むちうち後遺障害の等級認定(12級・14級)と賠償金、慰謝料相場を解説

最終更新日2021.8.23(公開日:2020.7.6)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

交通事故にあってむちうちとなり、治療を続けたけれど完治せず、症状が残ってしまったときは、自賠責保険の後遺障害等級認定を受けることを検討します。そして、むちうちの後遺障害として認定されるとその分の賠償金が加算して支払われます。
ここでは、どのようにして後遺障害等級認定を受ければよいのか、慰謝料や賠償金はいくらか、後遺障害認定を受けるためにはどうすればよいのかを解説します。

1. むちうちの後遺障害認定が難しい理由

むちうちはつらい症状があるにも関わらず、後遺障害認定されない(非該当となる)ケースが多いのが現状です。むちうちの後遺症認定の申請方法を知る前に、なぜ非該当となりやすいのかを見ていきましょう。

むちうちは骨折や脱臼などのケガとは異なり、ケガをしたこと自体を画像検査などで証明することができないことがほとんどです。
また、むちうちによって生じる主な症状は痛みとしびれですが、現在の医学では、痛みやしびれが存在すること自体を検査などで明らかにすることはできません。
このように、事故によってケガをしたこと、それにより症状があることを客観的に示すとができないという点に、むちうちの特徴があります。

後遺障害の認定は「事故によって発症した症状が将来にわたり長く続くこと」が立証できた場合に初めて認定されます。
むちうちの場合は、先に述べたとおり、受傷したことや症状を客観的に示す資料がないことがほとんどなので、後遺障害の認定を受けることは容易ではありません。むしろ、むちうちの後遺障害の認定は、交通事故の様々な種類の後遺障害の中で、最も難しい種類の後遺障害の1つであるといえます。

2. むちうちは後遺障害等級認定12級と14級の可能性あり

むちうちの後遺障害認定は、12級または14級の認定を受けられる可能性があります。詳しく見ていきましょう。

12級13号の認定基準「局部に頑固な神経症状を残すもの」

12級13号の認定基準は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」です。「仕事や家事の効率が14%以上下がる」程度の「常時」の「痛みや痺れ」が、反半永続的に続く可能性が高い場合に認定されます。

認定にあたっては、画像所見、神経学的検査、自覚症状に整合性があるか否かが重視され、上記のような症状があることが、医学的に「証明」されるかどうかが判断されます。

むちうちで12級に認定されるには、立証の程度が「証明」であるため、ハードルは高くなります。必要な画像検査、神経学的検査をもれなく行い、しっかりとした資料を揃えて手続きを行うことが重要となります。 

※鍼灸・整骨院のむちうち施術費の認定要件や通院時の注意点はこちらへ

14級9号の認定基準「局部に神経症状を残すもの」

14級9号の認定基準は、「局部に神経症状を残すもの」です。「仕事や家事の効率が5%以上下がる」程度の「常時」の「痛みや痺れ」が、反半永続的に続く可能性が高い場合に認定されます。

むちうちの14級9号の認定にあたっては、①事故状況、②治療経過、③症状の経過、④通院期間・頻度、⑤画像所見などの検査結果、⑥残存した症状の内容・程度など、さまざまな事情を総合的に考慮し、上記のような症状があることが医学的に「推定」できるかどうかが判断の基準となります。

交通事故による後遺障害の認定の中で、14級はもっとも低い等級であり、かつ認定が難しいものの1つです。中でもむちうちは、後遺症が残存したことを裏付ける客観的な検査結果がない場合が多くなります。症状を直接示す証拠がない中で、後遺障害を認定させるには、申請書類の書き方や言葉遣いなど、些細な違いで認定されたり、されなかったりするのです。医師と連携し、細心の注意を払って申請書類を作成しなければなりません。

