高齢者の死亡事故の訴訟で慰謝料 約4,000万円の認定


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信号無視主張を覆し、遺族の悲しみに寄り添った解決事例

交通事故の被害に遭われ、大切なご家族を亡くされた方々にとって、その悲しみは計り知れません。さらに、加害者側が事実を認めず、誠実な対応をしない場合、精神的な負担は増大するばかりです。

本記事では、被害者側の信号無視を主張する加害者の言動に苦しんでいたご遺族が、弁護士のサポートによって真実を明らかにし、適正な賠償金、特に高齢者の死亡慰謝料として高額な約2,800万円を獲得した解決事例をご紹介します。この事例が、同様の状況で不安を抱える方々の情報となり、専門家へ相談する一歩となることを願っています。

ご相談者様のプロフィール:突然の事故で生活が一変したご遺族の状況

今回ご相談にいらっしゃったのは、亡くなられた被害者T様の長男であるご依頼者様(50代男性)です。被害者Tさんは、長男であるご依頼者様、その弟である二男、そして夫とともに生活されていました。事故のわずか2か月前に、ご両親のために新築したばかりの家で、ご家族との平穏な日々を過ごされていた中で突然の悲劇に襲われました。

被害者T様は、日頃から自転車に乗る際に細心の注意を払うほど、交通安全に非常に気を配る方でした。毎日ご主人と散歩に出かけたり、ガーデニングや趣味の切手収集を楽しんだりするなど、充実した生活を送られていました。しかし、突然の事故により、ご家族の生活は一変しました。特に、依頼者の弟様は、この事故が原因でうつ状態と診断され、約5か月間の休職を余儀なくされました。

生活費を確保するために復職されたものの、復職後も心療内科への通院を続けなければならない状況でした。ご遺族は、大切な方を失った悲しみだけでなく、加害者側の不誠実な対応や、弟の体調悪化により、多大な精神的・経済的負担を抱えることとなりました。

事故の概要:高齢者の母親が巻き込まれた悲劇

(1)事故の発生

高齢者である被害者T様が自転車で交差点を横断中に、中型貨物自動車にはねられて亡くなられた死亡しました。この事故により、被害者T様は重い頭部外傷と外傷性くも膜下出血、びまん性脳損傷などの重篤な傷害を負い、同日中に亡くなられました。

(2)事故当時の状況とは?加害者側の主張の虚偽性

事故の発生直後、加害者側は「被害者である高齢者のT様が赤信号を無視した」と主張し、警察も当初、その供述と目撃者の証言に基づいて、被害者T様に過失があるかのような判断をしていました。しかし、弁護士が受任後、周辺の防犯カメラ映像や刑事記録を精査した結果、衝撃的な真実が明らかになりました。

映像では、加害車両は、対面信号が黄色から赤色に変わるのにもかかわらず、時速約44キロメートルで交差点に進入し、青信号に従って横断歩道上を進行していた被害者T様をはねていました。加害者は、元々「黄色信号を認識して軽くブレーキを踏んだ」と供述していましたが、実際には漫然と運転を続けており、被害者T様がいたにもかかわらず、危険を回避するための適切な措置を怠っていたのです。

ご相談時の悩み・課題:信じてもらえない辛さと補償への不安

(1)加害者の言動

ご依頼者様が当事務所に相談にいらっしゃった際、抱えていた悩みは多岐にわたります。まず、加害者側からの「被害者T様が赤信号無視をした」という虚偽の主張に、ご遺族は深く傷つき、故人の名誉が傷つけられることに耐えがたい憤りを感じていました。警察も当初、加害者側の供述を鵜呑みにしたため、その後の捜査にも不信感を抱いていました。

(2)加害者・保険会社からの不誠実な対応

加害者側の任意保険会社からは、事故後、ご遺族への連絡が一切なく、事故状況の説明や賠償についての話合いも進まない状況でした。これは、ご遺族にとって大きな不安材料でした。加害者は、刑事裁判で遺族への謝罪を誓ったにもかかわらず、事故から一度も正式な挨拶や謝罪に訪れることはありませんでした。職務中に死亡事故を起こしたにもかかわらず、加害者側の会社も、支店長が一度挨拶に来たのみで、社長からの謝罪もなく、無礼な対応に終始しました。

(3)なぜ事実が歪められたのか?ご遺族の憤り

ご遺族は、なぜ加害者が虚偽の主張をし続けるのか、なぜ保険会社からの連絡がないのか、そして今後の賠償手続がどうなるのか全く見通しが立たない状況に苦悩していました。特に、防犯カメラ映像があったからこそ、母親の無実が証明できたものの、もし映像がなければ、母親が信号無視をしたと認定されてしまう可能性があったことに強い危機感を抱いていました。

ご遺族は、「真実を明らかにしたい」、「故人の名誉を回復したい」、「適正な賠償を受けたい」という強い思いを抱えていました。また、弟の哲也さんが事故による精神的ショックからうつ病を発症し、長期休職を余儀なくされたことも、ご遺族の大きな負担となっていました。

