むちうちとは?定義や原因、具体的な症状、治療法、期間までを詳しく解説

最終更新日2021.8.23(公開日:2019.9.1)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

 交通事故でもっとも多い負傷は、むちうちだと言われています。
「信号待ちで停車していたら追突されて以来、首が痛くてつらい」
「追突事故後、痛みはなくなったものの肩が重く、手がしびれる感覚がある」
など、痛みや不快感を覚える方が多いものです。
それらの症状はむちうちかもしれません。
ここでは、むちうちの症状や治療法、後遺障害について説明していきます。

1. むちうちとは?交通事故でむちうちが起こる原因

むちうちとは

むちうちとは、交通事故による衝撃で、首の部分の骨である頚椎(けいつい)が、むちのようにしなる動きをすることによって、首の部分の筋肉、靭帯、椎間板、血管、神経などに起こる損傷のことをいいます。

衝撃を受けたとき、頚椎がむちのようにしなる動きをすることから、むちうちと呼ばれています。

むちうちは正式な傷病名ではありません。診断書に記載される名称はさまざまで、「頚椎捻挫」「頚部挫傷」「外傷性頚部症候群」「頚椎神経根症」「頚椎椎間板ヘルニア」「脊柱間狭窄症」などです。

2. むちうちの症状とは?

むちうちの症状は首周辺の痛みが主ですが、それだけではありません。

たとえば、知覚障害や筋力低下などの神経症状が出て、肩から手指にかけてしびれを感じたり、重さやだるさに襲われたりする方もいます。また、頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気などがあり、そのために仕事に復帰できず日常生活に影響が出るなど、さまざまなかたちで症状があらわれるのです。

また、最初は痛みが強く、そのほかの症状に気づかずに過ごし、痛みがなくなってから原因不明の症状に悩まされるケースもあります。

事故で受傷した後、明らかな異常を感じた場合にはむちうちを疑い、医師に診察してもらうことをおすすめします。

3. むちうちの5つのタイプと特徴

むちうちは、どの部分にどのような損傷をしたかによって、5つのタイプに分類できます。それぞれのタイプの症状を見ていきましょう。た後、明らかな異常を感じた場合にはむちうちを疑い、医師に診察してもらうことをおすすめします。

(1)頚椎捻挫型

頚椎捻挫型と呼ばれるむちうちは、首周辺の筋肉や靭帯が過度に伸びたり、部分断裂を起こしたりするものです。主な症状は、首の周囲の運動制限や運動痛。むちうちの約70%がこのタイプだと言われ、1か月半から3か月以内に症状はなくなり、治癒するケースが多いようです。

(2)神経根症型

神経根症型仕組み

神経根症型と呼ばれるむちうちは、頚椎から枝分かれした末梢神経である「神経根」と呼ばれる部分の症状が明らかなタイプです。

頚椎捻挫型の症状に加え、知覚障害や拡散痛、反射異常、筋力低下などの神経症状があらわれます。症状は、左右いずれかの肩から手指にかけて感じるしびれや痛み、重さ、だるさなど。これらの症状に悩まされ原因が不明の場合、神経根症型のむちうちを疑ってください。

(3)バレー・リュー症候群型

バレー・リュー症候群型のむちうちになると、自律神経症状や脳幹症状があらわれます。具体的には頭痛やめまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などで、首付近の痛みは一定期間で収まった後、これらの症状だけが残るケースもあります。

バレー・リュー症候群については、どのような原因で発症するのかについての仕組み(エビデンス)が、いまだにはっきりとはわかっておらず、医師によっても見解が分かれます。

(4)神経根症型+バレー・リュー症候群型

神経根症型の症状に加えて、バレー・リュー症候群型の症状もあらわれるタイプのむちうちです。

(5)脊髄症型

脊髄症型

深部腱反射の亢進、病的反射などの脊髄症状があらわれるタイプのむちうちです。

症状は、手足のしびれや痙性歩行(つま先を引きずるような歩行)、手指を細かく動かせない、筋力の低下、知覚の障害、膀胱の障害など。多くは、加齢現象による頚椎椎間板の退行性変化も関係していると言われており、原因が事故によるものだと証明することが難しくなっています。

現在では、脊髄症型はむちうちではなく、脊髄損傷のカテゴリーとされるのが一般的です。また、後遺障害の検討をする場合も、むちうちとしてではなく、脊髄損傷による後遺障害として認定される方がより重い等級となり、賠償額も大きくなります。

【参考文献】
遠藤健司・鈴木秀和編著『むち打ち損傷ハンドブック 第3版』
栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題 第2版』
南山堂『医学大辞典 第19版』

4. むちうちの症状の伝え方

むちうちは他覚的所見(客観的に捉えることができる症状)が乏しいのが特徴です。痛みは当人にしかわからず、「とにかく痛い」「首が痛い」などと伝えるだけでは正しい診断はされませんし、しかるべき治療もなされません。そのため、痛みなどの症状はできるだけ細かく、具体的に伝えることが重要となります。

