交通事故によるアキレス腱断裂の後遺障害と賠償

アキレス腱はふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぎ、歩行やつま先立ち、階段昇降などに重要な役割を果たします。スポーツ外傷として知られていますが、交通事故で足関節に強い外力が加わった場合や、転倒・衝突時に急激な伸張力が加わった場合にも損傷することがあります。

このページの要点

  • 事故直後の症状、診察所見、超音波・MRI等の検査を確認します。
  • 保存療法・手術後の治癒状態、足関節可動域、筋力を確認します。
  • つま先立ち、階段、走行、長時間歩行など具体的動作への支障を記録します。
  • スポーツ復帰だけでなく、仕事・家事への影響を賠償上整理します。

診断と治療

アキレス腱断裂では、受傷時に後方を蹴られたような感覚を覚えることがあります。診察では腱の連続性や足関節の動きを確認し、必要に応じて超音波やMRI等が行われることがあります。治療には保存療法と手術療法があり、どちらの場合も一定期間の固定とリハビリが必要になります。

治療後に残る症状

治癒後も足首周辺の違和感、筋力低下、足関節の動きにくさ、長時間歩行時の疲れ、つま先立ちの難しさなどが残る場合があります。再断裂や腱の延長による機能低下などが問題となることもあります。後遺障害申請では、傷病名だけでなく、現在の機能、診察所見、治療経過を確認します。

仕事への影響

歩行・立位が多い仕事、階段や高所作業、配送、介護、建設、警備などではアキレス腱機能の低下が仕事へ影響しやすくなります。デスクワークでも通勤、長距離移動、外回りに影響が出る場合があります。事故前後の作業内容、歩行距離、勤務時間を比較します。

症状固定と示談

リハビリで筋力・可動域が改善している途中では症状固定を急がない方がよい場合があります。主治医に回復状況を確認し、必要な検査や後遺障害診断書の作成を経て示談を検討します。

よくある質問

手術の有無だけでは決まりません。治療後に残った機能障害等を確認します。

日常・仕事での具体的支障と医学的所見を合わせて確認します。

筋力、腱の状態、足関節機能を確認します。

趣味への影響と、仕事・収入への影響は分けて整理します。

アキレス腱断裂の診断で確認すること

アキレス腱断裂では、受傷時に「後ろから蹴られたような感覚」があった、つま先立ちができなくなったなどの訴えがみられることがあります。診察では腱の連続性、足関節運動、徒手検査などを確認し、必要に応じ超音波やMRI等が行われます。交通事故による断裂では、事故態様と受傷直後の症状・診断が整合しているかを確認します。

保存療法と手術療法の経過

治療方法は断裂部位、患者の年齢・活動性等を踏まえて医師が判断します。保存療法・手術療法のいずれでも、一定期間の固定と段階的な荷重・リハビリが必要になります。後遺障害や休業を検討する際は「手術したか」だけでなく、固定期間、荷重開始時期、リハビリ、合併症、再断裂の有無を確認します。

筋力低下とつま先立ち

腱が連続していても、ふくらはぎの筋力低下や腱の伸長などにより、片脚でのつま先立ちが難しい、階段や坂道で力が入りにくい、速歩・走行ができないといった支障が残る場合があります。足関節の可動域だけでは捉えにくい機能なので、診察・リハビリ記録と日常動作を合わせて整理します。

歩行・仕事への影響

営業、配送、建設、介護、警備、飲食など長時間歩行・立位が必要な仕事では、筋力低下や疲労が大きな支障になることがあります。事故前は一日何歩程度歩いていたか、階段や高所作業があったか、事故後に内勤へ変わったかを具体化します。運転業務ではペダル操作への影響も確認します。

スポーツと仕事の損害を分ける

ランニングや球技へ戻れないことは本人にとって大きな負担ですが、趣味・スポーツへの影響と収入への影響は分けて考える必要があります。スポーツ指導者など競技能力が仕事に直結する場合は、その具体的な職務内容と収入への影響を資料化します。

症状固定前に確認すること

筋力・歩行能力がリハビリで改善している途中では、症状固定を急がない方がよい場合があります。主治医や理学療法士の評価、画像、足関節可動域、筋力、歩行状態を確認し、今後の改善見込みを踏まえて判断します。示談前には追加治療や装具の必要性が残っていないかも確認します。

後遺障害診断書と資料

疼痛、可動域、筋力低下、歩行障害など実際に残る症状が診断書に反映されているか確認します。アキレス腱断裂という病名だけでは最終的な障害の程度は分かりません。仕事上の制限、装具、通院状況も資料として整理します。

断裂部の治癒状態を確認する

アキレス腱断裂では、固定・手術後に腱の連続性が回復していても、腱が延長した状態で治癒すると、ふくらはぎの筋力や蹴り出しに影響する場合があります。診察所見、超音波・MRI等、リハビリ担当者の評価を確認し、単に「腱がつながった」ことだけで機能回復を判断しません。

片脚での動作を確認する

両脚での立位・歩行が可能でも、片脚つま先立ち、階段、坂道、速歩、方向転換では左右差が目立つことがあります。仕事や生活で必要な動作を具体的に確認し、事故前との違いを記録します。スポーツだけでなく、通勤・営業・荷物運搬等の日常的な負担も整理します。

ふくらはぎの筋力・周囲径

長期間の固定で下腿筋が萎縮することがあります。症状固定時に筋力や下腿周囲径の左右差がある場合、リハビリ記録と合わせて確認します。回復途中の筋力低下なのか、腱機能の問題が残っているのかを主治医の評価に沿って整理します。

再断裂・合併症

治療経過中に再断裂、創部トラブル、感染等があった場合は、その治療期間と最終的な機能を確認します。再手術を受けた場合は手術記録と術後リハビリを整理し、休業期間・症状固定時期へどう影響したかを確認します。

装具・靴の使用

治療中や復職後に足関節装具、インソール、特定の靴を使用している場合、その必要性と期間を記録します。本人の好みではなく、医師・理学療法士からどのような理由で勧められたかを確認します。

職種ごとの負担

配送や営業では歩行距離、建設では階段・高所、介護では移乗時の踏ん張り、警備・飲食では長時間立位が問題になります。事故後に内勤へ変更された、担当エリアが縮小した、勤務時間が短くなったなどを資料化します。

家事・育児

買い物、掃除、子どもの送迎、階段を使う洗濯など、家庭内でも歩行・立位が多くあります。家族が代わった家事と期間を記録し、事故前後の生活能力を比較します。

後遺障害と示談

アキレス腱断裂という病名だけで等級は決まりません。足関節可動域、筋力、歩行、疼痛、画像・診察所見を確認します。リハビリの改善が続いている場合は症状固定を急がず、最終状態が整理できてから示談を検討します。

仕事復帰後の歩行量を確認する

アキレス腱断裂後は、復職していても一日の歩数や階段回数が事故前より減っている場合があります。営業範囲の縮小、立ち仕事から座り仕事への変更、同僚による運搬代替などを記録します。給与が維持されていても、実際の仕事量・役割が変わっていないか確認します。

示談前の確認

アキレス腱断裂では、腱の治癒、足関節可動域、下腿筋力、片脚つま先立ち、歩行・仕事への影響をまとめて確認します。手術の有無だけで評価せず、症状固定時に残った実際の機能障害を基準に検討します。

監修:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

最終更新日:

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