【交通事故】⾼次脳機能障害とは?症状‧原因‧認定の流れを⼤分の弁護⼠が解説
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【30秒でわかる結論】
結論:
事故後の「怒りっぽい」「忘れっぽい」は、CTなどの画像に写らなくても脳の神経が傷つく「びまん性軸索損傷(DAI)」などによる高次脳機能障害の可能性があります。
目安:
見た目は元気でも、仕事や家事に支障が出れば後遺障害等級(第1級〜9級など)の認定対象となり、賠償額が数千万円単位で大きく変わる可能性があります。
今日やること:
事故直後に「意識を失っていた時間(意識障害)」がどれくらいあったかを確認し、本人の「事故前と違う言動」を日付入りでメモに残してください。
資料がなくても大丈夫です。 口頭で状況を伺い、見通しと次の一手を整理します。
「怪我は治ったはずなのに、以前と性格が違う気がする」
「仕事のミスが増えて、会話も噛み合わない」
大分県内でも、交通事故に遭われたご家族からこのような相談をよくいただきます。
骨折などの目に見える怪我と違い、脳の損傷による「高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)」は、通常のCTやMRIでは明らかな異常が見つからないケースもあり、周囲や医師にさえ「本人のやる気の問題」や「単なるうつ」と誤解されがちです。
しかし、これは適切な検査(MRIの特殊撮影など)と手続きを行わなければ、本来受け取るべき補償を受けられないまま、将来の生活(介護や就労)に大きな負担を残すことになりかねません。

今すぐ確認すべきサイン
記憶障害:
新しいことを覚えられない、すぐ忘れる(何度も同じことを聞く)
社会的行動障害:
感情のコントロールができず、急に怒り出す(易怒性)、子供っぽくなる
遂行機能障害:
段取りが悪くなり、同時に複数の作業ができない、約束を守れない
病識欠如:
本人は「自分は悪くない」「以前と変わらない」と言い張り、障害を自覚できない
もし一つでも当てはまる場合は、一人で抱え込まずに専門的な視点で整理する必要があります。
「もしかして?」と不安に感じたら、まずは専門家にご相談ください
診断書などの資料がまだ手元になくても大丈夫です。
現在の状況(事故直後の意識レベルや、日常の様子)を伺い、
今後の見通しや、今やっておくべき検査(MRI/CT)を整理いたします。
交通事故による「高次脳機能障害」とは?
高次脳機能障害とは、交通事故などの強い衝撃で脳が損傷し、「記憶」「感情」「思考(段取り)」などの高度な認知機能に障害が残る状態を指します。
手足の麻痺といった目に見える後遺症とは異なり、一見すると普通に会話ができたり、受傷直後のCT等の一般的な検査では「異常なし」と診断されたりするケースも多いため、周囲から理解されにくい「見えない障害」とも呼ばれます。
交通事故における発生メカニズム
交通事故では、頭部を直接強打する「脳挫傷(局所的な損傷)」だけでなく、激しい衝突の揺れで脳全体に「回転力」が加わり、脳の深部にある神経線維(情報を伝えるケーブル)がちぎれてしまう「びまん性軸索損傷(DAI)」などが原因となります。
この「びまん性軸索損傷」は、ミクロレベルの神経断裂であるため、通常のCTやMRIには明確に写らないことが多く、これが「検査では異常がないのに症状がある」という状況を生み出す最大の原因です。
とくに大分県内は車社会であり、スピードが出やすい幹線道路での衝突事故など、脳に大きな回転性のダメージ(慣性負荷)を受けるケースが少なくありません。

家族が気づくべき主な症状(サイン)
高次脳機能障害の症状は多岐にわたりますが、実務上は大きく分けて以下の3つの側面に現れます。
最大の特徴は、「本人は自分がおかしいことに気づいていない(病識欠如)」という点です。そのため、毎日接しているご家族による「観察」が、診断と等級認定の決め手となります。

① 認知的症状(知能・記憶・段取り)
「頭の回転が悪くなった」と感じる部分です。
記憶障害:
数分前の出来事を忘れる、何度も同じ質問を繰り返す、新しい仕事を覚えられない(※昔のことは覚えていることが多いです)。
注意障害:
気が散りやすい、二つのことを同時にできない(電話しながらメモが取れない)、作業ミスが増える。
遂行機能障害:
自分で計画を立てられない、料理の献立と買い物が噛み合わない、銀行ATMの手順が分からなくなるなど、「段取り」ができなくなります。
② 行動的症状(振る舞い・意欲)
