交通事故による顔面骨折の後遺障害と賠償

顔面は、眼窩、頬骨、上顎骨、鼻骨など複数の骨で構成されています。交通事故では、顔をハンドルや車内構造物へ打ちつけた場合、歩行者・自転車・バイク利用者が路面へ転倒した場合などに、眼窩底骨折、頬骨骨折、上顎骨骨折などを生じることがあります。顔面骨折では、骨の変形だけでなく、複視、頬や上唇のしびれ、咬合のずれ、開口障害など、周囲の神経・眼球・顎機能への影響が問題になります。

このページの要点

  • CT等で骨折部位、転位、眼窩や副鼻腔への影響を確認します。
  • 複視や眼球運動障害がある場合は眼科的検査も重要です。
  • 頬・上唇のしびれは知覚障害として経過を記録します。
  • 顔面の変形や傷痕が残る場合は、機能障害とは別に外貌醜状の問題も確認します。

眼窩底骨折

眼窩底は眼球を支える眼窩の下壁です。強い打撲で骨折すると、眼窩内容が周囲へ逸脱し、眼球運動の制限や複視が生じることがあります。事故直後は腫れが強く、症状が分かりにくい場合もあります。眼科・形成外科等で眼球運動、複視の範囲、視力などを確認し、必要に応じて手術が検討されます。

頬骨骨折

頬骨は顔面の輪郭を形成する骨で、骨折すると頬の陥凹や左右差が残る場合があります。また、周囲を走る神経の影響で、頬、上唇、歯肉周辺のしびれが続くことがあります。開口時の痛みや口が開けにくい症状が出る場合もあります。

後遺障害申請

顔面骨折後に複視、知覚障害、変形、開口障害などが残る場合は、それぞれの症状に必要な検査・診断記録を揃えます。単に「顔面骨折」と記載するだけでは、どの機能が障害されているか伝わりにくいため、眼科、口腔外科、形成外科など複数科の診療記録を確認することがあります。

仕事・生活への影響

複視が残ると運転、パソコン、細かな作業に影響する場合があります。顔面のしびれや開口障害は食事、会話、接客へ影響することがあります。外貌の変化は職種にかかわらず心理的負担を伴う場合があり、実際の仕事・生活上の支障を具体的に整理します。

複視があれば運転・PC・精密作業、開口障害があれば会話・食事、しびれがあれば接客時の違和感など、症状ごとに仕事への影響が異なります。外貌の変化についても、接客業等で具体的な担当変更・収入影響があるかを確認します。職業名だけで逸失利益を判断せず実態を資料化します。

よくある質問

眼球運動と複視の範囲を眼科的検査で確認します。

知覚障害の範囲と経過を確認します。

骨の変形と外貌への影響を画像・写真等で確認します。

顔面骨折とは別に外貌醜状の評価が問題になる場合があります。

骨折部位ごとの症状を整理する

顔面骨折では、眼窩底、頬骨、上顎骨、鼻骨など損傷部位によって残りやすい症状が異なります。眼窩底では複視・眼球運動、頬骨では顔面の左右差や知覚障害、上顎骨では咬合・開口などが問題になることがあります。診断名を一つにまとめず、CTでどの骨がどの方向へ転位しているかを確認します。

複視の記録

複視がある場合、正面、上下、左右のどの方向を見ると二重に見えるか、どの距離で支障が大きいかを眼科で確認します。運転、階段、読書、パソコンなど具体的な場面での影響も記録します。事故直後は腫れで一時的に眼球運動が制限されることもあるため、治療後まで症状が残るかを経時的にみます。

顔面知覚障害

頬骨・眼窩周囲の骨折で神経が影響を受けると、頬、上唇、歯肉等にしびれ・感覚低下が残ることがあります。どの範囲の感覚が低下しているかを診察記録へ残し、回復の推移を確認します。痛みと知覚低下は別の症状として整理します。

咬合・開口障害

上顎骨や頬骨弓周辺の損傷では、口を開けにくい、噛み合わせが変わった、硬い物を噛めないといった支障が出る場合があります。歯科・口腔外科の記録、開口量、補綴治療の有無等を確認します。歯牙障害がある場合は別ページの評価とも連携します。

