交通事故によるけがで入院中の方へ

最終更新日2021.8.23(公開日:2021.8.23)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

 

 交通事故でケガを負った場合、事故直後からしばらくの間、入院での治療を余儀なくされることがあります。

 

 交通事故で、入院をするほどの大きなケガを負った場合、しばらくは仕事を休まざるを得ないため、入院期間中の収入の減少分を保険会社に休業損害として補償をしてもらわなければなりません。

また、入院するほどの大きなケガの場合は、後遺障害が残る可能性がそれだけ大きくなります。適切に後遺障害の認定を得るためには、交通事故にあった後、できるだけ早く弁護士に相談することが重要になります。

さらに、自分にも過失がある交通事故の場合は、自分の過失分に応じて最終的な賠償額が減額されます。この場合、健康保険や労災保険を使用して治療費を支払うことで、自身の過失分の減額を抑えることができます。このような判断も、事故にあってすぐの時点で行う必要があります。

このように、入院をするほどの大きなケガの場合は事故直後から適切に対応すべきことが多く、交通事故にあわれた後、できるだけ早く弁護士に相談した方が良いのですが、入院中には、法律事務所に赴いて法律相談を受けることはできないのが通常です。

そのため、当事務所では、入院中の方については、ご家族による代理の相談や弁護士が病院に赴いて法律相談をする出張相談も行っています。
以下では、入院中の交通事故被害者の方に向けて、交通事故で入院した場合に加害者側に請求できる損害賠償や入院中に必要となる手続、当事務所で対応している代理相談や出張相談について説明させて頂きます。

 

 

交通事故で入院した方の損害賠償請求

 交通事故による怪我で入院した場合に、加害者又は加害者の加入している保険会社に請求することができる損害賠償の項目の代表的なものは以下のとおりです。

 

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故によって病院に入院や通院することとなった被害者の精神的苦痛に対して支払われる賠償をいいます。

入通院慰謝料は、入院や通院に要した期間や日数に応じて計算されます。入通院慰謝料の算定基準にはいくつかの種類があります。弁護士に交渉をご依頼いただいた場合には、被害者の方に最も有利である裁判所基準(弁護士基準)と呼ばれる基準に基づいて交渉を進めます。

保険会社から提示される示談金額は、裁判所基準と比較してかなり低い金額にとどまることが通常です。このため、保険会社からの提案があってもすぐに同意せず、一度弁護士に相談することをおすすめします。

 

治療費等

交通事故によるケガの治療のために必要な治療費は、当然に加害者が支払義務を負います。

 

入院雑費

入院をすると、治療費とは別に入院生活のために必要な雑費の支出が発生します。この雑費についても請求が可能です。
保険会社の基準では入院一日あたり1100円、裁判所基準では入院一日あたり1500円となります。

 

入院中の特別室の使用料

大部屋ではなく個室に入院した場合の差額ベッド代などの特別室の使用料は、以下の場合に認められます。

まずは、医師の指示がある場合には、特別室の使用料についても支払われます。
また、医師の指示がない場合でも「症状が重く個室での入院が必要であった」「空室がなかった」など、個室での入院がやむを得ない事情がある場合には、特別室の使用料が支払われます。
単に被害者自身の判断で個室に入院した場合は支払われないため、注意が必要です。

 

休業損害

交通事故によるケガで入院することとなると、少なくとも入院中は仕事を休むことになります。このように、交通事故による休業で収入が減少した場合には、加害者に対して休業損害を請求することができます。

休業損害は、会社員だけでなく自営業者や専業主婦などであっても請求できます。ただし、損害の計算方法をめぐって保険会社と争いになることがよくありますので、交渉に不安がある方は一度弁護士にご相談ください。

 

後遺障害慰謝料

入院を要するほどの怪我を負った場合には、交通事故による怪我が完治せず後遺障害として残ることがよくあります。

主治医から「後遺障害には該当しない」と言われている場合でも、自賠責保険の後遺障害が認定されるケースはよくあります。これは、医師が考える「後遺症」と自賠責保険の認定基準上の「後遺障害」は全く別のものであるためです。
医師は、病気やケガを治すのが主な仕事で、自賠責保険の後遺障害のことについて詳しく知っていることは、ほとんどありません。

特に、入院をするほどの大きなケガの場合、多少の症状が残っていても、医師としては「治った」と認識していることが多いので「後遺症は残ってないよ」と説明しがちです。
しかし、自賠責保険の後遺障害の認定では、少しでも症状が残っていれば審査の対象になるため、医師から「後遺障害には該当しない」と言われている場合でも、症状が残っている場合は、後遺障害の認定手続を行うことを検討しなければなりません。

後遺障害が認定された場合、後遺障害が残ったことに対する慰謝料を請求することができますが、この慰謝料の算定方法についても複数の基準があります。保険会社は、被害者が裁判所に訴えた場合に獲得できる慰謝料額よりもかなり抑えた金額で示談の提案をしてくることがよくあります。
このため、弁護士に保険会社との交渉を依頼した場合、慰謝料が増額されることがほとんどです。

 

逸失利益

後遺障害が残った場合、そのことにより、将来の収入が減少する恐れがあります。このことについての賠償が逸失利益です。

逸失利益は、事故前の被害者の収入、後遺障害の程度、後遺障害が被害者の仕事に与える影響などを考慮して金額を決めます。

後遺障害の程度が重ければその分、逸失利益の金額も大きくなります。この場合、保険会社は、少しでも逸失利益の金額を低くしようとして逸失利益の金額を争ってくることが多いです。

また、醜状障害(傷跡の障害)や変形障害(骨の変形の障害)などの場合は、保険会社は「そもそも逸失利益が発生していない」と主張してくることがほとんどです。この場合は、訴訟や調停を行い、逸失利益を認めさせなければなりません。

 

交通事故で入院中に弁護士に依頼するには

交通事故で入院するほどの大きなケガを負った場合は、弁護士に早めに相談することが重要なのです。しかし、入院中は、ご本人が法律事務所に赴いて法律相談を受けることが難しいのが通常です。そのため、当事務所では、以下のように、入院中でもできるだけ早く法律相談ができるようにしています。ことがほとんどです。この場合は、訴訟や調停を行い、逸失利益を認めさせなければなりません。

 

ご家族による代理相談

当事務所では、交通事故で入院中の被害者のご家族による代理でのご相談に対応しています。代理相談の場合には、弁護士がご家族から被害の状況などを詳しくお伺いして、必要なアドバイスをさせて頂きます。

正式にご依頼を受ける前には、ご本人様の意思確認が必要となりますが、法律相談のアドバイスで対応できることも多いので、まずは、ご家族による代理での相談も検討されてみてください。

 

入院先への出張相談

弁護士が入院先を訪問する出張相談も行っております。

入院先での相談は、病院内の個室や談話スペースなどを利用して行います。もちろん、ご家族や近親者の方もご同席いただいて構いません。出張相談の場合は、ご本人様と直接お話ができるため、法律相談終了時に、そのまま正式な依頼の手続を行うこともできます。

病院での出張相談をご希望の場合にも、当事務所までお気軽にお問い合わせください。