の選び方についてもアドバイスをさせていただいています。

(2)治療が打ち切られやすい場合

①軽微な事故の場合

軽微な事故の場合は、3か月程度で保険会社が治療の打ち切りを打診してくるこということがあります。軽微な事故であるか否かは、修理費用が1つの目安となります(修理費用20万円以下の事故が目安です。)。また、駐車場内での車どうしの事故も軽微な事故とみられることが多く、早期の打ち切りに注意する必要があります。

②治療が長引いている場合

軽微な事故といえなくても、事故から6か月近く経つと保険会社が治療の打ち切りを打診してくるケースが多いです。事故から6か月近くが経つ頃には、治療効果が少なくなってきていることも多いため、治療を終了して後遺障害の手続を行うことを検討する必要があります。

③過剰な治療が行われている場合

事故の大きさやけがの程度に見合わない過剰な治療をしている場合も、早期に治療が打ち切られやすいです。例えば、事故から3か月近くが経つのに、毎日のように整形外科や整骨院に通院をして同じ治療をしているような場合は、早期の打ち切りに注意をする必要があります。治療効果が出ている場合は、通院の頻度がだんだんと少なくなり、治療の部位も少なくなっていくのが自然な治療経過です。そうでない場合は、治療効果の出ていないムダな治療をしているとみられる恐れがあります。

④通院にブランクが生じた場合

治療期間中に、通院していない期間が長くあると、治療を打ち切られやすくなります。1か月以上の治療のブランクがあると、多くの場合、治療は打ち切りになります。仕事が忙しかったりして、なかなか通院ができないこともあるでしょうが、「1か月以上の海外出張があった」などの特殊なケースを除き、1か月以上のブランクがあると、その後の治療が認められないというのが実情です。

⑤物損事故で事故届をしている場合

交通事故にあった場合は、警察に事故届を行う必要があります。この事故届は、物損事故か人身事故か、いずれかで届出を行います。

交通事故の当事者のどちらかがケガをしている場合は、基本的には人身事故として届出を行わなければなりません。しかし、時々、「人身事故で届出をすると、加害者の方がかわいそうだから」、「加害者から、どうしても物損事故で届出をして欲しいと頼まれた」などの理由で、ケガをしているのに、物損事故で事故届を行う方もいます。ただ、物損事故で事故届をした場合、そのことを理由に、保険会社から早期の治療の打ち切りを打診されるケースもあるので注意する必要があります。

⑥MRIなどの画像所見がない場合

症状の原因と考えられるMRIなどの画像所見がない場合は、そのことを理由に早期の打ち切りを打診される場合があります。

交通事故でケガをした場合、レントゲンはほとんどのケースで撮影されますが、MRIの検査を行っていないことがよくあります。しかし、レントゲンでは、頚椎の内部が撮影されないため、むちうちの画像検査としては不十分です。したがって、MRIの画像検査をできるだけ早い時期に行うことが重要になります。

(3)治療打ち切りへの対策

〈1〉打ち切り前の対策

①医師への対策

保険会社は、治療の打ち切りを打診する前に、主治医に治療を続ける必要性を照会することが多いです。この保険会社からの照会に対して、主治医が「治療の継続は必要ない」と回答してしまうと、治療打ち切りとなってしまいます。
したがって、主治医とは、常日頃からしっかりとコミュニケーションを取って、必要な情報を正確に伝えるようにしておく必要があります。診察の際には、現在の症状・治療の効果・治療の継続を希望することなどを、しっかりと伝えるようにしましょう。

②保険会社への対策

保険会社への打ち切り対策としては、情報をしっかりと共有することが重要です。保険会社の担当者も、現在の症状や治療効果、主治医の見解などについての情報がないと、治療継続の社内決裁を取ることが難しくなります。したがって、これらの情報をこまめに保険会社の担当者に伝えて、治療プランと今後の見通しを共有することで早期の打ち切りを防ぎやすくなります。

〈2〉打ち切り後の対策

①自賠責保険の範囲内での自費通院

人身事故については、1つの事故につき、120万円を上限として治療費や慰謝料、休業損害などの人身損害が賠償されます。任意保険会社から治療費が打ち切られた場合は、いったん自費通院を行い、その後に自賠責保険の限度額の範囲内で治療費を請求するという方法があります。自費通院にあたっては、健康保険を使用することで、治療費の自己負担分を抑えることができます。

②労災保険への切り替え

通勤中の交通事故については、労災保険も使用できます。任意保険会社に治療を打ち切られた場合には、労災保険に切り替えて治療を続ける方法もあります。労災保険の場合は、任意保険会社のように早期の治療打ち切りを打診してくるようなことはまずなく、自賠責保険のように限度額もないため、納得のいく期間、治療を続けやすいといえます。

③人身傷害保険への切り替え

自分の契約する自動車保険に人身傷害特約が付いている場合には、人身傷害特約に切り替えて治療を継続する方法もあります。もっとも、人身傷害特約での治療の継続は、必ず認められるわけではありませんので注意が必要です。

6 むちうちの後遺障害等級認定

 治療を続けたけれど完治せずに症状が残ってしまった場合、自賠責保険の後遺障害等級認定を受けることを検討します。
自賠責保険で、むちうちの後遺障害が認定された場合、後遺障害分の賠償金も支払われることになり、最終的な賠償額が大きく増加します。