「人が変わった」「子供っぽくなった」と感じる部分です。
脱抑制(だつよくせい):
本能のままに行動する、浪費する、場違いな発言をする、性的羞恥心が低下する。
発動性の低下(アパシー):
一日中ぼんやりしている、入浴や着替えも促されないとやらない、無気力で不精になる。
固執性(こしつせい):
一つのことにこだわり、融通が利かなくなる。予定変更に対応できずパニックになる。
③ 情緒的症状(感情のコントロール)
ご家族にとって最も負担が大きいのがこの「感情のブレーキが効かない」症状です。
易怒性(いどせい):
沸点が低くなり、些細なことで突然カッとなって暴言を吐く、暴力を振るう。
感情失禁:
理由もなく泣き出す、笑い出すなど、感情が不安定になる。
こうした変化は、「事故のショックだろう」「うつ状態だろう」と見過ごされがちですが、脳の前頭葉などが損傷したことによる「社会的行動障害」である可能性があります。
診断と検査の難しさ
「病院でMRIを撮ったが異常なしと言われた」
「もう完治したと言われたが、様子がおかしい」
このような場合でも、諦める必要はありません。高次脳機能障害の診断には、一般的なMRIだけでなく、ミクロの損傷を見つけるための特殊な撮影法や、事故直後と数か月後を比べる経時的な観察が必要になることがあります。
どの病院に行くべきか
整形外科に通院していても、脳の専門的な判断は難しい場合があります。必ず「脳神経外科」や、リハビリテーション科のある「高次脳機能障害の支援拠点病院」を受診してください。
とくに、救急搬送された病院だけでなく、症状が安定した後に専門的な検査を行える病院への転院や受診が必要になるケースも多くあります。
画像に写らない場合の「次の一手」
「MRIで異常なし」と言われた場合でも、撮影方法や時期を変えることで証拠が見つかる可能性があります。
① 特殊なMRI撮影(T2スター、SWI)
一般的なMRI(T1、T2強調画像)では、神経の繊維がちぎれる「びまん性軸索損傷」による微細な出血痕が見逃されることがあります。
医師に対し、出血の痕跡(ヘモジデリン)を鋭敏に捉えることができる「T2スター(T2*)強調画像」や、さらに感度の高い「SWI(磁化率強調画像)」での撮影を相談してみてください。

② 「3か月後」の脳室拡大・脳萎縮
事故直後の画像では異常がなくても、事故から約3か月〜6か月経過した時点で再度MRIやCTを撮ることが重要です。
もし脳にダメージがあれば、時間の経過とともに脳の実質が縮み、脳の中の空洞(脳室)が広がる「脳室拡大」や「脳萎縮」といった変化が現れることがあり、これが認定の有力な証拠となります。
③ 神経心理学的検査
画像のほかに、脳の働きを数値化するテストも不可欠です。単なる認知症検査(長谷川式など)だけでなく、より詳細な「WAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査)」や「WMS-R(記憶検査)」、「BADS(遂行機能検査)」などを実施し、能力の低下を客観的に証明する必要があります。
【参考】新しい検査(PET/SPECTなど)について
脳の血流や代謝を見るPETやSPECT、神経線維を描出するDTI(拡散テンソル画像)などの先端検査もありますが、現在の自賠責保険実務では、これら単独では「脳損傷の確定的な証拠」とはみなされず、あくまで補助的な資料という扱いです。まずはMRI(形態画像)での立証を最優先しましょう。
認定と賠償までの流れ
高次脳機能障害として適切な賠償(後遺障害慰謝料や逸失利益)を受けるためには、「後遺障害等級認定」の申請が必要です。
一般的な怪我よりも手続きが複雑ですので、全体の流れを把握しておきましょう。
申請から解決までの4ステップ
1. 治療とリハビリ
「症状固定(これ以上良くならない状態)」まで通院を続けます。骨折などは6か月程度が目安ですが、高次脳機能障害の場合、症状の変動を見極めるため、事故から少なくとも1年程度の経過観察が必要とされることもあります。
2. 必要書類の作成・収集
医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼します。高次脳機能障害では、これに加えて「頭部外傷後の意識障害についての所見」や「神経系統の障害に関する医学的意見」といった専用の診断書もセットで準備する必要があります。
3. 等級認定の申請
自賠責保険(損害保険料率算出機構)へ申請を行います。申請方法には、相手方保険会社に任せる「事前認定」と、被害者側で資料を精査して提出する「被害者請求」の2種類があります。納得のいく認定を目指すなら、透明性の高い「被害者請求」がおすすめです。
