交通事故による硬膜下血腫の後遺障害と賠償

硬膜下血腫は、脳を覆う硬膜と脳の間に血液がたまる傷病です。交通事故では、強い頭部外傷に伴う急性硬膜下血腫が問題となることがあります。一方、特に高齢者などでは、受傷後しばらくしてから頭痛、歩行の不安定、物忘れなどが現れ、慢性硬膜下血腫が診断される場合もあります。後遺障害や賠償を検討する際は、血腫そのものだけでなく、脳挫傷等の併発損傷、症状の経過、事故との因果関係を丁寧に整理することが重要です。

このページで押さえる3点

  1. 急性型と慢性型では症状の現れ方や診断までの経過が異なるため、事故後の時系列を整理します。
  2. CT・MRIだけでなく、事故直後の意識状態、麻痺、歩行、認知機能の変化を継続して記録します。
  3. 後遺障害は血腫の有無ではなく、治療後に残った神経症状・認知機能障害と生活への影響で検討されます。

急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫では、強い頭部外傷によって短時間のうちに血液がたまり、脳が圧迫されることがあります。意識障害、激しい頭痛、吐き気、麻痺、けいれんなどがみられ、重症例では緊急手術が必要になることがあります。脳挫傷を伴うこともあり、救命後に重い神経症状や高次脳機能障害が残る場合があります。

慢性硬膜下血腫では、受傷から数週間程度たってから症状が目立つことがあります。頭痛、歩行の不安定、反応の遅さ、物忘れ、片側の力が入りにくいなどが現れることがあり、特に高齢者では「年齢による変化」と見過ごされやすい点に注意が必要です。事故後に時間がたってから診断された場合は、事故直後の受診記録やその後の症状経過が因果関係を検討するうえで重要になります。

必要な検査・資料

診断の中心となるのは頭部CTです。血腫の位置・大きさ、脳の圧迫などを確認します。必要に応じてMRIが行われることもあります。急性型では救急搬送時の意識レベル、瞳孔所見、麻痺などの神経学的所見、手術記録、集中治療中の経過を確認します。

慢性型では、事故から症状が現れるまでの経過をできるだけ具体的に記録します。「事故後から頭痛が続いていた」「徐々に歩きにくくなった」「家族が物忘れに気づいた」といった事情を受診記録と結びつけて整理することが重要です。事故とは無関係な原因による血腫の可能性が問題になることもあるため、受傷状況や既往歴を含めて医学的に確認します。

後遺障害認定で確認するポイント

硬膜下血腫という診断名だけで等級が決まるものではありません。治療後に麻痺、高次脳機能障害、けいれん、頭痛などが残った場合、その症状に応じて神経系統の後遺障害を検討します。脳挫傷などを併発している場合は、その損傷との関係も確認します。

急性型で重い脳損傷が残った場合には上位等級が問題になることがあります。一方、慢性型で手術後に症状が大きく改善し、生活への支障が残らない場合には後遺障害に該当しないこともあります。大切なのは傷病名の重さではなく、症状固定時に何が残っているかです。

事故との因果関係が争点になる場合

事故から診断まで時間が空いた慢性硬膜下血腫では、「本当に交通事故が原因なのか」が争点になる場合があります。事故直後に頭部を打った記録があるか、頭痛などの症状が事故後から続いていたか、別の転倒や外傷がなかったかなどを確認します。交通事故の受傷状況を示す事故証明や実況見分関係資料、救急搬送記録、初診時カルテなども役立つことがあります。

症状が軽かったため事故直後に受診していない場合は、因果関係の説明が難しくなることがあります。頭部を強く打った後に頭痛や吐き気、意識の違和感などがあるときは、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

治療と症状固定

血腫除去後に症状が改善しても、脳損傷の影響で麻痺や認知機能障害が残る場合があります。症状固定は、画像上の血腫が消えたかどうかだけでなく、リハビリ後の機能回復や日常生活への支障を踏まえて主治医が判断します。

慢性硬膜下血腫では治療により症状が改善することも多いため、早すぎる段階で後遺障害の有無を決めつけないことが重要です。一方で症状が残る場合は、どの症状がいつから継続しているかを診療記録に残していきます。

賠償で確認する項目

入院・手術が必要だった場合は、治療費、入通院慰謝料、休業損害、付添費などを検討します。後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益も問題になります。高次脳機能障害や麻痺が重い場合には、介護に関する損害も検討します。

特に高齢者では、就労収入がない場合でも、家事労働への影響や介護の必要性など、生活実態に応じて損害項目を検討する必要があります。「高齢だから損害が小さい」と単純に決められるものではありません。

保険会社対応で注意したいこと

慢性硬膜下血腫では、診断まで時間が空いていることを理由に事故との因果関係が争われる場合があります。事故直後からの症状、受診経過、画像所見を整理しておくことが重要です。また、手術後に一部症状が改善しても、残った症状を十分確認する前に示談しないよう注意してください。

弁護士へ相談するタイミング

事故後しばらくして硬膜下血腫と診断された、保険会社から事故との関係を疑われている、手術後も物忘れや麻痺が残っている、後遺障害申請を検討しているといった場合は、示談前に資料を整理してください。特に診断まで時間が空いたケースでは、早めに受診経過を整理することが重要です。

よくある質問

可能性はありますが、受傷状況、事故直後の症状、その後の経過、画像所見などを医学的に説明できる資料が重要です。

軽い頭部外傷でも時間がたって症状が現れることがあります。歩行や物忘れなど事故後の変化を家族が記録しておくことが有用です。

高次脳機能障害などがないか、主治医へ事故前後の変化を伝え、必要な検査について相談してください。

医師の治療方針に従い、再発時期や症状を記録してください。賠償上は事故との関係や治療経過を個別に確認します。

事故直後からの症状と受診経過を時系列で整理し、診療録や家族の記録など客観的な資料を確認することが重要です。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

交通事故のことで迷っていませんか

相談料・着手金は0円です。いまの状況をうかがったうえで、次に取るべき手順をお伝えします。

電話で相談 LINEで相談 メール相談