交通事故による瘢痕・ケロイドの後遺障害と賠償

交通事故では、裂創、擦過傷、熱傷、手術などの後に瘢痕が残ることがあります。瘢痕が赤く盛り上がる、硬くなる、周囲へ広がる、痛みやかゆみを伴う場合には、肥厚性瘢痕やケロイドとして治療が続くことがあります。傷あとが顔面だけでなく、腕や脚など露出する部位に残った場合には、後遺障害の評価が問題になることがあります。

このページの要点

  • 傷あとが生じた原因、部位、大きさ、治療経過を記録します。
  • 写真を時系列で残し、赤み、盛り上がり、拘縮の変化を確認します。
  • 痛み・かゆみ・つっぱり感などの症状は診療録へ具体的に残します。
  • 関節周囲の瘢痕で動きが制限される場合は、外見だけでなく機能障害も確認します。

瘢痕とケロイド

瘢痕は創傷が治癒した後に残る組織です。傷あとが幅広く残る場合、赤みや隆起が長く続く場合、周囲へ広がる場合など状態はさまざまです。ケロイドは体質的要因も関係するとされ、事故後の創傷や手術をきっかけに目立つようになることがあります。

損害賠償では、事故によって生じた創傷・手術と現在の瘢痕との関係を診療記録で確認します。事故前から同じ部位に傷あとがあった場合には、事故前後の状態を区別します。

治療経過と症状固定

形成外科・皮膚科では、テープ、圧迫、注射、内服・外用、レーザー、手術などが検討される場合があります。治療によって傷あとが変化している間は、後遺障害の評価時期を慎重に検討します。追加治療の予定や改善見込みがあるかを主治医に確認します。

痛み・かゆみ・拘縮

瘢痕は外見だけでなく、痛み、かゆみ、つっぱり感を伴うことがあります。関節付近の大きな瘢痕では、皮膚の拘縮によって腕や脚の動きが制限される場合があります。その場合には、傷あととしての評価と、関節機能への影響を別々に確認します。

仕事・生活への影響

露出部の瘢痕は対人業務の心理的負担になることがあります。制服や防護具が当たると痛む、長時間立つと下肢の傷あとがつっぱる、腕の瘢痕が工具操作で痛むなど、外見以外の実務上の影響も具体化します。

示談前の確認

傷あとがまだ赤く変化している、治療継続中、形成手術予定がある場合には、主治医の見通しを確認します。写真、治療記録、症状の内容を揃え、他の骨折・神経症状・関節機能障害が漏れていないか確認します。

よくある質問

体質的要因だけでなく、事故による創傷・手術と症状の経過を確認します。

診療時に症状を具体的に伝え、治療記録を残します。

皮膚拘縮による機能障害の有無も確認します。

治療終了の見通しと症状固定時期を確認します。

傷あとを時系列で記録する

瘢痕・ケロイドは治療開始直後と数か月後で見た目や症状が変わることがあります。事故直後の創傷、縫合後、抜糸後、形成外科治療中、症状固定時というように、時期を分けて写真を残します。可能であれば同じ距離・角度・明るさで撮影し、定規など大きさの比較ができるものを添えると変化を把握しやすくなります。

写真だけでなく、診療録に傷の部位、大きさ、盛り上がり、赤み、痛み、かゆみ等が記載されているかも確認します。本人が見た目を気にしているだけでなく、衣服・装具との摩擦で痛む、睡眠中にかゆみで目が覚めるといった症状がある場合には具体的に伝えます。

肥厚性瘢痕とケロイドを一律に扱わない

傷あとが赤く盛り上がっていても、医学的には肥厚性瘢痕とケロイドで性質や治療方針が異なる場合があります。サイト上で自己診断を促さず、形成外科・皮膚科等の診断を基準にします。事故前からケロイド体質を指摘されていた場合も、今回の事故による創傷・手術がどの部位にどのような瘢痕を残したかを確認します。

関節周囲の瘢痕拘縮

肘、手首、膝、足首など関節周囲に大きな瘢痕が残ると、皮膚がつっぱって関節を十分に曲げ伸ばしできない場合があります。この場合、見た目の傷あとだけでなく、関節可動域と日常生活・仕事への影響を別に確認します。リハビリ記録や可動域測定、形成外科・整形外科双方の記録が参考になります。

手術痕と事故による創傷を整理する

交通事故による直接の裂創・擦過傷だけでなく、骨折や臓器損傷の治療で生じた手術痕も残ることがあります。どの傷が事故時の外傷で、どの傷が事故治療のための手術によるものかを整理します。複数回手術を受けた場合は、各手術の部位と最終的な傷あとを対応させます。

痛み・かゆみ・知覚異常

瘢痕部に痛み、かゆみ、しびれ、感覚過敏が残る場合があります。見た目の問題とは別に、神経損傷や皮膚症状として治療が続いているかを確認します。衣服が触れるだけで痛い、仕事の防護具を着用できないなど、実際の生活・就労上の支障を記録します。

仕事への影響

露出部の瘢痕では接客・営業など対人業務への心理的負担が問題になることがあります。一方、衣服に隠れる場所でも、作業着・安全帯・靴などが瘢痕に当たり痛むため仕事を変更するケースがあります。職業名だけで影響を推測せず、事故後に担当変更、休憩増加、制服変更などがあったかを具体化します。

形成外科治療と将来治療

レーザー、注射、圧迫療法、瘢痕形成術などの治療が続く場合、現在どの段階にあり、今後どの程度の治療が予定されているかを主治医へ確認します。治療中で傷あとが変化している段階では、最終状態を評価する時期を慎重に検討します。

将来治療費を問題にする場合は、単に「今後も治療したい」という希望だけではなく、医師が具体的な治療内容・回数・必要性を示しているかが重要です。見積書や治療計画書がある場合は保管します。

示談前の確認事項

事故直後から症状固定までの写真、形成外科・皮膚科の診療記録、治療費、追加治療の見通し、関節機能への影響、仕事上の支障を整理します。骨折・神経障害など他の後遺障害がある場合は、瘢痕だけに注意が集中して評価漏れが生じないようにします。

事故前の皮膚状態と体質

事故前からケロイド・肥厚性瘢痕の既往がある場合、その部位と治療歴を確認します。体質的要因があっても、今回の事故による創傷・手術を契機に新たな瘢痕が生じた経過を分けて整理します。

衣服・装具との摩擦

瘢痕がベルト、制服、安全帯、靴、装具等に当たり、痛み・かゆみが増す場合があります。仕事や日常生活で避けられない接触があるか、勤務先で装備を変更したかを記録します。

治療の反応を時系列で確認する

レーザー、注射、外用等を受けている場合、治療前後の写真と症状を比較します。改善が続いている段階か、一定期間治療しても状態が安定しているかを主治医へ確認し、症状固定の判断材料とします。

示談案の損害項目

瘢痕・ケロイドの外見上の問題、疼痛・かゆみ、関節運動への影響、仕事上の支障を分けて確認します。一つの傷あとに複数の影響があっても、同じ損害を重複評価しないよう整理します。

症状固定時の写真と診療記録

瘢痕・ケロイドでは、症状固定時の写真と形成外科・皮膚科の記載を照合します。傷の大きさ、隆起、色調、疼痛・かゆみ、拘縮が実際の状態と一致しているかを確認します。治療中の古い写真だけで最終状態を評価しないことが重要です。

関連する骨折・神経障害

大きな瘢痕の下に骨折や神経損傷がある場合、外見上の傷だけに注目せず、機能障害・しびれ・疼痛を別の資料で確認します。複数障害が残る場合は最終的な認定結果との整合を点検します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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