交通事故で困ったら、まずは弁護士に相談!「保険会社による示談代行制度」のギモンをスッキリ解決!

車と車の事故

最終更新日2025.8.4(公開日:2025.8.4)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

交通事故に遭ってしまったら、どうすればいいんだろう…? 車は壊れたし、体も痛い…そんな時に頭を悩ませるのが、事故の相手との「示談交渉」ですよね。

「保険会社が代わりに交渉してくれるから大丈夫!」と思っている人も多いかもしれません。確かに、多くの自動車保険には、保険会社が被保険者(保険を契約しているあなた)に代わって示談交渉を行ってくれる「示談代行制度」という便利なサービスがあります。

でも、この示談代行制度、実は「なんでもかんでも保険会社が勝手に決められるわけじゃない」って知っていましたか? 今回は、この示談代行制度について、その仕組みや、「あれ?これってどうなの?」という疑問をスッキリ解決していきます!

交通事故は誰にとっても大変…示談代行制度が生まれた理由

車に乗っていると、どんなに気を付けていても、残念ながら交通事故に遭ってしまう可能性はゼロではありません。もし事故が起きてしまったら、車の修理費用やケガの治療費、そして相手への損害賠償など、解決しなければならないことが山積みになります。

特に、事故の相手との「示談交渉」は、専門的な法律の知識が必要になるだけでなく、解決までにたくさんの時間や労力がかかります。事故の当事者同士で話し合おうとしても、感情的になってしまって、なかなか話が進まない…なんてこともよくある話です。

こうした、「事故に遭った人が、交渉のことで困らないように助けたい」、「被害に遭った人を救いたい」という考えから、保険会社が代わりに交渉してくれる「示談交渉サービス」(示談代行制度)が生まれました。

この制度は、まず昭和49年(1974年)3月に、対人事故(人をケガさせたり死亡させたりする事故)の示談代行サービスが「家庭用自動車保険(FAP)」でスタートしました。そして、少し遅れて昭和57年(1982年)10月1日には、「自家用自動車総合保険(SAP)」の導入と同時に、対物事故(物を壊してしまう事故)についても示談代行サービスが始まりました。

「弁護士法」の大きな壁!示談代行制度が合法になるまでの道のり

さて、この示談代行制度を始めるにあたって、保険会社は大きな壁にぶつかりました。それが「弁護士法第72条」という法律です。この法律は、「弁護士ではない人が、お金をもらう目的で、繰り返し(仕事として)、他の人の法律に関する仕事をしてはいけない」と定めています。これを「非弁活動の禁止」といいます。

日本弁護士連合会(日弁連)は、「保険会社が示談代行をすることは、弁護士法に違反するんじゃないの?」と疑問を投げかけました。特に問題になったのは、以下の点です。

「報酬を得る目的」があるのか?:

保険会社は「保険料以外にお金はもらわない」と言いましたが、新しい保険を売ることで利益を得る目的があるのでは、と日弁連から指摘されました。

「他の人の法律事務」なのか?:

保険会社は、「保険金を支払う立場として事故に利害関係がある(=「他の人の法律事務」ではなく、保険会社自身の法律事務である)」と主張しました。しかし、それはあくまで、経済的な利害関係に過ぎず、事故の当事者の利害関係を当然に保険会社の利害関係と同じものと見ることはできないのではないかと、日弁連から指摘されました。

この問題について、保険会社と日弁連は何度も話し合いを重ねました。そして、最終的に以下の対策を取ることで、示談代行制度が合法であることが認められるようになりました。

対人事故の解決策:

保険会社の社員が示談代行を行う:

「他の人の法律事務」ではないとみなされるように、保険会社の社員が代行することになりました。

被害者直接請求権の導入:

事故の被害者が、保険会社に直接保険金を請求できる「被害者直接請求権」が導入されました。これにより、保険会社も事故の当事者として交渉できるようになったため、弁護士法の問題が解決されました。

支払基準の作成:

保険金の支払いに不公平が出ないように、保険会社が支払いの基準を作るようになりました。

交通事故裁定委員会(現在の交通事故紛争処理センター)の設立:

もし示談の内容に不満があっても、公平な第三者機関が無料で話し合いを仲介してくれる場が作られました。

1事故あたりの保険金額を「無制限」に:

たくさんの被害者が出た場合でも、すべての人がきちんと補償を受けられるように、1回の事故で支払われる保険金の額に上限を設けないようになりました。

対物事故の解決策:

対物事故では、専門知識を持つ「アジャスター」(物損事故調査員)が交渉すべきだと保険会社は考えましたが、日弁連はこれも非弁活動にあたると反対しました。そこで、以下のような形で合意がなされました。

弁護士が事故処理を依頼され、アジャスターは弁護士の指示に従って補助を行う:

アジャスターが単独で示談代行を行うのではなく、弁護士が主体となって事故処理を委任され、アジャスターはその弁護士の指示のもとで事故の原因や損害額の調査、示談案の提示などを行うことになりました。

示談書には弁護士が署名・押印する:

示談書などの重要な書類には弁護士がサインや押印をすることで、弁護士法上の問題が解決されました。

対物事故についても被害者直接請求権を導入:

対人事故と同様に、被害者が保険会社に直接請求できる権利が導入され、被害者救済がさらに進みました。

交通事故紛争処理センターの利用:

対物事故についても、このセンターで示談の斡旋(あっせん)を受けられるようになりました。

「あなたの同意」が何より大事!勝手に示談はできません!