4. 示談交渉
認定された等級(1級〜14級)に基づき、保険会社と最終的な賠償額を交渉します。
※後遺障害等級が重い(3級以上など)場合、ご本人の判断能力が不十分とされることがあり、示談をするために家庭裁判所で「成年後見人」を選任しなければならないケースもあります。
審査のカギを握る「日常生活状況報告書」
後遺障害の審査は、原則として「書面審査」です。
しかし、医師は診察室での短い時間しか患者を見ていないため、家庭や職場での「困ったエピソード(怒りっぽい、段取りが悪い等)」は、カルテに十分に残っていないことが多々あります。
そのため、ご家族が作成する「日常生活状況報告書」が、医師の診断を補完し、障害の実態を伝えるための*極めて重要な証拠となります。
ご家族だけでなく、職場の上司や同僚に協力してもらい、仕事上のミスや変化を報告書にまとめてもらうことも有効です。
【重要】家族ができること・今日からの準備
高次脳機能障害の認定審査では、「事故前の本人との比較」ができるご家族の記録が、等級の合否だけでなく、「何級になるか」を左右すると言っても過言ではありません。
保険会社任せにするリスク
保険会社の審査は、原則として提出された書類のみで行われます(書面審査)。
医師は診察室での短い時間しか患者を見ていないため、家庭や職場での「些細なことで怒り出す(易怒性)」、「約束を忘れる(記憶障害)」といった生活上の切実な支障は、カルテに十分に記載されないことが多いのです。
そのため、ご家族から積極的に「日常生活状況報告書」等の資料を作成し、生活の実態を証明しなければ、本来認められるべき等級(3級や5級など)が認められないリスクがあります。

スマホで使える「観察日記」テンプレート
記憶が曖昧になる前に、日々の変化を記録に残しましょう。
漫然と書くのではなく、認定基準である「4つの能力(意思疎通・問題解決・持続力・社会行動)」を意識して記録すると、そのまま有力な証拠になります。
以下のテンプレートをコピーして、スマホのメモ帳などで活用してください。
【高次脳機能障害・家族の観察日記】
- 日付:○月○日
- 場面:(例:夕食の準備中、親戚の集まりで)
- 気になる言動・変化:
- 段取り・記憶:(例:コンロの火を消し忘れる。何度注意しても直らない)
- 感情・行動:(例:指摘すると突然激昂し、暴言を吐いた。以前は温厚だった)
- 頻度・程度:(例:週に3回目。一人にしておくのは怖い)
- 本人の様子:(例:「自分は悪くない」と言い張り、ミスを認めない ※病識欠如)
【ポイント】「病識のなさ」も重要な症状です
本人が「自分は以前と変わらない」「どこも悪くない」と言い張る場合、それは反省していないのではなく、脳の損傷により「自分の障害を認識できない(病識欠如)」という症状が出ている可能性があります。この点も漏らさず記録してください。
「これって障害?」と迷っている方へ
高次脳機能障害かどうかは、専門医でも判断が難しい分野です。
「気のせいかもしれない」と様子を見ているうちに、脳の萎縮を確認するための重要な撮影時期(事故から約3か月後など)を逃してしまい、立証が難しくなるケースがあります。
「まだ診断されていなくても大丈夫です」当事務所では、資料が揃っていない段階でも、
ご家族のお話から「今の状況が補償の対象になり得るか」の見通しを整理します。
不安を抱えたまま過ごすよりも、一度専門家の視点を入れるだけで、
今やるべき検査や記録のポイントが明確になります。
まとめ
高次脳機能障害は、ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても精神的・経済的に負担の大きな障害です。しかし、適切な認定を受けることで、将来の生活を守るための補償(介護費用や逸失利益)を得られる可能性があります。
この記事のポイント
見えない障害:
高次脳機能障害は、記憶・感情・思考の障害であり、外見からは分かりにくいため、「やる気がない」「うつだ」と誤解されがちです。ご家族の「以前と違う」という感覚が発見の第一歩です。
専門的な立証が必要:
一見MRIで異常がなくても、特殊な撮影(SWI等)や、事故から数か月後の「脳の萎縮」を確認することで、認定される可能性があります。諦めずに専門的な分析を行うことが重要です。
記録が命:
医師は診察室での様子しか知りません。家庭や職場での「生活の実態(4つの能力の低下)」を審査側に伝えるため、ご家族による日々の記録(観察日記)や「日常生活状況報告書」が認定を左右する強力な武器になります。

