その他の体幹骨折による後遺障害
最終更新日2021.5.6(公開日:2021.5.6)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士
目次
その他の体幹骨折による後遺障害
その他の体幹骨とは脊柱以外の体幹骨、具体的には、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨をさします。
自賠責における後遺障害等級
その他の体幹骨について、自賠責では以下の等級が規定されています。
その他の体幹骨の障害 | |||
等級 | 後遺障害 | 自賠責保険金額 | 労働能力損失率 |
12級5号 | 鎖骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの | 224万 | 14% |
等級認定基準
その他の体幹骨の等級認定基準は以下のとおりです。
等級により賠償金額が大きく変わります。各等級の賠償金額を知りたい方はこちら。
その他の体幹骨の障害 | |||
等級 | 認定基準 | ||
12級5号 |
①裸体となった時、変形や欠損が 明らかにわかる程度のもの (XPで確認できる程度のものは該 当しない) |
②肋骨の変形は、その本数、程 度、部位に関係なく、肋骨全体を 一括して1つの障害として取り扱う (肋軟骨も肋骨に準じて取り扱う) |
③鎖骨に偽関節を残している場合 は、裸体となった時、変形が明ら かにわかる程度のものであれば、 変形を残すものとして取り扱う |
後遺障害認定における注意点
①見落としているケースが多い後遺障害です
鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨など体幹骨の変形障害は医師も被害者も後遺障害を見落としているケースが多いので注意が必要です。自賠責が規定する「著しい変形」とは、「裸体となった時に、その変形が明らかにわかる程度のもの」で「XPだけで確認できる程度のものは該当しない」と一般に説明されています。
しかし、現実には、骨移植のために骨盤骨の一部や腸骨を採骨したものでも、12級5号の等級認定がされることもあります。したがって、「裸体となった時に、その変形が明らかにわかる程度のもの」という表現にこだわらずに申請を行うことも考えなければなりません。
②肋骨の骨折
肋骨の骨折は、バストバンドで固定するだけの治療というのが一般的ですから、元通りに骨癒合することはないといえます。したがって、肋骨の骨折の場合には積極的に申請を行うべきです。
③女性の骨盤骨折
女性の場合、骨盤骨折に伴う骨盤骨の変形がみられる時は、正常な産道の確保ができているかどうかを産婦人科で確認しておく必要があります。
正常分娩が難しく、帝王切開に寄らざるを得ない変形がある場合には、自賠責の規定する変形障害に明確に該当していなくても、損害賠償請求が認められる余地が十分にあります。