むちうちの症状を証明する検査方法
「むちうち」の判別検査 ~症状に合わせた各種検査
(1)「むちうち」による症状は検査によって証明・説明できることがある
「むちうち」症が、交通事故事案の処理を困難にする理由は「痛みやしびれの自覚症状があるのに、レントゲン・CT・MRI画像に異常がない」ことが多いためです。
他方で、むちうちで、適切な等級の後遺障害認定を受けるためには、他覚的所見が認められ、症状の残存が医学的に証明できたり説明できたりする必要があります。
そこで、画像検査以外の検査で他覚的所見が認められるか否かが重要になります。
むちうちの検査には、数多くの種類の検査があり、検査の客観性や信頼性もそれぞれ異なります。
したがって、適切な検査を、きちんと主治医に施行してもらうことが重要です。
以下では、代表的な検査方法について説明します。
(2)「むちうち」を判別する検査
| ※各種検査の記載例(首のむち打ちで14級の被害者の例) |
むちうちの症状を証明する主な検査一覧
むちうちの後遺障害認定では、MRI・CTなどの画像で異常が映らなくても、医師による徒手検査(手を使って行う検査)で「他覚的所見」が認められれば、症状を医学的に証明・説明できる可能性があります。以下が代表的な検査です。
| 検査名 | 検査内容 | 陽性で示唆される状態 | 後遺障害認定への影響 |
|---|---|---|---|
| スパーリングテスト | 頭部を患側に傾け圧迫 | 神経根圧迫・頸椎症 | 14級・12級の他覚的所見として有力 |
| ジャクソンテスト | 頭部を真下に圧迫 | 椎間孔狭窄・神経根症状 | スパーリングと併用で信頼性向上 |
| アドソンテスト | 頭部回旋+深呼吸で橈骨動脈を触知 | 胸郭出口症候群 | 肩・腕のしびれの鑑別に有用 |
| 上肢伸展挙上テスト(上肢SLR) | 腕を伸ばし横に挙上 | 頸椎神経根の緊張・障害 | 神経根症の証明に有効 |
| 腱反射検査 | ハンマーで腱を叩き反射確認 | 神経伝達障害(低下・消失) | 他覚的所見として特に信頼性が高い |
| 皮膚知覚検査 | 皮膚の感覚・しびれを確認 | 末梢神経・デルマトームの障害 | 症状の神経学的分布を証明 |
| 筋力検査(MMT) | 各筋群の抵抗運動を測定 | 神経支配領域の筋力低下 | 後遺障害等級の補完的根拠になる |
| 頸椎可動域検査 | 6方向の可動角度を計測 | 頸椎の運動障害・拘縮 | 12級13号(機能障害)の根拠になりうる |
💡 上記の検査は、主治医が全て自動的に行うわけではありません。特にスパーリングテストやジャクソンテストは患者側から「お願いする」ことが必要なケースがあります。
各検査の詳しい解説
(1)スパーリングテスト
スパーリングテストは、頚椎の神経根が圧迫されているかどうかを調べる最も代表的な検査です。
検査の方法
患者が椅子に座った状態で、医師が患者の頭部を症状がある側(患側)に傾け、さらに上から軽く圧力をかけます。
陽性の判定
首から肩・腕・手指にかけて痛みやしびれが誘発・増強された場合を「陽性」と判定します。
後遺障害認定への意味
スパーリングテスト陽性は、頚椎の椎間孔が狭くなって神経根を圧迫している状態を示します。14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定において「症状が医学的に説明できる」根拠として有力な所見です。
⚠️ スパーリングテストは「偽陽性」(本当は異常がないのに陽性になること)も起こりえます。後述のジャクソンテストや腱反射検査と複数の所見が一致しているほど、認定機関(損害保険料率算出機構)の信頼性評価が高まります。
(2)ジャクソンテスト
ジャクソンテストもスパーリングテストと同様に、頚椎の神経根症状を確認するための検査です。
検査の方法
患者が椅子に座った状態で、医師が患者の頭部の真上から垂直に圧力をかけます(前傾・後傾の方向は検査者によって若干異なります)。
陽性の判定
首から腕・手にかけて放散する痛みやしびれが生じた場合を「陽性」と判定します。
スパーリングテストとの違い
スパーリングテストが「斜め方向の圧迫」であるのに対し、ジャクソンテストは「垂直方向の圧迫」です。両者の陽性所見が重なることで、神経根圧迫の証明としての信頼性が高まります。
(3)腱反射検査
腱反射検査は、神経の伝達に異常がないかを調べる検査で、他の検査と比べて客観性・再現性が高く、後遺障害認定において最も信頼性の高い他覚的所見のひとつです。
検査の方法
打腱器(ハンマー)で腱を叩き、筋肉の反射の有無・強さを確認します。むちうちで特に確認されるのは、上腕二頭筋反射・上腕三頭筋反射・腕橈骨筋反射です。
異常の判定
反射の低下(hypoflexia)または消失(areflexia)が認められた場合、当該神経根の障害が示唆されます。
後遺障害認定への意味
腱反射の低下・消失は患者が意図的に操作できない客観的所見であるため、認定機関に対する説得力が非常に高くなります。特に12級13号(神経系統の機能・精神の障害で医学的に証明できるもの)を目指す場合、腱反射異常は極めて重要な所見となります。
(4)皮膚知覚検査・デルマトーム検査
皮膚の感覚障害(しびれ・感覚の鈍麻)が、特定の神経支配領域(デルマトーム)のパターンと一致しているかを確認する検査です。
検査の方法
綿や針で皮膚を刺激し、感覚の有無・左右差を確認します。