弁護士費用特約の活用を
ご加入の自動車保険や火災保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、原則として保険会社が弁護士費用を負担します(上限300万円まで)。
自己負担を気にせず、「医師との面談」や「意見書の作成」といった、本来なら費用がかかる専門的な立証活動を早期から受けることが可能です。特約がない場合でも、今後の見通しを知ることで安心につながります。
「おかしい」と思ったら、示談前にご相談ください
「病院では様子を見ましょうと言われたけれど、やはりおかしい」
「保険会社からそろそろ示談と言われているが、納得がいかない」
そのような場合は、示談書にサインをする前に、ぜひ一度私たちにご相談ください。大分県内の医療機関情報や、過去の認定事例を踏まえ、最善の方針をアドバイスいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1.本人が「自分は大丈夫だ」と言って病院に行きたがりません。
A.それは「病識欠如」という症状の可能性があります。無理強いせず、まずはご家族だけでご相談ください。
高次脳機能障害の最大の特徴として、脳の損傷により自己洞察力が低下し、「自分が病気である(能力が落ちている)」という自覚を持てなくなることがあります(病識欠如)。
本人は「以前と変わらない」と信じているため、無理に説得すると興奮したり、関係が悪化したりする恐れがあります。
まずはご家族が「日常生活での変化」をメモに残し、それを持って弁護士にご相談ください。ご家族の話から障害の可能性を検討し、受診へつなげるためのスムーズな方法(「健康診断に行こう」と誘うなど)を一緒に考えます。
Q2.事故から時間が経っていますが、今からでも相談できますか?
A.はい、可能です。ただし、「初期の記録」が残っているかが重要になります。
-事故直後の意識障害の記録:
救急搬送時の記録やカルテに、JCSやGCSといった意識レベルの数値が残っているか。
-画像の経時変化:
事故直後と、その数か月後のMRI画像を比較し、「脳室の拡大(脳萎縮)」が進んでいるか。
時間が経つほど、カルテの保存期間(原則5年)の問題などで資料収集が難しくなります。諦める前に、一日も早く現状をお聞かせください。
Q3.大分県外に住んでいますが、対応してもらえますか?
A.はい、当事務所は全国のご相談に対応しています。
はい、当事務所は全国のご相談に対応しています。
高次脳機能障害の事案は専門性が高く、お住まいの地域だけで専門家を探すのが難しい場合も少なくありません。
来所が難しい場合でも、お電話やZoomを活用して、全国の被害者様をサポートしています。
まずは一度、お電話にて状況をお話しください。
無料相談のご案内
高次脳機能障害の疑いがある場合、適切な等級認定を受けるためには、事故直後からの戦略的な通院と「証拠作り」が不可欠です。
時間が経つと、事故直後の意識状態の記録が散逸したり、適切な時期にMRIを撮り逃したりして、後からでは立証が難しくなるリスクがあります。
「これからどうすればいいか分からない」
「保険会社の説明が正しいか不安」
そう思われたら、手遅れになる前に、まずは弁護士法人 大分みんなの法律事務所の無料相談をご活用ください。
お手元に詳しい資料がなくても構いません。現在の状況(事故の様子や、ご家族の気になる変化)を丁寧に伺い、「今受けるべき検査は何か」「今後の見通しはどうなるか」を整理いたします。
資料がなくても大丈夫です。口頭で状況を伺い、見通しと次の一手を整理します。
交通事故の解決実績が豊富な当事務所では、大分県内にお住まいの方だけでなく、近隣県や遠方の被害者様からも多くのご相談をいただいております。
「怪我で動けない」「遠出が難しい」という方のために、電話やZoomによるオンライン面談を導入。ご依頼後は、電話、LINE、Zoom、メール、郵送などでやり取りを進めるため、一度も来所いただくことなく解決までサポートすることが可能です。
「交通事故に強い専門家に任せたい」という方は、ぜひ一度当事務所へご連絡ください。
免責事項
本記事は交通事故に関する一般的な情報提供を目的としており、個別事案に対する法律上の助言ではありません。具体的な状況により結論や見通しは変わるため、詳細は弁護士等の専門家へご相談ください。法令・運用は改正等により変更される可能性があります。






