交通事故による外貌醜状(傷あと)の後遺障害と賠償
交通事故で顔面や頭部、首などを負傷すると、治療後も傷あとや変形が残ることがあります。骨折や裂創の治療が終わっても、外見上の変化が残る場合には「外貌醜状」として後遺障害が問題になることがあります。外貌醜状は、痛みや可動域制限のような機能障害とは異なり、傷あとや欠損、変形がどの部位に、どの程度残っているかを客観的に確認することが重要です。
このページの要点
- 事故直後から治癒後までの写真、形成外科等の診療記録を保存します。
- 傷あとが残る部位、大きさ、形状、色、陥凹・隆起の程度を確認します。
- 外貌醜状の評価と、顔面骨折や神経症状など他の後遺障害は分けて整理します。
- 逸失利益は職業名だけで判断せず、実際の仕事・対人業務への影響を具体的に検討します。
外貌醜状とは
外貌醜状では、顔面、頭部、頸部などに残る傷あとや変形が問題となります。事故直後は腫れや創傷が目立っていても、時間の経過や手術、形成外科治療によって状態が変化するため、症状固定時の外観を確認する必要があります。一方で、事故直後の状態や治療経過を示す写真も、受傷の程度を理解するうえで参考になります。
写真・診療記録の重要性
傷あとの評価は見た目に関するため、客観的な記録を残すことが特に重要です。事故直後、縫合後、抜糸後、治療終了時など、可能であれば時期を分けて写真を残します。照明や角度によって印象が変わるため、正面・側面など複数方向から撮影しておくと状態を把握しやすくなります。
形成外科や皮膚科等で治療を受けた場合には、傷の位置、大きさ、治療内容、追加治療の見通しを確認します。レーザー治療、瘢痕形成術などの予定がある場合には、症状固定をいつとするか主治医の見解を確認します。
後遺障害認定
外貌醜状の具体的な評価は、傷あとが残る部位や大きさなど、公開時点の基準に沿って確認します。本人が強い心理的負担を感じていても、その主観だけで等級が決まるわけではありません。反対に、本人が「もう慣れた」と感じていても、客観的な傷あとが基準に該当する場合があります。
また、顔面骨折による複視・しびれ、顎機能障害などが併存する場合、外貌醜状とは別の後遺障害として検討します。複数の障害が残る場合には、それぞれの資料を揃え、最終的な等級を確認します。
仕事への影響と逸失利益
外貌醜状では、逸失利益が争点になることがあります。接客、営業、芸能、美容、教育、医療など、人前に出る機会が多い職種では具体的な影響が生じることがありますが、職業だけで一律に判断することはできません。事故後に担当変更があった、顧客対応から外れた、転職・昇進へ影響したなど、実際の事情を整理します。
一方、収入減が明確に出ていなくても、本人が精神的負担を抱え、対人業務に大きな支障を感じている場合があります。慰謝料と逸失利益は異なる損害項目であるため、それぞれの根拠を分けて検討します。
示談前の確認
傷あとがまだ変化している、追加の形成外科治療が予定されている、写真記録が十分でない場合には、示談を急がない方がよいことがあります。後遺障害申請前に、傷の部位・大きさ・形状が正確に記録されているか、関連する顔面骨折・神経症状が漏れていないか確認します。
よくある質問
化粧で隠れるかどうかだけで判断されるものではありません。傷あとそのものの部位・大きさ等を確認します。
治療予定と症状固定時期を主治医に確認します。
逸失利益は個別の仕事への影響を確認して検討します。慰謝料とは別の問題です。
外貌醜状とは別に神経症状等の評価を確認します。
外貌醜状の評価前に行う記録
外貌醜状は外見上の状態を客観的に確認する必要があるため、写真の残し方が重要です。正面だけでは傷の幅や陥凹が分かりにくい場合があるため、側面や斜めからも撮影します。事故直後の写真は受傷の大きさを示しますが、後遺障害では治療終了後にどの状態が残ったかを確認するため、症状固定時の写真も重要です。
髪型、化粧、照明、表情などで見え方が変わるため、できるだけ自然な状態で記録します。形成外科等で傷の長さや大きさを測定している場合は、その診療記録も確認します。
顔面骨折による変形との関係
顔面の左右差や陥凹が残る場合、皮膚の傷あとだけでなく、頬骨・眼窩・上顎骨など骨格の変形が原因となっていることがあります。外貌の問題を一つにまとめず、皮膚瘢痕、骨の変形、眼球位置の変化などを別々に確認します。顔面骨折のCTや手術記録がある場合は関連付けて整理します。
色素沈着・皮膚の変化
事故後の創傷部に色素沈着、色調変化、陥凹、隆起などが残る場合があります。後遺障害上どのように評価されるかは部位・程度等を最新基準で確認します。本人の主観だけでなく、形成外科等の診療記録と写真で客観化します。
形成外科治療を継続している場合
傷あとに対するレーザー治療、手術、注射等が予定されている場合、治療によって外観が変わる可能性があります。保険会社から早期に症状固定を提示されても、追加治療の具体的予定と改善見込みを主治医へ確認します。治療の必要性が医学的に認められているか、費用がどのように扱われるかも示談前に整理します。
面接・確認手続への準備
外貌醜状の後遺障害では、傷あとを実際に確認する手続が行われる場合があります。傷の位置や大きさ、治療経過が提出資料と一致しているかを事前に確認します。写真と実際の状態に大きな差がある場合は、撮影時期を明確にします。
逸失利益を検討するとき
外貌醜状の逸失利益は、等級だけから機械的に判断するのではなく、実際の仕事への影響を確認することが重要です。接客、営業、モデル、美容、医療、教育などでは対人業務への影響が生じる場合がありますが、同じ職種でも仕事内容は異なります。
事故後に顧客対応から外れた、写真・動画への出演が難しくなった、職場で担当変更があった、転職活動へ影響したなどの事情があれば記録します。収入減が生じていない場合も、勤務先の配慮や本人の努力によって維持されている可能性があるため、実態を確認します。
心理的負担と損害項目
顔や首など目立つ部位の傷あとは、本人に大きな心理的負担を与える場合があります。ただし、精神的苦痛に対する慰謝料と、労働能力への影響としての逸失利益は同じものではありません。心理的負担が仕事へ具体的に影響しているのか、PTSD等の精神症状として医療機関を受診しているのかを分けて整理します。
他の後遺障害を見落とさない
顔面外傷では、複視、視力障害、頬のしびれ、歯牙障害、顎機能障害などを同時に負うことがあります。外見上の傷が目立つため、他の機能障害が後遺障害診断書から漏れないよう、眼科・口腔外科・神経系の資料も確認します。
示談前のチェック
症状固定時の写真、形成外科の診療記録、顔面骨折等の画像、追加治療予定、仕事への影響、他の障害の有無を一度まとめます。示談後に追加の傷あと治療や別の後遺障害が判明しても追加請求が難しくなる場合があるため、評価が完了してから合意することが重要です。
公開・提出用写真の扱い
後遺障害の資料として写真を使用する場合と、ウェブサイト等で写真を公開することは別の問題です。認定資料として必要な写真は適切に準備し、サイト掲載を行う場合は本人の明確な同意とプライバシー配慮を確認します。
傷あと以外の症状
外貌醜状が目立つケースでも、顔面の知覚障害、複視、咀嚼・歯牙障害等が残っていることがあります。外見上の障害だけで評価を終えず、関連診療科の記録を確認します。