(1)14級9号

「局部に神経症状を残すもの」という認定基準で定められているのが、14級9号の後遺障害です。
「仕事や家事の効率が5%以上下がる」程度の「常時」の「痛みや痺れ」が、反永続的に続く可能性が高い場合に認定されるといわれています。
むちうちの14級9号の認定にあたっては、①事故状況、②治療経過、③症状の経過、④通院期間・頻度、⑤画像所見などの検査結果、⑥残存した症状の内容・程度などの様々な事情を総合的に考慮し、上記のような症状があることが医学的に「推定」できるかどうかが判断されます。

むちうちの14級9号は、交通事故による後遺障害の認定の中でも、最も難しい後遺障害の1つであるといえます。むちうちによる後遺症は、症状があることを裏付ける客観的な検査結果がない場合がほとんどです。症状があることを直接示す証拠がない中で、後遺障害を認定させるのが14級9号の後遺障害です。そのため、申請書類の些細な違いで、認定されたり、認定されなかったり結果が分かれます。したがって、上記に挙げたような様々な事情を考慮して、細心の注意を払って申請書類を作成しなければなりません。むちうちの14級9号の後遺障害の申請こそが、交通事故を扱う弁護士の腕の見せ所であるといえます。

(2)12級13号

「局部に頑固な神経症状を残すもの」という認定基準で定められているのが、12級13号の後遺障害です。
「仕事や家事の効率が14%以上下がる」程度の「常時」の「痛みや痺れ」が、反永続的に続く可能性が高い場合に認定されるといわれています。
むちうちの12級13号の認定にあたっては、「画像所見」、「神経学的検査」、「自覚症状」に整合性があるか否かが重視され、上記のような症状があることが、医学的に「証明」されるかどうかが判断されます。

むちうちの12級13号の後遺障害は、認定に必要とされる立証の程度が「証明」と高いため、認定のハードルは高いです。必要な画像検査、神経学的検査を漏れなく行い、しっかりとした資料を揃えて手続を行う必要があります。 

7 むちうちで請求可能な賠償金

(1)治療費

整形外科や整骨院への治療費を請求することができます。多くの場合は、保険会社から医療機関などに直接支払いが行われます。

(2)通院交通費

通院にかかった交通費を請求することができます。
公共交通機関による交通費が原則ですが、ケガの状況などによってはタクシーによる通院が認められることもあります。
自分の車で通院をした場合は、1キロメートルあたり15円の計算でガソリン代が交通費として支払われます。

(3)休業損害

交通事故でケガをして仕事ができなかったことで、現実に収入が減った分の賠償です。
主婦の方も、むちうちの症状や治療のために家事ができなかった場合、女性の平均賃金をベースに計算した休業損害が支払われます。

むちうちの場合、事故から数か月ほど経っても仕事を休んでいると、「本当に休む必要があるのかどうか」疑問を持たれ、保険会社と休業損害の支払いについて争いになることもあります。また、治療の観点からも、最近では、「むちうちはできるだけ早く仕事に復帰した方が予後が良い。」と言われています。したがって、早期に仕事に復帰できるように、しっかりと治療をすることがベターな対応となります。

(4)慰謝料

むちうちの慰謝料として、入通院の期間に応じて金額が決まる入通院慰謝料と、後遺障害が認定された場合に支払われる後遺症慰謝料の2つの種類の慰謝料を請求できます。

(5)後遺症逸失利益

むちうちの後遺症により仕事に差し支えが出て、将来収入が減ってしまう分の賠償が後遺症逸失利益の賠償です。
むちうちの14級の場合は、「5年間にわたって、労働能力が5%失われる」とみて、逸失利益を算定することが多いです。むちうちの12級の場合は、「10年間にわたって、労働能力が14%失われる」とみて、逸失利益を算定することが多いです。

8 むちうちの慰謝料(相場)

むちうちの慰謝料には、入通院慰謝料と後遺症慰謝料の2種類があります。

(1)入通院慰謝料

入通院の期間に応じて金額が決まるのが入通院慰謝料です。むちうちの裁判所基準の慰謝料は、以下の表のとおりの金額です。
例えば、入院なしで3か月通院した場合の慰謝料は53万円、入院なしで6か月通院した場合の慰謝料は89万円となります。
ただし、1か月あたりの通院日数が、10日未満と少ない場合には、以下の表よりも低い金額で慰謝料が算定される場合もあるため、注意が必要です。

(2)後遺症慰謝料

むちうちの後遺障害が認定された場合は、認定された後遺障害の等級に応じた後遺症慰謝料を請求できます。
裁判所基準の後遺症慰謝料は、14級の場合は110万円、12級の場合は290万円です。

9 当事務所に相談するメリット

交通事故でむちうちになってしまった場合、まずは、①適切な治療を行いケガを完治させることが最大の目標になります。次に、②治療の結果どうしても症状が残ってしまった場合は、後遺障害の認定を適切に得ることが大きな目標になります。そのうえで、③適切な賠償金を得ることが目標になります。

これらの3つの目標を達成するためには、医療機関や医師の傾向を把握したうえで、治療についてもアドバイスを行うとともに、医療機関や医師と適切にコミュニケーションを取ることがとても重要です。当事務所は、大分県内のむちうちの被害者の方から、多数の相談やご依頼を頂いてきました。そのため、大分県内の医療機関や医師の、むちうち治療に対するスタンスなどを相当程度、把握できており、これが大きな強みとなっています。

大分のむちうち被害者の一番の味方になれるよう、今後も、事務所一丸となり取り組んで参ります。

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