最終更新日2020.5.08(公開日:2019.9.1)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

 「信号待ちで停車していたら追突されて、首にケガをしてしまった。」
 交通事故でもっとも多いのが、このような、むちうちのケガです。ここでは、むちうちの症状や治療法、後遺障害について正しく知りましょう。

1 むちうちとは(原因など)

むちうちとは

むちうちとは、交通事故による衝撃で、首の部分の骨である頚椎(けいつい)が、むちのようにしなる動きをすることによって、首の部分の筋肉、靭帯、椎間板、血管、神経などに起こる損傷のことをいいます。

むちうちの場合の診断書に記載される傷病名はさまざまで、「頚椎捻挫」、「頚部挫傷」、「外傷性頚部症候群」、「頚椎神経根症」、「頚椎椎間板ヘルニア」、「脊柱間狭窄症」などと記載されます。

2 むちうちの症状

むちうちは、どの部分にどのような損傷をしたかによって、5つのタイプに分類され、それぞれのタイプで症状は違います。

(1)頚椎捻挫型

首の周辺の筋肉や靭帯が過度に伸びたり部分断裂を起こすタイプのむちうちです。
首の周囲の運動制限や運動痛が主たる症状です。
むちうちの約70%がこのタイプであると言われ、多くの場合、1か月半から3か月以内に症状はなくなり治癒するとされます。

(2)神経根症型

神経根症型仕組み

頚椎から枝分かれした末梢神経である神経根の症状が明らかに認められるタイプのむちうちです。
頚椎捻挫型の症状に加えて、知覚障害、拡散痛、反射異常、筋力低下などの神経症状があらわれます。左右いずれかの肩から手指にかけてのしびれ、痛み、重さ感、だるさ感などがある場合は、この神経根症型のむちうちが疑われます。

(3)バレー・リュー症候群型

自律神経症状や脳幹症状があらわれるタイプのむちうちです。
頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などの症状があらわれます。
バレー・リュー症候群については、どのような原因で発症するのかについての仕組み(エビデンス)が、いまだにはっきりとはわかっていません。

(4)神経根症型+バレー・リュー症候群型

神経根症型の症状に加えて、バレー・リュー症候群型の症状もあらわれるタイプのむちうちです。

(5)脊髄症型

脊髄症型

深部腱反射の亢進、病的反射などの脊髄症状があらわれるタイプのむちうちです。
手足のしびれ、痙性歩行(つま先を引きづるような歩行)、手指の細かく動かせない、筋力の低下、知覚の障害、膀胱の障害などがあらわれます。
多くは、加齢現象による頚椎椎間板の退行性変化も関係しているといわれています。
脊髄症型は、現在では、むちうちのカテゴリーではなく、脊髄損傷のカテゴリーとされるのが一般的です。したがって、後遺障害の検討をする場合も、むちうちとしての後遺障害ではなく、脊髄損傷による後遺障害として、より重い等級を視野に入れて検討をする必要があります。

(遠藤健司・鈴木秀和編著『むち打ち損傷ハンドブック 第3版』、栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題 第2版』、南山堂『医学大辞典 第19版』参照)

3 むちうちの治療法

むちうちの治療方法は経験則に基づき、さまざまな治療法を組み合わせて行われています。

(1)安静

受傷初期の急性期の安静は大切であるとされています。
ただ、最近では、不必要な安静は症状を長引かせると考えられています。症状の程度にもよりますが、休養はなるべく1~2週間以内にして、急性期が過ぎたらできるだけ早く日常生活に復帰して、少しずつ体を動かしながら治療をした方が回復が早いとされています。

(2)薬物治療

症状に応じて、薬物療法が行われることがあります。痛みの強い急性期や、痛みの悪循環(痛い⇒筋緊張⇒疼痛物質の循環不全⇒痛み)に陥った症状の緩和を目的として行わる場合が多いといわれています。

(3)神経ブロック治療

疼痛が強い場合などに、神経ブロック治療が行われることがあります。神経系統の伝達をブロックすることで疼痛をブロックする治療です。数回の治療で症状が劇的に改善することもあります。
また、バレー・リュー症候群には、星状神経節ブロック治療が一定の効果があると考えられています。

(4)理学療法

頚椎牽引・温熱療法・電気療法などの物理療法と、運動療法があります。軟部組織の治癒を促進し、炎症を取ることを主な目的として行われる治療です。

(5)鍼灸・整骨院での治療

整骨院では手技治療・電気治療・温熱治療・運動療法などの理学療法が行われます。鍼灸院では鍼治療をメインとした治療が行われます。
もっとも、保険会社の担当者によっては整骨院での治療をなかなか認めなかったりするケースもあるので注意が必要です。

※鍼灸・整骨院のむちうち施術費の認定要件や通院時の注意点はこちらへ

4 むちうちの治療期間

当事務所での過去の事例を見ると、症状が治る方の場合、事故後6か月以内の治療期間であることが多いです。事故から6か月経っても症状が治らない方については、後遺障害の認定手続を検討する必要があります。

なお、むちうちの治療期間については、過去にいくつかの調査研究が行われています。症状回復期間については報告によりばらつきが大きいですが、近時は、「一般的にむちうち損傷は長期化することは少なく、1か月以内で症状が治り治療を終了する例が約80%を占め、6か月以上治療を要するものは約3%である」という報告が多いと言われています。

このように、むちうち損傷の予後は良好なので、事故から3か月から6か月を1つの目安にしっかりと治療を行い、症状を治すことが大事になります。

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