交通事故による胸骨骨折の後遺障害と賠償

胸骨は胸の中央にある骨で、肋骨とともに胸郭を形成しています。交通事故では、シートベルトで胸部を強く圧迫された場合や、ハンドル・ダッシュボードへ胸を打ちつけた場合などに骨折することがあります。胸骨の後方には心臓や大血管など重要臓器があるため、胸骨骨折は「胸部に強い外力が加わった」ことを示す傷病として、合併損傷の確認も重要です。

このページの要点

  • X線・CTで骨折形態と転位を確認します。
  • 心臓、肺、肋骨などの合併損傷がないか救急記録を確認します。
  • 骨癒合後も胸部痛や上半身の動作制限が残る場合は具体的に記録します。
  • 復職後の運転・荷物運搬・姿勢保持への支障も損害評価に関係します。

胸骨骨折でみられる症状

胸の中央の圧痛、腫れ、深呼吸や咳での痛み、起き上がりや腕を前に出す動作での痛みなどがみられます。シートベルト痕が残る場合や、肋骨骨折・肺挫傷などを同時に負う場合もあります。強い胸部外傷では動悸、呼吸困難、血圧低下などがないかも確認されます。

必要な検査

X線で骨折を確認することがありますが、CTは骨折部位・転位に加え胸部全体の損傷を把握するのに有用な場合があります。事故直後の胸部CT、心電図、血液検査など、合併損傷を評価した資料も後から確認できるよう整理します。

骨癒合後の症状

胸骨は呼吸や上肢・体幹の動きの影響を受けるため、骨癒合後もしばらく動作時痛が続く場合があります。運転でハンドルを操作すると痛む、長時間パソコン作業で胸がつらい、荷物を抱えられないなど、事故前と異なる動作を具体的に記録します。

症状固定時に痛みが残る場合は、骨折部、圧痛、画像所見、生活上の支障が診療記録と整合しているか確認します。骨がついたことと症状が完全に消えたことは同じではありません。

後遺障害・損害賠償

骨折が良好に治癒し症状が消失すれば後遺障害の問題にならないこともあります。一方、変形、持続する疼痛、合併臓器障害などが残る場合は、残存障害に応じて検討します。休業損害では実際の休業だけでなく、復職後の軽作業、運転制限、残業減少等も確認します。

複数傷病がある場合

胸骨骨折と肋骨骨折、肺挫傷などを同時に負っている場合、入院・休業・慰謝料は受傷全体を前提に考えます。診断名ごとに単純加算するわけではありませんが、重い合併損傷による治療負担が見落とされないよう、退院時要約・CT報告書等を確認します。

示談前の確認

骨癒合が確認されたからといってすぐ示談せず、痛みや合併損傷の症状が落ち着いているか、後遺障害申請の必要がないかを確認します。示談案に一部の診断しか反映されていない場合は、医療記録に沿って受傷全体を整理します。

よくある質問

別の骨です。同じ事故で併発することがあります。

痛む動作と経過を医師に伝え、記録を残します。

傷病名だけでは決まりません。残った障害を確認します。

胸部への強い外力では合併損傷確認のため検査されることがあります。結果を保管します。

事故態様を確認する

胸骨骨折では、シートベルトによる圧迫、ハンドル・ダッシュボードへの衝突、エアバッグ展開時の衝撃など、胸へどのような力が加わったかを整理します。車両写真、事故状況図、救急搬送記録にシートベルト痕や胸部打撲の記載がある場合は保管します。事故態様は、胸骨だけでなく心臓・肺等の合併損傷を検討するときにも参考になります。

痛みの記録方法

胸骨は上肢と体幹の動きの影響を受けます。深呼吸、寝返り、起き上がり、車のハンドル操作、荷物を前へ持ち上げる動作など、どの動作で痛みが出るかを具体的に伝えます。「胸が痛い」という訴えだけでは、仕事・家事への支障が伝わりにくくなります。

手術を受けた場合

転位が大きい、他の胸部損傷を伴うなどの理由で手術が行われた場合は、手術記録、術後画像、固定材料の有無、抜去予定を確認します。手術を受けたこと自体が後遺障害を決めるのではなく、治療後に残る疼痛・変形・機能障害を評価します。手術痕が大きく残る場合は、部位によって醜状の問題がないかも確認します。

就労資料を残す

運転手であればシートベルトが傷に当たって痛む、介護職では利用者を抱える動作が難しい、事務職では長時間同じ姿勢で痛みが強くなるなど、職種ごとに支障は異なります。医師の就業制限、勤務先の配置転換、短時間勤務、残業制限を残します。

後遺障害申請前の確認

事故直後・治療中・症状固定時の画像、疼痛の診療記録、合併損傷の資料を並べます。骨癒合している一方で痛みが残る場合、その症状が事故後から継続しているか、他の胸部傷病が原因ではないかを確認します。申請前に左右や骨折部位の記載ミスがないかもチェックします。

胸骨骨折の転位・変形

胸骨骨折では、骨折線の位置だけでなく転位や変形がどの程度残ったかを事故直後と治療後のCT・X線で確認します。外観上の突出や陥凹がある場合、疼痛・体幹動作への影響と分けて整理します。

心臓・大血管等の初期評価

強い前胸部外傷では、骨折だけでなく心臓等への影響を確認するため心電図、血液検査、CT等が行われることがあります。最終的に異常が否定された場合も、事故直後にどの検査を受けたか記録を保管します。

姿勢・上肢動作への影響

胸骨は肩甲帯・胸郭の動きと関係するため、腕を前へ伸ばす、荷物を抱える、寝返り、起き上がりで痛みが出る場合があります。デスクワークでも長時間の前傾姿勢で症状が増すことがあります。

手術痕・固定材料

手術を受けた場合は術式、固定材料、抜去予定、手術痕を確認します。固定材料の存在だけで後遺障害を判断せず、最終的な疼痛・変形・機能を評価します。

仕事と示談

運転、介護、荷物運搬、接客など職種ごとの制限を具体化し、復職後の配慮を記録します。画像上骨癒合していても痛みが残る場合、後遺障害申請の要否を確認してから示談します。

骨折部の圧痛・体動時痛

胸骨骨折後の痛みは、深呼吸だけでなく、腕を前へ出す、体を起こす、車のシートベルトが当たるなどの場面で残る場合があります。どの動作で痛むかを診療録へ継続して残し、画像上の骨癒合だけで症状を判断しません。

事故前後の勤務内容

運転、荷物運搬、介護、デスクワークなど、胸部へ負荷がかかる作業を事故前後で比較します。復職していても作業変更、残業制限、休憩増加がある場合は勤務先資料に残します。

後遺障害診断書

疼痛や変形が残る場合、傷病名だけでなく症状固定時の所見が診断書へ反映されているか確認します。他の胸部損傷の症状と混同されていないかも点検します。

通院終了の理由を確認する

胸骨骨折の通院が終了した場合、痛みが消失したのか、骨癒合が得られたため経過観察となったのか、本人都合で受診をやめたのかを確認します。後から疼痛を主張する場合、治療経過の連続性が重要になるためです。

家事・育児への支障

抱き上げ、掃除、買い物袋、布団の上げ下ろしなど胸部へ力がかかる家事で痛みが出る場合、家族へ代わってもらった内容と期間を記録します。家事従事者の損害を検討する際にも具体的な生活記録が役立ちます。

相談時のポイント

胸骨骨折では、事故直後と症状固定時の画像、胸部痛の経過、心臓・肺の検査結果、仕事への支障を揃えて確認します。骨癒合だけでなく残存症状まで評価されているかを点検します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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