また、この認定は交通事故に詳しい弁護士の腕の見せ所でもあります。後遺症認定を申請することが決まったら、できるだけ早くご相談いただければと思います。

3. むちうちの慰謝料の相場

むちうちの慰謝料には、入通院慰謝料と後遺症慰謝料の2種類があります。

(1)入通院慰謝料

入通院の期間に応じて金額が決まるのが入通院慰謝料です。むちうちの裁判所基準の慰謝料は、以下の表のとおりです。

入通院慰謝料

たとえば、入院なしで3か月通院した場合の慰謝料は53万円、入院なしで6か月通院した場合の慰謝料は89万円となります。

ただし、1か月あたりの通院日数が、10日未満と少ない場合には、上記の表よりも低い金額で算定される場合もあるため注意が必要です。

(2)後遺症慰謝料

むちうちの後遺障害が認定された場合は、認定された後遺障害の等級に応じた後遺症慰謝料を請求できます。

慰謝料は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)の3つの基準があります(入通院慰謝料にもあります)。自賠責保険は、被害者に対して最低限の補償をすることを目的としているため、もっとも低い基準額です。一方、弁護士基準(裁判所基準)は弁護士会が過去の裁判例をもとに発表している基準で、もっとも高額となります。任意保険基準は保険会社が独自に裁定するもので、2つの間の金額となります(ただし、実際は自賠責保険金額とほぼ同じ金額の提示となることが多いです。)。 むちうちでの後遺症慰謝料は以下となります。

後遺障害
等級
自賠責基準 弁護士基準
局部に神経症状を残すもの 14級9号 32万円 110万円
局部に頑固な神経症状を残すもの 12級13号 94万円 290万円

4. むちうちで請求可能な賠償金

むちうちで請求可能な賠償金は、前述の慰謝料のほかに治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、後遺症逸失利益があります。

(1)治療費

整形外科や整骨院での治療費を請求することができます。多くの場合は、保険会社から医療機関などに直接支払われます。

(2)通院交通費

通院にかかった交通費を請求することができます。
公共交通機関による交通費が原則ですが、ケガの状況などによってはタクシーによる通院が認められます。また、自分の車で通院をした場合、1キロメートルあたり15円の計算でガソリン代を交通費として計算してください。

(3)休業損害

交通事故でケガをして仕事ができなかったことで、現実に収入が減った場合、その分の損害賠償請求ができます。収入のない専業主婦などがむちうちの症状や治療のために家事ができなかった場合、女性の平均賃金をベースに算出した休業損害が支払われます。

むちうちでは、事故から数か月経っても仕事を休んでいると、「本当に休む必要があるのか」と疑問を持たれます。そして保険会社との間で、休業損害の支払いについて争いになるのです。また、治療の観点からも、最近では、「むちうちはできるだけ早く仕事に復帰した方が、予後がよい」と言われているので、無理のない範囲で早期に仕事復帰するのがベターな選択となります。

(4)後遺症逸失利益

むちうちの後遺症により仕事に差し支えが出て、将来の収入が減ってしまう分の補填が後遺症逸失利益の賠償です。

むちうちで14級に認定された場合、「5年間にわたって、労働能力が5%失われる」とみて逸失利益を算定します。12級の場合、「10年間にわたって、労働能力が14%失われる」とみて、逸失利益を算定します。

5.むちうちで治療打ち切りと言われるケース

むちうちで通院治療を続けたいと考えているにも関わらず、保険会社や医師から治療を打ち切られることがあります。特に、むちうちは症状の裏付けとなる画像所見など、客観的所見がない場合が多く、治療の打ち切りが問題となるケースが多発します。

早い時期に治療が打ち切りとなった場合、本来必要であった治療を受けることができなくなる恐れがあります。また、事故から6か月以内の時期に打ち切りをされた場合、その時点で後遺障害の申請をしても後遺障害が認定される可能性はかなり低くなります。
では、治療打ち切りにどのように対処するべきかを見ていきましょう。

(1)治療打ち切りのパターンと時期

①保険会社から治療を打ち切られる場合

むちうちの治療について、保険会社の担当者の多くは、「できるだけ早く治療を終了させたい」と思っています。なぜなら、早く治療を終わらせれば治療費など賠償金の負担が少なくて済むからです。

治療の打ち切りを打診してくるタイミングは、保険会社によって多少の違いはありますが、基本的には、事故の大きさによって決められています。軽微な事故(車両の修理費20万円以下が目安)の場合は3か月、それ以外の事故は6か月が1つの目安といえます。車が大破するような大きな事故の場合は、6か月を超えても治療を認めることもあります。