このように、様々な苦労を経て現在の示談代行制度ができました。この制度の重要なポイントは、「保険会社は、被保険者(あなた)の明確な同意がなければ、示談代行を行えない」ということです。保険会社は、示談交渉を行う際に、「あなた(被保険者)の代理人」として動きます。

これは、あなたから「私の代わりに交渉してくださいね」という許可(委任契約)をもらっているということです。この同意は、「同意書」や「委任状」といった形で、書面で行われるべきものとされています。つまり、あなたはきちんと内容を理解した上で、「これでお願いします」と自分の意思を示す必要があるのです。

示談交渉の結果は、最終的に被保険者(あなた)に直接影響します。だから、あなたの承諾なしに、保険会社が勝手に、あなたの損害賠償請求権を放棄するような示談を進めることはできません。もし、保険会社の示談代行のやり方に不満がある場合、あなたは保険会社との委任契約を解除して、示談代行を止めることもできます。

こんな時は保険会社が示談代行してくれない!?

便利な示談代行制度ですが、実は保険会社が示談代行を行わないケースもいくつかあります。それは、保険会社が「支払責任を負う限度において」というルールがあるからです。
具体的には、以下のような場合です。

あなたに全く責任がない事故(無責事故)や、保険の対象外となる事故(免責事故):

保険会社は、あなたが賠償責任を負わない事故や、保険の契約内容で保険金が支払われない事故については、お金を払う義務がありません。そのため、示談代行を行うと弁護士法に違反してしまう可能性があるからです。

損害賠償の金額が保険金額を明らかに超える事故:

例えば、保険金額が2億円なのに、実際の損害が3億円だった場合などです。保険会社は保険金額を超えた部分については支払いの義務がありません。示談交渉は損害賠償の総額を決めるものなので、保険金額を超える部分とそうでない部分を分けて交渉するのは現実的にとても難しいのです。

相手が保険会社との直接交渉を拒否した場合:

相手が「保険会社とは話さない、本人と直接話したい」と言ってきた場合などです。この場合、保険会社は示談代行ができません。

あなたの車が自賠責保険に入っていなかった場合:

自賠責保険は、すべての車が加入しなければならない強制保険です。もしこれに入っていなかった場合、保険会社は示談代行を行わないことがあります。

あなたが保険会社への協力を正当な理由なく拒否した場合:

事故の状況を一番よく知っているのはあなた自身です。保険会社が損害の調査や交渉を進めるためには、あなたの協力が不可欠です。協力が得られないと、適切な示談ができないため、保険会社は示談代行をしないことになります。

対物事故で、損害賠償額が保険の「免責金額」(自己負担額)を下回る場合:

これも保険会社が支払いの義務がない部分なので、示談代行を行いません。

「あなたの味方」は誰?困ったら迷わず弁護士にご相談を!

上記のように、保険会社は「支払責任を負う限度において」のみ示談代行を行うことができます。もし、あなたの事故がこれらの「保険会社が示談代行できないケース」に当てはまってしまったら、あなた自身で相手と交渉しなければならなくなってしまいます。

また、保険会社は「保険金を支払う」という立場のため、あくまで保険会社の支払基準やこれまでの経験に基づいた交渉をします。そのため、「この示談内容、本当に正しいの?」「もっともらえるんじゃないの?」といった疑問や不満を抱くこともあるかもしれません。

そんな時こそ、弁護士の出番です。
弁護士は、保険会社とは異なり、あなたの「代理人」として、損害賠償の交渉や手続きを最初から最後まで行うことができます。保険会社の「支払責任を負う限度」という制限はありません。

弁護士はあなたの権利を最大限に守るために、法律と判例に基づいて、適正な賠償額の獲得を目指して交渉します。複雑な法律問題や、相手との感情的な対立も、弁護士が専門家として冷静に対応します。

あなたは面倒な交渉から解放され、治療や生活の再建に専念できます。万が一、交渉がまとまらずに調停や裁判になったとしても、弁護士があなたの代理人として手続きを進めるので安心です。

交通事故に遭ってしまったら、心身ともに大きな負担がかかります。その上、慣れない交渉や法律問題に直面するのは、本当に大変なことです。 「これは保険会社に任せておけばいいのかな?」 「保険会社の言う通りで大丈夫なのかな?」 「もし保険会社が示談代行してくれないって言われたらどうしよう…」

もし少しでもそう感じたら、それは弁護士に相談するタイミングかもしれません。私たちは、交通事故に詳しい弁護士として、皆さんの不安を解消し、正当な権利を守るお手伝いをいたします。

一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。 あなたの抱えている交通事故の悩みを、私たち弁護士が全力でサポートいたします。