交通事故による脾臓破裂・脾損傷の後遺障害と賠償

脾臓は左上腹部に位置し、血液の処理や免疫機能に関わる臓器です。交通事故で腹部や左側胸腹部へ強い衝撃を受けると、脾臓が損傷して腹腔内出血を生じることがあります。事故直後には強い腹痛が出る場合もありますが、外見上の傷が小さくても内部で出血していることがあるため、救急時の画像検査と全身状態の評価が重要です。

脾臓破裂・脾損傷では、出血の程度や全身状態に応じて保存的治療、血管内治療、手術などが選択されます。重症例では脾臓を摘出する場合があります。損害賠償では、急性期の救命治療だけでなく、脾摘出後の医学的管理、入院・休業期間、退院後の生活、他の外傷との関係まで確認します。

このページの要点

  • 事故直後の造影CT、腹腔内出血の程度、手術記録などが重要です。
  • 脾摘出を受けた場合は、手術後の医師の指導や継続的な医学管理も記録します。
  • 脾臓を摘出したことだけで賠償額や後遺障害等級が自動的に決まるものではありません。
  • 示談前には、後遺障害申請、休業損害、逸失利益、他の外傷を含めた損害全体を確認します。

脾臓破裂・脾損傷とは

脾臓は、血液中の古くなった血球の処理や免疫反応などに関わる臓器です。交通事故による強い鈍的外力で裂傷や血腫が生じると、腹腔内へ出血することがあります。左側腹部や左下胸部への強い衝撃がきっかけになることがありますが、事故態様はさまざまです。

出血量が多い場合は血圧低下など全身状態に影響することがあります。損傷の程度によっては脾臓を温存できる場合もありますが、止血が難しい場合などには脾摘出術が行われることがあります。事故直後に複数の外傷を負っている場合には、脾損傷以外の治療も同時に進められます。

検査と治療経過の資料

脾損傷では造影CTなどによって裂傷や血腫、腹腔内出血、活動性出血の有無などを確認します。血液検査では貧血の推移なども確認されます。手術を受けた場合には、手術記録や退院時要約を確認し、脾臓を全摘したのか、その他の処置を受けたのか、合併症があったのかを整理します。

損害賠償のためには、事故直後の状態と退院後の状態を分けて記録することが重要です。事故当初の重症度は、後から症状が落ち着いた時点の診察だけでは分からないことがあります。救急搬送時のCT画像、画像診断報告書、手術記録、輸血記録、入院期間などを整理しておきます。

脾摘出後に確認したいこと

脾摘出後は、医師から感染症予防などについて指導を受ける場合があります。具体的な管理内容は患者ごとに異なるため、一般論だけで判断せず、主治医からどのような説明を受けているかを確認します。退院後に定期通院が続いている場合、予防的な対応や医学的管理が必要とされている場合には、その内容を記録しておきます。

損害賠償では「普段の生活ができているから影響はない」と単純に考えるべきではありません。脾臓を失ったこと、事故後に必要となった医学的管理、長期入院、休業、体力低下、他の障害などを総合して検討します。一方で、脾摘出の事実だけから具体的な後遺障害等級を断定することも適切ではありません。公開時点の基準と個別の医学的所見を確認します。

後遺障害申請の考え方

脾損傷・脾摘出後に後遺障害申請を検討する場合、手術内容、残存症状、医師の所見、継続的な治療・管理、他の傷病を確認します。後遺障害診断書には、現在の状態が実際に反映されているかを確認します。多発外傷の一部として脾損傷がある場合には、骨折や神経障害など他の障害との関係も整理します。

交通事故の後遺障害では、一つの傷病名だけで最終結果が決まるわけではありません。複数の障害が残る場合には、各障害について必要な資料を揃えたうえで、最終的な等級を検討します。

症状固定と示談の時期

脾臓破裂の急性期治療が終了し退院しても、他の外傷の治療や体力回復、定期的な医学管理が続く場合があります。症状固定は、保険会社が一方的に決めるものではなく、主治医の医学的見解を確認して判断します。

後遺障害申請を予定している場合は、必要な検査や診断書が整っているかを確認します。示談を先に成立させると、その後に新たな損害を請求することが難しくなる場合があります。再入院や追加治療の可能性について主治医から具体的な説明を受けている場合には、示談前にその内容を確認しておくことが重要です。

休業損害と逸失利益

脾臓破裂のような重症外傷では、入院や手術のため長期間仕事を休むことがあります。会社員であれば、休業損害証明書、給与明細、源泉徴収票などを用いて休業期間と収入への影響を確認します。自営業者では、確定申告書、帳簿、売上資料などを用いて、事故による事業への影響を整理します。

復職後も、体力低下や通院のために残業や出張、夜勤を制限される場合があります。事故前と同じ会社に復職しているからといって、将来の収入への影響が常に否定されるわけではありません。配置転換、勤務時間の変更、周囲の補助などがあれば具体的に記録します。

慰謝料・その他の損害

入院・通院に伴う入通院慰謝料、治療費、入院雑費、交通費なども損害として問題になります。後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料や逸失利益を検討します。家族が付き添った期間や、退院後に家族の介助・家事援助が必要だった場合には、必要性と期間を個別に確認します。

保険会社から提示を受けたときは、総額だけでなく、どの損害項目が認められ、どの項目が認められていないのかを確認することが大切です。

示談前のチェックリスト

事故直後の画像があるか、手術内容が確認できるか、退院後の医学的管理が整理されているか、休業損害の資料が揃っているか、後遺障害申請の要否を検討したか、他の外傷が評価されているかを確認します。脾摘出の事実だけに注目すると、長期休業や他の障害が見落とされることがあります。

よくある質問

摘出の事実は重要ですが、具体的な評価は手術後の状態、医学的所見、他の障害等を確認して判断します。

日常生活ができていても、手術、入院、休業、医学的管理などが損害として問題になります。後遺障害の該当可能性は資料を確認して検討します。

複数の障害が残る場合には、脾損傷と骨盤骨折をそれぞれ整理し、最終的な後遺障害等級や逸失利益を検討します。

示談内容によっては追加請求が難しくなる場合があります。追加治療の可能性が具体的に残っている場合は、示談前に確認が必要です。

退院後の感染症対策・生活指導を記録する

脾摘出後に医師から予防接種や感染症への注意、発熱時の対応などについて説明を受けている場合は、その内容を診療記録や説明書とともに保管します。どのような医学的管理が必要かは個別に異なるため、サイト上で一律の対応を指示するのではなく、主治医の具体的指示を確認することが重要です。仕事上、海外出張や夜勤などに制限・配慮が生じた場合も記録します。

事故前後の体力・勤務状況を比較する

脾臓損傷の急性期が重かったケースでは、退院後も体力が戻るまで時間を要することがあります。復職日だけでなく、短時間勤務、在宅勤務、残業・出張制限、通院のための欠勤を確認します。事故前と同じ給与が支払われている場合でも、周囲の配慮で勤務が維持されていることがあるため、仕事内容の変化も整理します。

多発外傷の場合の注意

脾臓破裂を生じるような事故では、肋骨骨折、肺損傷、骨盤骨折などを同時に負うことがあります。脾摘出後の疲労だけでなく、他傷病の痛み・歩行障害等が復職を遅らせている場合もあります。各傷病の治療経過を一覧化し、どの損害が未評価かを示談前に確認します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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