【解決事例/045】股関節の人口関節そう入につき10級11号の後遺障害が認定され、裁判所基準よりも慰謝料を増額して示談できたケース
依頼者属性 | 性別 | 男性 |
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年代 | 60代 | |
職業 | 会社員 | |
事故態様と相談 | 事故場所 | 大分市 |
事故状況 | 原付バイクで道路を直進中、交差点で右折してきた対向車と衝突したもの。 | |
相談のタイミング | 事故から約1年後 | |
相談のきっかけ | 保険会社から症状固定の打診があったので、今後のことを弁護士に依頼して適切に進めていきたい。 | |
怪我と後遺障害 | 傷病名 | 右大腿骨頚部骨折 |
自覚症状 | 右股関節人口関節そう入置換、股関節可動域制限、運動時の疼痛など | |
後遺障害等級 | 10級11号 | |
保険会社提示額 | 事前提示 | なし(保険会社が金額を提示する以前に弁護士が介入したため) |
獲得賠償金額 | 損害項目 | 最終受取金額 |
金額 | 約1350万円 | |
備考 | 治療費などを含めた賠償総額約1400万円 |
相談から解決までの流れ
原付バイクで走行中、交差点で右折しようとする対向車に衝突した事故で、大腿骨頚部を骨折したケースです。事故から約1年1か月後、任意保険会社から症状固定を打診されたため、今後の手続を適切に進めたいということで相談にみえ、受任に至りました。
受任後、まずは、医師に後遺障害診断書を作成してもらいました。
本件では、股関節に人口関節をそう入していますが、この人口関節は、定期的に再手術が必要です。したがって、保険会社との示談交渉の際に、将来治療費が争点になると考え、後遺障害診断書に、定期的に再手術が必要な旨と再手術が必要となる期間を記載してもらうことにしました。そのため、主治医と医師面談を行い、後遺障害診断書の作成と将来治療についての記載を依頼しました。
ただ、主治医が、「そもそも、人口関節の挿入で関節機能は回復しているから後遺症とはいえない」と言い、後遺障害診断書の作成自体に難色を示しました。そこで、医学的な後遺症と自賠責保険が認定する後遺障害は違う旨を説明し、作成してもらうことができました。
その後、作成された後遺障害診断書の内容を確認したところ、不備があったため、再度、主治医と医師面談を行い、後遺障害診断書の記載を訂正してもらいました。
その後、自賠責保険に対し、被害者請求の方法で後遺障害の認定の手続を行ったところ、股関節の人口関節そう入置換について、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として、自賠責保険の10級11号の後遺障害が認定されました。
後遺障害認定後、任意保険会社と最終の賠償金について示談交渉を行いました。
依頼者は、本件事故による後遺症のため、それまでライフワークとしていた家具作りがほとんどできなくなっており、この点について、とても悔しい気持ちを持たれていました。そこで、裁判所基準よりも後遺症慰謝料を増額すべきであると交渉をし、裁判所基準よりも後遺症慰謝料については、1割増額した金額で示談をすることができました。通常、示談のみで解決する場合は、慰謝料は裁判所基準よりもいくらか減額されることが多いことを考えると、良い内容での示談となりました。
この他、人口関節の再手術のための将来費用についても認められ、裁判所基準をベースとした適正な金額での示談にて解決することができました。
担当弁護士の振返りポイント
主治医との医師面談がポイントとなったケースです。
当初、主治医は、後遺障害診断書の作成に難色を示していました。「治療は成功している。」という理由です。「医師の考える後遺症」と「自賠責保険の後遺障害」のギャップの問題が出てきました。
自賠責保険の後遺障害は、自賠責保険金の支払のための概念で、医師が判断するのではなく、細かい認定基準をもとに、自賠責保険会社(実質的には、損害保険料率算出機構)が判断をするものです。
したがって、医師が後遺症の判断が、自賠責保険の後遺障害の有無とは異なることもあります。
医師の使命は傷病を治すことなので、医師が自賠責保険について知らないのは、むしろ当然です。このようなことを踏まえて、医師面談の際にも、自賠責保険の後遺障害について丁寧に説明をする必要を感じます。
本件は、慰謝料が裁判所基準よりも増額されたこともポイントです。ライフワークである家具作りができなくなったことは、依頼者にとって、とても大きなことなので、このことを賠償金額に反映させることができ、依頼者にも喜んでいただくことができました。