【弁護士ブログ】「仕事中にネットで遊ぶな!」ー従業員のネット利用について


「仕事中にネットで遊ぶな!」――従業員のネット利用について

こんにちは、弁護士の田中良太です。

1 はじめに

 最近読んだ解雇に関する裁判例でこういうものがありました。

 従業員が会社を解雇されて、裁判で解雇の有効性が争われた事案なのですが、

解雇の理由の1つが、「仕事中に仕事とは関係のないことでインターネットを利用した」ことでした。

 

 そこで、今回は、仕事中に仕事とは関係のないことでインターネットを使用者の許可なく利用すること、いわゆる「従業員のネットの私的利用」の法的問題について書いていきます。

 

2 ネットの私的利用は悪いことか

 結論からいえば、悪いことです。

 3つの理由があります。

 

⑴ 職務専念義務違反

 まず、労働契約の本質から考えてみましょう。

 そもそも、労働契約の本質は、労働者が使用者の命令下で働く代わりに、使用者が労働者にお金を払う、という約束です。

 端的に言えば、労働者の労働力を(多くの場合、時間単位で)売る契約です。

 

 ここで考えてほしいのですが、例えば、あなたがギターを友人から買ったとして、

 友人から「今、俺が売ったギターだけど、俺が使いたくなったら、いつでも使わせろよ」なんて言われたら、ちょっと違和感を覚えますよね。

 「いやいや、買った以上は私のギターなんだから、好きに使っていいわけないでしょ」と言いたくなるのではないでしょうか。

 労働契約もこれと同じです。

 労働力を売った以上は、原則として、この労働力を使用者に提供する義務があるわけです。

 (だからといって、使用者が何でも何時でも命令できるとなると困ったことになるので、労働法が厳しく規制しているのです。余談ですが。)

 そのため、労働契約には、労働者の職務専念義務という義務が含まれていると考えられています。

 要するに、労働時間中は、労働力の買主である使用者の為に、その労働力を発揮しなければならない、ということです。

 ギターをギターの所有者の為に利用するのと同じです。

 (予め申し上げますが、あくまでも売り買いされるのは労働力であって、労働者自身ではありません。)

 

 ネットを私的に利用している間は、労働力を提供しているとはいえません。

 したがって、私的利用中は、職務専念義務に違反しているということになります。

 

⑵ 企業秩序遵守義務違反

 次は、パソコンやネット回線等の企業設備という要素から考えてみましょう。

 パソコンやネット回線は誰の物でしょうか。

 いうまでもなく、それらの所有権、使用権、管理権は、お金を払っている使用者にあります。

 労働者は、これらの企業設備を使用者の許す範囲で利用する権利しかありません。

 

 さきほどのギターの例ですが、

 あなたが買ったギターを、友人が実際に勝手に使っていたら、「何してんの」という気持ちになると思います。

 

 それと同じで、ネットを勝手に私的に利用することは、他人の物を勝手に利用することと同じだということです。

 

 労働法の世界では、労働契約に付随して、労働者は企業秩序遵守義務がある、とされています。

 結局、使用者の物を勝手に使われると職場の秩序が乱れるとされるわけです。

 ネットの私的利用は、企業秩序遵守義務違反でもあるのです。

 

⑶ その他

 ネットを私的に利用したとして、その利用方法自体が問題になることもあります。

 例えば、職務中にツイッターで人の悪口を書いたり、嫌いな人に脅迫するようなメールを送ったりした場合、訴訟になればどこから書き込んだか、どこから送信したかを調べられることもありえます。

 そうすると、「あの会社が私の悪口を書いた」とか「あの会社から脅迫メールが届いた」とされて、企業の信頼や名誉が傷つきます。

 これも企業筒所遵守義務違反の一部ですが、最近は何の気なしに書いたことが「炎上」することもありますので、十分気を付けなければなりません。

 

3 ネットの私的利用にどう対応するか

 悪いことだということは既にご説明しました。

 では、使用者として、ネットの私的利用にどう対処できるのか考えてみましょう。

 

⑴ 解雇以外の懲戒処分

 懲戒処分を下すためには、懲戒事項が労働契約や就業規則に明示されていなければなりません。

 「就業中に、職務と関係性が無い私的な目的で、会社の許諾なく、会社の設備を利用した者は懲戒できる」といった旨の規定が必要ということです。

 

 さらに実際に懲戒するにしても、実際の私的利用が、下そうとしている懲戒に相当する程の違反行為である必要があります。

 例えば、戒告や訓告程度であれば、問題ないかもしれません。

 しかし、減給や降格等の重たい処分を下すのであれば、それ相応の酷い私的利用でなければならないでしょう。

 もっとも、懲戒を繰り返しながら、だんだんと重たい懲戒処分を下さざるをえないケースはあるでしょう。

 

⑵ 懲戒解雇

 冒頭の裁判例については、懲戒解雇の事案ですが、懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重たいものであって、おいそれと下すことができない処分です。

 裁判例では、勤務中に、複数の出会い系サイトにアダルトな書き込みをして、5年間にわたり、約1600件のメールをやりとりした従業員の懲戒解雇が有効とされた事案があります。

 かなり極端な例ではありますが、この程度でなければ、懲戒できないとも考えられます。

 

⑶ 普通解雇

 解雇も、労働者の生活に大きな悪影響を及ぼす重大な行為ですから、やはりおいそれとは行えません。

 しかし、懲戒解雇よりは認められやすいです。

 もっとも、ネットを私的に利用したことによって、会社にどのような影響があったかを丁寧に証拠を集めて証明していく必要がありますから、ハードルはとても高いです。

 

⑷ 損害賠償

 一般的には、いわゆる「使用料」を取るということです。

 「使用料」なので、通常は相当低い金額を請求することになりそうです。

 

 また、私的利用で会社の体面が傷ついた、業務に支障が出たといった場合には、また別途損害賠償する可能性はあります。

 

⑸ 人事考課

 ネットで遊んでばかりいる人の評価を下げるということです。

 人事考課上の注意点(平等・公平原則の意識等)はありますが、比較的問題なく行うことができます。

 

4 まとめ

 使用者としては、ネットの私的利用に対し、厳しい措置を講じることは難しいということはお分かり頂けたと思います。

 ただ、ネットが重要なツールになっている現在、ネットの影響力は絶大です。

 今後、職場でのネットトラブルの発生に注意する必要があるでしょう。

 

やはり、仕事中は仕事に専念しないといけないということでしょうね。

 

参考文献

白石哲編著『労働関係訴訟の実務』商事法務、2014


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