痛みの場所と範囲

 痛む場所はどこで、局所的なものか。あるいは複数個所なのか。
また、どれくらいの範囲が痛いのかを具体的に伝えます。

痛みの強さはどれくらいか

 「眠れないほど」「一時的に動けなくなるほど」などと表現するほか、「10段階でいれば〇くらい」など、表現しやすい方法で痛みの強さを伝えます。

どう動かしたら痛むのか

 ずっと痛むのか、あるいは特定の動きをしたときに痛むのか。
また、それはどういった動きなのかを明確に伝えます。

痛みの継続性

 一時的な痛みか、断続的か、継続するものかを伝えます。

痛みの種類

 鈍い痛み、針で刺されたような痛みなど痛みを何かに例えます。うまく表現できない場合は、キーン、ジンジン、ドーンなど、感じる痛みを擬音化するのも有効な方法です。

5. むちうちの治療法

むちうちは他覚的所見(客観的に捉えることができる症状)が乏しいのが特徴です。痛みは当人にしかわからず、「とにかく痛い」「首が痛い」などと伝えるだけでは正しい診断はされませんし、しかるべき治療もなされません。そのため、痛みなどの症状はできるだけ細かく、具体的に伝えることが重要となります。

(1)安静

急性期(受傷初期)は安静が重要であるとされています。
ただ最近では、不必要な長期の安静は症状を長引かせるとも考えられています。もちろん、症状の出方や程度にもよりますが、休養は基本的に1~2週間以内とし、急性期が過ぎたら、少しずつ体を動かしはじめるようにしましょう。できるだけ早く日常生活に復帰することが、治療を早めるわけです。

(2)薬物治療

症状に応じて、薬物療法が行われます。痛みの強い急性期や、痛みの悪循環に陥ったときの症状の緩和を目的としています。痛みが強いと周辺が筋緊張を起こし、疼痛物質が循環不全となり、さらに強い痛みとなってしまうのです。一時的な痛みを取ることが、患部の早い改善につながると判断されれば、薬物治療が行われます。

(3)神経ブロック治療

疼痛が強い場合などは、神経ブロック治療が行われることがあります。神経ブロック治療とは、神経系統の伝達をブロックすることで疼痛を感じなくする治療です。数回の治療で症状が劇的に改善することもあります。

また、バレー・リュー症候群には、星状神経節ブロック治療が一定の効果があると考えられています。これは、自然治癒力を高める治療法と言われており、首にある交感神経を局所麻酔薬により一時的にゆるめ、緊張状態から解放するものです。

(4)理学療法

理学療法には、頚椎牽引、温熱療法、電気療法などの物理療法と、運動療法があります。軟部組織の治癒を促進し、炎症を取ることを主な目的としています。

(5)鍼灸・整骨院での治療

整骨院では手技治療、電気治療、温熱治療、運動療法などが行われます。また、鍼灸院では鍼治療をメインとした治療が行われます。

ただし、保険会社の担当者によっては整骨院での治療を保険対象と認めないことや、治療期間を一方的に終了しようとするケースがあるので注意が必要です。

※鍼灸・整骨院のむちうち施術費の認定要件や通院時の注意点はこちらへ

6.むちうちの治療を整形外科で受けるべき理由 

むちうちは他覚的所見が乏しく、また事故との因果関係を証明しにくいものです。
このように症状の原因を特定しにくいことに加え、治療方法も確立しているとはいえないため、むちうちに対して積極的な治療を行わない医師もいます。
これに対して、整骨院での柔道整復師による治療は、整形外科での治療とは異なるアプローチでの治療を行うため、整形外科では改善しなかった症状が整骨院での治療で改善するケースもあります。
しかし、むち打ちの治療では、整形外科への通院を軽視することにはリスクがあります。

まず、交通事故の賠償の実務では、整骨院での施術は、あくまでも医師の指示や承諾があった場合に認められるということになっています。したがって、整形外科に通院をせずに整骨院にだけ通院をしていると、整骨院の施術費用が支払われないリスクがあります。

また、後遺障害の認定手続を行う際には「後遺障害診断書」という診断書を提出する必要があるのですが、これは医師しか作成することができず、整骨院の柔道整復師には作成できません。従いまして、整形外科に通院をせず、整骨院にのみ通院をした場合には、後遺障害の認定手続ができなくなるリスクがあります。

したがいまして、むちうちの治療は、あくまでも整形外科への通院がベースにあり、整骨院での治療を行う場合も、あくまでも整形外科と整骨院を併用した治療でなければなりません。

7.むちうちの治療期間の目安

当事務所での過去の事例を見ると、むちうちの症状が治る方は、事故後6か月以内の治療期間という方がほとんどです。つまり、事故から6か月経っても症状が治らない方については、後遺障害の認定手続を検討する必要があるということです。

なお、むちうちの治療期間については、いくつかの調査研究が行われています。症状回復期間については報告によりばらつきが大きいのですが、一般的には、「むちうち損傷は長期化することは少なく、1か月以内で症状がおさまり、治療を終了する例が約80%を占め、6か月以上治療を要するものは約3%である」という報告があります。

このように、むちうち損傷の予後は良好なケースが多いので、事故から3か月から6か月を目安にまずはしっかりと治療を行い、症状を治すようにしてください。それでも治らないときは、次のステップ、つまり後遺障害の認定手続を考えます。