外傷性てんかんの後遺障害


外傷性てんかんの後遺障害

外傷性てんかんとは

 てんかんは、脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動を原因として起こります。頭部に外傷を負ったことを原因として起きるてんかんを外傷性てんかんといいます。てんかん発作に伴う主な症状は、痙攣です。また、突然意識を失う・記憶が飛ぶ・急に活動が止まって昏倒するなどの意識障害が起こることもあります。大半の発作は一過性であり、通常は数分から数十分で回復します。

 

診断

 症状、脳損傷の程度、CT・脳波・MRIなどの画像所見、初期発作までの期間などを総合的にみて診断します。

 

後遺障害等級認定のポイント

①発作が起きていない場合の症状固定診断を受ける時期に注意
 交通事故により脳挫傷、頭蓋骨陥没骨折を受傷した場合、外傷性てんかんを発症する可能性があります。この場合、発作が1度も起きていなかったとしても脳波検査でスパイク派と呼ばれる脳波が認められれば、後遺障害として等級認定される可能性があります。

 脳波に異常が見られない場合には、外傷性てんかんの後遺障害認定はされませんので、発作が起きていないがスパイク派が認められるケースの場合には、受傷後6か月後を経過した時点で早期に症状固定の診断を得ておかないと、後遺障害非該当となってしまうおそれがあります。


 
②発作の型・回数を記録しておくこと
 外傷性てんかんの後遺障害等級は、発作の型・回数、労働能力に影響を及ぼす程度などを総合的に考慮して決定されます。したがって、いつどのような発作が起きたかを詳しく書き留めておくなどして記録したり、発作により救急搬送された場合には救急搬送証明書を発行してもらうなどして、発作の起きた事実と程度を証拠として残しておくことが大事です。

 


 

自賠責における後遺障害等級

 外傷性てんかんの後遺障害につき、自賠責では、以下のとおり後遺障害等級が規定されています。
 
外傷性てんかんの後遺障害
等級 後遺障害 自賠責
保険金額
労働能力
損失率

1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
常に介護を要するもの
4,000万円 100%

2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
に介護を要するもの
3,000万円 100%

3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
終身労務に服することができないもの
2,219万円 100%
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの        

1,574万円

 79%

7級4号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
軽易な労務以外の労務に服することができないもの    
1,051万円  56%

9級10号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  616万円  
 35%

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
  224万円 14%


 

外傷性てんかんの等級認定基準

等級により賠償金額が大きく変わります。各等級の賠償金額を知りたい方はこちら。

外傷性てんかんの後遺障害
等級 後遺障害 認定基準

1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの てんかん発作のため常に介護を必要とするもの

2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、に介護を要するもの 週に1回以上、意識障害を伴うてんかん発作を起こすもの

3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 多発する発作のため終身労務に服することができないもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1か月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの

7級4号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの     転倒する発作等が数か月に1回以上あるものまたは転倒する発作等以外の発作が1か月に1回以上あるもの

9級10号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 数か月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるものまたは服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
発作の発現はないが、脳波上に明らかなてんかん性棘波を認めるもの