②医師から治療を打ち切られる場合

それほど多くはありませんが、医師から治療を打ち切られることもあります。もっとも医師は、患者が治療の継続を希望し、治療効果が出ている限りは治療を続けてくれることが多いです。ただし、通院する医療機関や医師によっては、むちうちの治療について早期に打ち切りをしてくるため、注意が必要です。

たとえば、症状の程度や治療経過などに関わらず、「むちうちの治療は一律3か月で治療を打ち切る」と決めている医師もいます。また、「2週間以上、通院期間が空くと治療終了とする」などの独自のルールを決めている医師もいます。これらのルールを、あらかじめ聞けることはほとんどないため、患者としては突然治療を打ち切られたと感じます。

当事務所では、大分県内の医療機関や医師が、どのような治療方針をもっているかを把握しています。したがって、相談者や依頼者が適切な治療を受けることができるように、医療機関や医師の選び方についてもアドバイスをすることが可能です。

(2)治療が打ち切られやすいケース

①軽微な事故の場合

軽微な事故の場合、保険会社から治療の打ち切りを打診してくることがあります。3か月程度が多いです。軽微な事故であるか否かは車両の修理費用が目安となり、20万円以下の事故がそれにあたります。また、駐車場内での車同士の事故も軽微な事故とみられることがあります。治療を継続したいときは、早期の打ち切りに注意してください。

②治療が長引いている場合

軽微な事故でなくても、事故から6か月近く経つと保険会社が治療の打ち切りを打診してくるケースが多くなります。むちうちの場合、6か月近く経つと治療効果が少なくなってきますので、治療を終了して後遺障害の手続を行うことを検討する必要があります。

③過剰な治療が行われている場合

事故の大きさやケガの程度に見合わない過剰な治療をしている場合も、早期に治療が打ち切られやすい傾向にあります。たとえば、事故から3か月近くが経つのに、毎日のように整形外科や整骨院に通院をして同じ治療をしているようなケースです。
治療効果が出ている場合、通院の頻度は徐々に少なくなり、治療の部位も少なくなっていくのが自然な治療経過です。そうでない場合は、治療効果のないムダな治療をしているとみられる恐れがあります。

④通院にブランクが生じた場合

治療期間中に通院しない期間が長くあると、治療を打ち切られやすくなります。多くの場合、1か月以上の治療のブランクがあくと治療は打ち切りになります。仕事が忙しいなど、なかなか通院ができないこともあるかと思いますが、「1か月以上の海外出張があった」などの特殊なケースを除き、1か月以上のブランクがあると、その後の治療は認められないと考えてください。

④通院にブランクが生じた場合

交通事故にあった場合、警察に事故届を行う必要があります。この事故届は、物損事故か人身事故かのいずれかとなります。

交通事故の当事者のどちらかがケガをしている場合、基本的には人身事故として届け出を行わなければなりません。しかし、「人身事故で届け出をすると加害者の方がかわいそうだ」とか、「加害者から、どうしても物損事故で届け出をして欲しいと頼まれた」などの理由で、ケガをしているにも関わらず、物損事故で事故届を出してしまうことがあります。

このような場合、物損事故であることを理由に、保険会社から早期の治療の打ち切りを打診されるケースがあるので注意してください。

⑥MRIなどの画像所見がない場合

症状の原因を客観的に示すMRIなどの画像所見がない場合、症状を証明できないことを理由に早期の打ち切りとなる場合があります。

交通事故でケガをした場合、ほとんどのケースでレントゲン撮影はされますが、MRIの検査までは行わないがあります。しかし、レントゲンでは頚椎の内部の撮影は不可能であり、むちうちの画像検査としては不十分です。したがって、MRIの画像検査をできるだけ早い時期に行っておくことが重要となります。

(3)治療打ち切りへの対策

では、打ち切りを打診されそうになったとき、また実際に打診されたとき、どのようにすればよいのでしょうか。

〈1〉打ち切り前の対策

①医師への対策

保険会社は、治療の打ち切りを被害者に打診する前に、主治医に治療継続の必要性を照会することが多いようです。この照会に対して、主治医が「治療の継続は必要ない」と回答してしまうと、治療打ち切りとなってしまいます。

したがって、主治医とは、常日頃からしっかりとコミュニケーションを取り、必要な情報を正確に伝えるようにします。診察の際には、現在の症状、治療の効果、治療の継続を希望することなどを、しっかりと伝えておきましょう。