後遺障害認定への意味
例えば「第6頚椎神経根(C6)の障害なら、親指から人差し指にかけてしびれが出る」というように、しびれの部位が特定の神経根の障害パターンと一致していれば、単なる自覚症状の訴えを超えた神経学的根拠となります。
(5)筋力検査(MMT:徒手筋力テスト)
医師が患者の上肢(腕・手)の各筋群に抵抗を加え、筋力の低下がないかを評価します。
評価の基準
筋力は0〜5の6段階(MMTスコア)で評価されます。3以下(重力に抗して動かせない)の場合、神経支配筋の障害が強く示唆されます。
後遺障害認定への意味
腱反射や知覚障害と筋力低下の所見が一致している場合、障害されている神経根レベルの特定が可能となり、後遺障害認定の根拠を強化します。
(6)頚椎可動域検査(ROM)
頚椎の動く範囲(可動域)を6方向(前屈・後屈・左右側屈・左右回旋)で計測し、制限の有無を確認します。
正常値の目安
前屈60°・後屈50°・側屈50°・回旋70°が一般的な正常値とされています。
後遺障害認定への意味
可動域が健側の4分の3以下に制限された場合、後遺障害12級13号(頚部の機能障害)として認定される可能性があります。測定は一度だけでなく複数回・複数の来院日にまたがって記録されることが重要です。
後遺障害等級と検査所見の関係
むちうちで認定される後遺障害等級は主に「12級13号」と「14級9号」の2つです。どちらが認定されるかは、検査所見の内容に大きく左右されます。
| 等級 | 認定の条件 | 必要な検査所見 | 慰謝料の目安(弁護士基準) |
|---|---|---|---|
| 12級13号 | 機能障害が医学的に証明できる | 腱反射異常・筋力低下・画像所見など他覚的所見あり | 約290万円(入通院慰謝料別途) |
| 14級9号 | 症状が医学的に説明できる | スパーリング陽性・知覚障害・一貫した通院記録など | 約110万円(入通院慰謝料別途) |
| 非該当 | 症状が証明も説明もできない | 画像正常・検査陰性・通院間隔が不規則など | 後遺障害慰謝料なし |
12級と14級では慰謝料・逸失利益を合わせた賠償金の差が数百万円に及ぶことがあります。適切な検査を受け、所見を正確に診断書に記載してもらうことが、適正な賠償を受けるための重要なステップです。
適切な検査を受けるための医師への伝え方
後遺障害認定に必要な検査所見を記録に残すためには、主治医への伝え方が非常に重要です。以下のチェックリストを参考に、診察時に具体的な情報を伝えましょう。
| 伝えるべき内容 | 具体的な例・ポイント | |
|---|---|---|
| 症状が出る動作・体勢 | 「上を向くと首の右側に電気が走るような痛みが出る」 | |
| しびれ・痛みの部位と範囲 | 「右の肩から人差し指・中指にかけてしびれがある」 | |
| 症状の強さと変化 | 「事故直後より2週間後に悪化した」「朝起きると特につらい」 | |
| 日常生活・仕事への支障 | 「長時間のデスクワークができない」「重いものが持てない」 | |
| 検査のお願い | 「スパーリングテストとジャクソンテストをしていただけますか」 |
⚠️ 「どこが痛いか」だけでなく「どんな動作・体勢でどこに症状が出るか」を具体的に伝えることで、医師が適切な検査を選択しやすくなります。検査名を具体的に挙げて依頼することも有効です。
💡 診察ごとに必ず症状を伝え続けることが重要です。「治っていない症状を毎回医師に伝え、カルテに記録してもらう」という継続性が、後遺障害認定の証拠として機能します。
検査結果が「異常なし」でも後遺障害認定を諦めなくていい理由
スパーリングテストやジャクソンテストが陰性で、MRI画像にも異常が写らなかった場合でも、後遺障害14級9号の認定を受けられる可能性はあります。
理由① 14級9号は「医学的に説明できる」ことで足りる
14級9号の認定要件は「症状が医学的に証明できる」こと(12級)ではなく、「症状が医学的に説明できる」ことです。神経学的検査が陰性であっても、以下のような要素が揃えば認定の可能性があります。
- 受傷直後から一貫して症状が続いている
- 通院記録に断絶がなく、治療への取り組みが継続されている
- 事故の衝撃の大きさ(車の損傷状況・速度など)と症状が整合している
- 日常生活・仕事への支障が具体的に記録されている
理由② 検査の施行タイミングが重要
事故後しばらくたってから検査を受けた場合、症状が安定・固定されており、検査時点では陰性になることがあります。事故直後から定期的に検査を受け、初期の陽性所見を記録に残しておくことが重要です。
理由③ 複数の検査を組み合わせることで評価が変わる
1種類の検査が陰性でも、複数の検査を組み合わせた総合評価で判断されます。主治医に「他の検査も試してほしい」と積極的にお願いすることが大切です。
⚠️ 「検査が陰性だから請求をあきらめた」という方が多くいますが、それは早計です。まずは弁護士に相談し、今ある記録・所見で後遺障害認定の可能性があるかどうかを評価してもらうことを強くお勧めします。
検査結果に不安がある方は、まず弁護士に無料相談を
むちうちの後遺障害認定は、検査所見の有無だけでなく、申請の方法・書類の揃え方・異議申立の可否など、弁護士の関与によって結果が大きく変わります。
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