口の後遺障害
最終更新日2021.5.6(公開日:2021.5.6)
監修者:日本交通法学会正会員 倉橋芳英弁護士
目次
口の後遺障害
口に関する後遺障害とは
口は、唇・顎・舌・歯の働きにより、食物の咀嚼(そしゃく)機能や、発生器である咽頭との共鳴作用による言語機能を果たしています。交通事故により口にケガを負ってしまった場合、咀嚼の機能障害や言語の機能障害や歯牙の障害などが残ってしまうことがあります。
咀嚼の機能障害
咀嚼(そしゃく)とは、口でものを噛み砕くことです。咀嚼(そしゃく)の機能障害は、不正な噛み合わせ、咀嚼(そしゃく)を司る筋肉の異常、顎関節の障害、開口障害、歯牙損傷などを原因として発症します。咀嚼(そしゃく)に傷害が残っているかは
を総合的に判断して咀嚼(そしゃく)に医学的に見て支障があることが前提となります。
- ① 上下のかみ合わせ(咬合)
- ② 歯の配列の状態
- ③ 下あごの開閉運動
そのうえで、以下のとおり
の順番で後遺障害等級を判断することになります。
- ① 流動食
- ② 粥食
- ③ 固形物の中で食べられないものがあるか
の順番で後遺障害等級を判断することになります。
言語の機能障害
言語(発声)に関する後遺障害があるかは、4種類の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)について発音できるかどうかで区別されます。
・口唇音 / ぱ行音、ば行音、ふ、ま行音、わ行音
・歯舌音 / さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ、た行音、だ行音、な行音、ら行音
・口蓋音 / か行音、が行音、ぎゅ、にゅ、ひ、や行音、ん
・喉頭音 / は行音
また、語音を一定の順序で連結させることを綴音(てつおん又はていおん)といいますが、この機能に障害が残ることにより言語障害となることもあります。
後遺障害等級とその認定基準(咀嚼・言語機能
咀嚼・言語の機能障害 |
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等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
1級2号 | 咀嚼及び言語の機能を 廃したもの |
咀嚼機能を廃したものとは、流動食しか摂取でないものをいう。言語の機能を廃したものとは、4種の語音のうち3種以上が発音不能なものをいう。 |
3級2号 | 咀嚼又は言語の機能を 廃したもの |
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4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に 著しい障害を残すもの |
咀嚼の機能に著しい障害を残すものとは、粥食またはこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいう。言語の機能に著しい障害を残すものとは、4種の語音のうち2種の発音が不能なもの又は綴音機能に障害があるために言語のみを用いては意思を疎通することができないものをいう。 |
6級2号 | 咀嚼又は言語の機能に 著しい障害を残すもの |
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9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に 傷害を残すもの |
咀嚼の機能に障害を残すものとは、固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できるもの言語の機能に障害を残すものとは、4種の語音のうち1種の発音が不能なものをいう。 |
10級3号 | 咀嚼又は言語の機能に 傷害を残すもの |
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12級相当 | – | 開口障害などの原因により咀嚼に相当の時間がかかるもの。 |
12級相当 | – | 声帯麻痺による著しい声のかすれ。 |
歯の後遺障害
交通事故により3本以上の歯を失ってしまった場合には、その失った本数に応じて後遺障害の等級が認定されます。歯の後遺障害診断には、専用の後遺障害診断書を使用します。
後遺障害等級とその認定基準(歯牙の障害)
自賠責保険における後遺障害等級規定とその認定基準は、下のとおりです。
歯牙の後遺障害 |
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等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
10級4号 | 14歯以上に歯科補綴を加えたもの | 14本以上の歯の喪失 |
11級4号 | 10歯以上に歯科補綴を加えたもの | 10本以上の歯の喪失 |
12級3号 | 7歯以上に歯科補綴を加えたもの | 7本以上の歯の喪失 |
13級5号 | 5歯以上に歯科補綴を加えたもの | 5本以上の歯の喪失 |
14級2号 | 3歯以上に歯科補綴を加えたもの | 3本以上の歯の喪失 |