頭痛の後遺障害

頭痛の後遺障害

最終更新日2020.4.12(公開日:2020.4.12)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士

 

頭痛の後遺障害

頭痛の後遺障害の解決事例

40代会社員男性の人身事故で、傷害部分につき裁判所基準での示談をすることができた事例

 

単独で後遺障害の問題となることは少ない症状です

交通事故の後に被害者が頭痛の症状を訴えることは多いですが、頭痛だけが単独で後遺障害の問題となることは多くありません。
交通事故外傷で頭痛をもたらす傷病は、主にむち打ち症と頭部外傷
です。むち打ち症がある被害者の場合には、頭痛は、頚部・背部痛、頚部可動域制限などの症状の一部としてむち打ち症の神経症状の後遺障害の問題に吸収されてしまうのが一般的です。

 頭部外傷を負った被害の場合も、脳外傷を示す所見が明らかであれば、脳外傷による他の症状である痺れ・麻痺・視覚障害などと頭痛が合わせて訴えられるので、脳外傷による後遺障害を認定する一症状として頭痛も考慮すれば足りることが多いです。
したがって、頭痛だけを後遺障害として認定できるかが問題となるのは、むち打ち症や頭部外傷で、頭痛以外の症状を訴えることなしに頭痛だけを訴えている場合となりますが、そういうケースはあまりありません。

むちうち症(頸椎捻挫・腰椎捻挫・外傷性頸部症候群など)の方は、自覚症状として頭痛を訴える方がとても多いです。むちうち症の場合は、頭痛以外の他の症状と合わせて神経症状が残ったものとして後遺障害の等級が認定される場合も多いです。むちうち症で悩まれている方は、むちうちに関するページも合わせてご覧ください。


頭痛のメカニズム

頭痛は日常的にありふれた症状ですが、頭痛が起きるメカニズムは多様です。交通事故外傷による頭痛の場合、その発生メカニズムとして以下の5つが考えられます。
  • ① 頭部の挫傷や創傷の部位から生じる疼痛

  • ② 動脈の発作性拡張で生じる血管性頭痛

  • ③ 頚部、頭部の筋より疼痛が発生する筋攣縮性頭痛

  • ④ 後頸部交感神経の異常により発生する頚性頭痛(バレ・リュー症候群)

  • ⑤ 上位頚神経の痛みの大後頭神経痛と後頭部から顔面や眼にかけての三叉神経痛
 後遺障害の等級認定を受けるためには、これらの5つの発生メカニズムいずれかであることを具体的に立証しなければなりません。このように、頭痛はありふれた症状ですが、交通事故の後遺障害として考える場合には、意外と難しい問題を含んでいます。

後遺障害等級認定のポイント

 頭痛は、むち打ち症などと同様に、他覚的所見だけで症状を正確に診断することは難しいので、自覚症状を正確に記録しておくことが重要です。具体的には、いつ、どんな頭痛が、どの程度、どこに起こり、どれくらい続いたかなどを記録しておく必要があります。

 また、どんな薬をどれだけ服用したかを記録しておくことも重要です。この記録のために便利なのが、北里大学神経内科の坂井文彦教授の監修による『頭痛ダイアリー』です。インターネットでPDFファイルをダウンロードできます。

自賠責における後遺障害等級

自賠責保険における後遺障害等級は以下のとおりに規定されています。


頭痛の後遺障害
等級 後遺障害 自賠責保険金額 労働能力損失率
9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの  616万円  35%
12級13号 局部に頑強な神経症状を残すもの         224万円  14%
14級9号
局部に神経症状を残すもの   75万円   5%


等級認定基準

 頭痛の後遺障害の等級認定基準は以下のとおりです。



頭痛の後遺障害
等級 後遺障害 認定基準
9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 通常の労務に服することはできるが、激しい頭痛により、時には労務に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12級13号 局部に頑強な神経症状を残すもの        通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛が起きるもの
14級9号
局部に神経症状を残すもの 通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻繁に発現しやすくなったもの