②保険会社への対策

保険会社への打ち切り対策としては、保険会社の担当者と情報をしっかりと共有しておくことが重要となります。担当者は現在の症状や治療効果、主治医の見解などについての情報がないと、治療継続の社内決裁を取ることが難しくなります。したがって、これらの情報をこまめに保険会社の担当者に伝え、治療プランと今後の見通し、治療の継続を共有しておくことで早期の打ち切りを防ぐことができます。

〈2〉打ち切り後の対策

①自賠責保険の範囲内での自費通院

人身事故については、1つの事故につき120万円を上限として、治療費や慰謝料、休業損害などの人身損害が賠償されます。任意保険会社から治療費が打ち切られた場合は、いったん自費通院を行い、その後に自賠責保険の限度額の範囲内で治療費を請求するという方法もあります。自費通院にあたっては、健康保険を使用することで治療費の自己負担分を抑えることが可能です。

②労災保険への切り替え

通勤中の交通事故については、労災保険も使用できます。任意保険会社に治療を打ち切られた場合、労災保険に切り替えて治療を続けるという選択肢もあります。労災保険は、任意保険会社のように早期の治療打ち切りを打診してくるようなことはまずありません。また、自賠責保険のように限度額もないため、納得のいく期間、治療を続けられることが多いです。
ただし、事故から長期間経過した後への労災保険の切替は、労災保険も認めない場合があるので注意が必要です。

③人身傷害保険への切り替え

自分の契約する自動車保険に人身傷害特約が付いている場合には、人身傷害特約に切り替えて治療を継続する方法もあります。もっとも、人身傷害特約での治療の継続は、必ず認められるわけではありませんので注意が必要です。

6.むちうちで後遺障害認定されるために必要な書類

治療を終え、後遺障害等級の認定を申請することを決めたら、必要な書類を揃えます。認定審査は書類のみで行われますので、申請の際には書類の記載内容を精査することが重要です。

必要な書類

 1.自賠責保険支払請求書兼支払指図書
 2.交通事故証明書、事故発生状況報告書
 3.診療報酬明細書及び診断書
 4.後遺障害診断書
 5.レントゲン、MRI等の画像

中でも重要なのは、後遺障害診断書です。後遺障害診断書は、医師が作成し、自覚症状や検査結果、今後の症状の推移についての所見などが記載されます。後遺障害診断書を正確に作成してもらうためには、普段から医師に自覚症状を正確に伝えておくことが重要です。
また、後遺障害診断書の作成の際には、現在の自覚症状をまとめたメモなどを医師に渡すとより良いでしょう。また、医師が作成した後遺障害診断書に自覚症状の記載が洩れていたり、記載が不正確なこともよくありますので、後遺障害診断書を保険会社に提出する前に内容を確認し、必要に応じて医師に加筆や修正をしてもらうことも重要です。

他覚的所見とは?

他覚的所見とは、症状の裏付けとなる客観的な検査結果のことをいいます。
むちうちの他覚的所見は、MRI画像や腱反射などの神経学的検査です。むちうちの12級の認定を得るためには、画像検査と神経学的検査の双方で異常所見が認められることが必要です。

むちうちの治療では、MRIの検査や神経学的検査が行われていないこともよくあるので、少なくとも申請の前には、これらの検査をしてもらう必要があります。

7.当事務所に相談するメリット

交通事故でむちうちになってしまった場合、ステージによって目標が変わります。
まずは、①適切な治療を行い、ケガを完治させることが最初の目標になります。
次に、②治療の結果、症状が残ってしまったら、後遺障害の認定を適切に得ることが次の目標です。
そのうえで、③適切な賠償金を得ることが最終的な目標となります。

これらの3つの目標を達成するためには、医療機関や医師の傾向を把握したうえで、治療についてもアドバイスを行いながら、行動することがとても重要です。

当事務所は、大分県内のむちうちの被害者の方から、多数の相談やご依頼を頂いてきました。また、これまでの経験から、大分県内の医療機関や医師がむちうち治療に対してどのようなスタンスをもっているのかも相当数把握できており、これが大きな強みとなっています。

大分のむちうち被害者の一番の味方になれるよう、今後も事務所一丸となり取り組んで参ります。初回相談は無料となっています。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。