弁護士の対応・戦略:真実を追求し、毅然と立ち向かう

ご依頼を受けた後、当事務所の弁護士は、ご遺族の深い悲しみと憤りを理解し、迅速かつ戦略的に事案解決に着手しました。

(1)自賠責保険への被害者請求でまずは被害回復を

加害者側が一切の賠償を拒否し、任意保険会社からの連絡も途絶えていたため、まずは加害者の自賠責保険に対する被害者請求を行い、自賠責保険金から回収可能な賠償金を先行して確保することとしました。これにより、ご遺族が当面の金銭的負担から解放され、安心して治療や生活再建に専念できる環境を整えました。

(2)事記録と防犯カメラ映像を徹底分析した訴訟戦略

自賠責保険金受領後、弁護士は加害者およびその勤務先の会社に対し、民事訴訟を提起しました。訴訟では、加害者側の不誠実な対応と虚偽の主張を徹底的に覆すことが重要でした。当事務所は、事故現場周辺の防犯カメラ映像、信号サイクル分析報告書、警察の実況見分調書、加害者の供述調書といった刑事記録を多角的に分析し、加害者側の信号無視、および漫然運転という重大な過失を詳細に立証しました。

特に、加害者が「黄色信号を認識した」としながらも、その後13秒間も漫然と運転を続け、交差点に侵入した事実を、映像と時間経過、車両速度の計算に基づいて緻密に示しました。これにより、加害者側が主張する「被害者側の赤信号無視」が事実無根であることを明確に証明しました。

(3)加害者側の悪質性を徹底的に立証

さらに、弁護士は、加害者が事故直後に虚偽の供述をしたこと、そして事故後、遺族への誠実な謝罪を怠り、連絡を一切取らなかったことなど、加害者側の悪質性を法廷で徹底的に主張・立証しました。

ご遺族の尋問を通じて、故人の生前の状況や、事故後の家族の苦悩、加害者側の対応による精神的被害を具体的に裁判所に訴えました。これらの主張立証により、裁判所は加害者側の重大な過失と不誠実な態度を認め、賠償金の増額に繋がりました。

解決結果:裁判基準を大きく超える死亡慰謝料と総額を獲得

最終的に、当事務所の粘り強い交渉と緻密な立証活動が実を結び、ご遺族は多額の賠償金を獲得することができました。本件でご遺族が最終的に受領した総賠償金額は、自賠責保険金を含めて約4,000万円となりました。

主な損害項目 最終受領金額
死亡慰謝料 2,500万円
逸失利益 約1,060万円
葬儀費用 約100万円
ご遺族固有の慰謝料 300万円
合計受領額 約4,000万円

注目すべきは、死亡慰謝料です。一般的に、高齢者の死亡慰謝料は、裁判においても死亡した本人と遺族固有の慰謝料を合計した金額が、2,000万円から2,500万円の範囲で認められることがほとんどです。しかし、本件では、加害者側の信号無視という悪質な過失や、事故後の不誠実な態度、そしてご遺族の精神的苦痛を詳細に立証した結果、裁判基準の相場を超える2,800万円という死亡慰謝料が認められました。

担当弁護士のコメント:粘り強い交渉と立証が真実を導く

本件の解決において最も重要だったのは、加害者側が当初「被害者が赤信号を無視した」と虚偽の主張を繰り返していたにもかかわらず、防犯カメラ映像や刑事記録を詳細に分析し、加害者側の重大な過失と悪質性を、証拠に基づいて裁判所に明確に立証できた点です。

特に、加害者の「黄色信号を認識したにもかかわらず、漫然と運転を続けた」という供述と、防犯カメラ映像の時系列を詳細に照合することで、その過失の重大性を浮き彫りにしました。また、刑事裁判における加害者の証言の変遷や、事故後にご遺族に対して一度も誠実な謝罪や連絡がなかった点も、加害者の不誠実な態度として強く主張しました。

これらの粘り強い主張立証により、裁判所は加害者側の悪質性を高く評価し、高齢者の死亡慰謝料としては高額な2,800万円という認定に繋がりました。ご遺族の深い悲しみと憤りを少しでも和らげ、故人の名誉を守ることができ、大変嬉しく思います。

まとめ:交通死亡事故の適切な解決は、専門家へのご相談が重要です

交通死亡事故は、ご遺族にとって計り知れない悲しみと、その後の生活に対する大きな不安をもたらします。特に、本件のように加害者側が過失を認めず、不誠実な対応をする場合、ご遺族は精神的にも追い詰められてしまいます。

そのような状況に直面した際には、私たち弁護士のような専門家にご相談いただくことが重要です。保険会社との交渉や、刑事・民事の複雑な手続、そして加害者側の不誠実な対応に個人で立ち向かうことは、非常に大きな負担となります。

大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、様々な疑問や不安を抱えていることと思います。「なぜこんなことが起きたのか」、「どのように手続きを進めればいいのか」、「いくらくらいの賠償金が妥当なのか」といった皆様の疑問に対し、分かりやすく丁寧にお答えし、ご不安を払拭できるようサポートいたします。

この事例のように、たとえ当初は不利な状況に見えても、諦めずに専門家にご相談いただくことで、真実が明らかになり、適正な解決へと導かれる可能性があります。交通死亡事故のことでお困りの方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。私たち弁護士が、ご遺族の皆様の権利を守り、安心して新たな一歩を踏み出せるよう、全力でサポートさせていただきます。

交通事故に遭われた方、ご家族を亡くされた方へ