上顎・頬骨周囲の骨折では、口が開けにくい、噛み合わせが変わった、硬い物を噛みにくいといった症状が出る場合があります。口腔外科・歯科の記録、開口量、咬合状態、歯牙損傷を確認します。顔面骨折と歯牙障害は同時に生じることがあるため、歯の治療を別に整理します。

形成外科治療と症状固定

顔面骨折後にプレート固定、再建、瘢痕治療等が続く場合は、どの時点で外観・機能が安定したかを主治医と確認します。追加手術予定がある場合、症状固定を急ぐと最終的な外貌・機能の評価とずれる可能性があります。

外貌醜状との関係

顔面骨折による骨の変形と、皮膚の傷痕は別に整理します。骨格の左右差、陥凹、眼球位置の変化、傷痕の部位・大きさをそれぞれ写真・画像で記録します。同じ外見上の変化を重複評価しないよう、障害内容を分けます。

事故前後の写真と画像

事故前の顔写真がある場合、顔貌の左右差や既存の傷あとを確認する参考になることがあります。事故直後は腫脹が強いため、急性期の写真だけで症状固定後の醜状を評価しません。CTや治療経過と合わせ、時間の経過でどのように外見が変化したかを確認します。

仕事・心理面への影響

接客・営業だけでなく、顔面の変形や複視・知覚障害は日常的な対人関係へ負担を与えることがあります。仕事上の担当変更、対面業務を避けるようになったなどの具体的変化があれば記録します。心理的負担と逸失利益は別の観点で検討します。

示談前に確認する資料

事故直後と治療後のCT、眼科・口腔外科・形成外科等の診療記録、写真、手術記録、仕事への影響を整理します。複視、しびれ、咬合障害、外貌変形のうち、どの症状が現在も残っているかを確認し、後遺障害申請から漏れないようにします。

顔面骨折は骨折部位ごとに症状が異なる

顔面骨は複数の骨から構成されるため、「顔面骨折」という一つの診断名だけでは後遺症を把握できません。眼窩底骨折では眼球運動・複視、頬骨骨折では顔面輪郭や眼窩周囲、上顎骨骨折では咬合・歯牙への影響など、骨折部位ごとに確認すべき機能が異なります。CTで骨折線、骨片の転位、眼窩・副鼻腔・顎への波及を確認します。

眼窩底骨折と複視

眼窩底骨折では、眼球を動かす筋肉や周囲組織が骨折部へ影響を受け、上下を見るときなどに物が二重に見えることがあります。事故直後は腫れで検査しにくい場合もあるため、腫脹が落ち着いた後の眼球運動・複視検査を確認します。複視がどの方向で、どの程度の日常動作に影響するかも記録します。

頬骨骨折と知覚障害

頬骨・眼窩下壁周辺の骨折では、眼窩下神経への影響により頬、上唇、歯肉周辺のしびれ・感覚低下が残る場合があります。どの範囲がしびれるか、触った感覚に左右差があるか、事故直後から継続しているかを診察時に伝えます。骨の変形とは別に神経症状として整理します。

手術と画像の確認

骨折の転位や機能障害に応じてプレート固定等の手術が行われる場合があります。術前CT、手術記録、術後画像を確認し、骨の位置がどの程度整復されたか、プレート等の抜去予定があるかを記録します。手術を受けた事実だけで後遺障害が決まるものではありません。

外貌の変化・傷あと

頬骨の陥凹、左右差、手術痕など外見上の変化が残る場合、機能障害とは別に外貌醜状を検討します。正面・側面など同条件の写真を残し、形成外科等の診療記録と合わせます。外見上の問題と複視・しびれを重複させず、それぞれ資料を整えます。

後遺障害申請前のチェック

顔面CT、眼科検査、知覚所見、歯科・口腔外科記録、形成外科の傷あと記録を一覧化します。複数診療科の診断書で左右・傷病名に不一致がないか、症状固定時に各機能の検査が済んでいるかを確認します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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